星空案内所*wishes(25)
機械をいじる操作台は左横に位置していた。
私達のいる場所からは松さんが座っている姿が見えるけれど、客席からは見えないようになっていた。
松さんの脇にいた二瀬さんが、台の横の小さい階段をつまずきそうになりながら急いで降りてきて、私達のとこへ来た。
「はー危ない危ない」
「大丈夫ですか!気をつけてくださいよ」
「ああ、そうだな。えー、君達は常にお客様に目を配って、何か不審なものがあったり怪しい人がいたら、すぐ私まで報告するように。いいですか」
そう小声で捲し立てると再び二瀬さんは操作台へ上がっていった。
いくら星が好きとはいえ、仕事中。放棄してはいけない。
私は心の中でぐっと力を入れ、スクリーンに映る映像に目を奪われないようにした。
プラネタリウム館には澄んだ川のせせらぎのような、心地良いメロディーが館内を包み込んでいた。
「それではここで、今夜8時に見える星座をご紹介していきたいと思います」
松さんの声の後、スクリーンの南の空にある一つの赤い星が一際輝き、浮かび上がる。
その星に私はどこかで見覚えがあった。
「この赤い星、皆さん見えますか?」
矢印が現れ、円を描きながらその星を指した。
「こちらはさそり座の1等星アンタレスです。とても赤いギラギラした色ですよね?火星と対抗する意味で、アンチタレスという由来があるんです。火星もとても明るい星ですが、アンタレスのほうがより赤く見えるようです。それには、アンタレスが低い温度をしていることが関係しているんです。また、温度が高い星は青く見えるのです」
そんな話につい私も聞き入っていた。
さそり座は私の星座だ。
星座は自分の誕生月には見えない、だからまるで誕生日に先駆けやってくるみたいだ。
終始松さんの解説に興味が離れず、仕事中だというのを本当に忘れてしまった。
一番気になったのは、いて座の話だった。
いて座の方向には銀河系の中心があり、天の川の幅が広く濃く、それだけ沢山の星の集まりが見られるそうだ。
そのことを聞いて、児童館で天体観測会をしたとき、藤川さんに宇宙ののぞき窓と呼ばれる、星団を教わったことを思い出した。
言葉に表せないくらいの輝きだった。
一人じゃなくみんなで見たこともあり、喜びも倍だった。
また違う輝きがそにはあるのかもしれないと思ったら、胸がうずうずした。
一人で見るのもいいけれど、どうせなら星が好きな人と見れたらきっと、もっと楽しいはず。
(ぴよた君も、興味持っただろうか…。)
そっと横を向くと、隣にいたぴよた君も同じようにスクリーンに映る銀河を見つめていた。
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