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ガーデニングをしながら、子育ての難しさについて考える。

いま、わが家のベランダで、ある多肉植物たちが派手なモンスターのようになっている。

数ヶ月前に行きつけのダイソーで見かけて一目惚れして、家に連れて帰った。

ヤマトヒメとシノクラッスラという名前の、その2種類の多肉植物は、可愛らしいバラの花のような形をしていた。どちらも同じくらいの大きさだったので、ひとつの鉢に一緒に植えた。まだ寒い時期で、日当たりの良い室内に置き様子を見ることにした。

とてもかわいらしい形のまま、白く四角い小さな鉢に、おしとやかに並んでいた。



ある時、室内にずっと置くより外に出た方がより元気に育つかなと思い立ち、暖かな日差しが増える頃にベランダに出してみた。

そのうち、初々しく青かったシノクラッスラが赤くなり、色気づいた。「ちょっと大人っぽくなったわね。」などと言いながら見守っていた。

するとさらに気温が上がり始めた頃、ヤマトヒメの花芽が出てニョキニョキと触手のごとく伸びはじめ、あれよという間に派手な色合いの花をつけた。

かたやシノクラッスラはと言えば、ビヨーンと中心が伸び、奇抜な個性派さんに成長した。


「最初はあんなに可愛らしい、お花のような2人だったに。」と、大事に育てたお淑やかな娘二人が、外の世界に出した途端に派手なギャルに変身してしまったかのような気持ちになった。

「ずっとこの可愛らしい形のまま変わらない」と、勝手に思い込んでいたのは私のほうで、ヤマトヒメとシノクラッスラからしてみれば、「成長すれば見た目だって変化するんです」と言いたいところだろう。


ところで最近の私は、すっかりベランダガーデニングにはまっていて、いろいろな植物を買ってきては育ててみている。

ミントやカルダモンやフェンネルといったハーブから、リーフレタス、白い風船のような花がたくさんつくシンフォリカルフォス、3種類のクローバー、かわいい名前のガーデンガールズ、コーヒーの木にレモンの木、グミの木、オリーブの木。名前も忘れちゃった植物に、数年前、拾ってきたタネから奇跡的に発芽させたモミジの木なんてのもある。家の中には観葉植物が10種類ほど。

いまベランダを賑わせている植物たちの影には、私がうっかり育て方を間違えてダメにしてしまったものが多数いる。

日陰が好きで強い直射日光に当てると弱ってしまう植物を、「植物はみんな太陽が好き」と勘違いしていた超初心者の私は、夏の暑い盛りに日向に置きっぱなしにした。気づいた時にはグッタリとして枯れ始め、2度と元気な姿には戻らなかった。

水やりにしても、どの植物にも一様に日々与えたりして、腐らせたこともあった。水切れを起こすとすぐに枯れてしまう植物もあれば、乾燥を好む植物もいるというのに。

冬から春秋は日向がいいが夏は日陰に移動させないといけないもの、強い風に当たるとそれだけで枯れてしまうものなどもあった。

そうかと思えば、水やり以外はどんなに放っておいても勝手に成長し、いつまでも枯れずにいる強い品種もある。

要は、個性に合わせて育て方を変えなければ、うまくは育たないというわけだ。

そんなわけで、毎日の水やりの時間にそれぞれの様子をみて、具合が芳しくないものがあれば、鉢をあっちに移動させたりこっちに移動させたりとご機嫌伺いをする。さらには成長の妨げになる枝葉を少し切ってやったり、虫や病気がついていないか観察したり、やることはキリがない。

いそいそと植物たちの世話を焼きながら、「子育てに似ているな」と思った。

同じ家に生まれた兄弟姉妹であっても、個性が違えば育て方は変わる。

放任の方が旺盛に育つ子、細かく面倒を見てやった方が精神が安定する子、競わせた方が伸びる子、競わせると萎縮してしまう子、育てながら様子を見て心を配る。もちろん正解などはわからないので、試行錯誤の連続だ。

ガーデニングを始めたばかりの私が何もわかっていなかったように、親も子育てを始めたばかりでは分からないことだらけだ。失敗しないなんていうのは無理なので、小さな失敗は仕方ないんだろうと思う。ごめんよ、娘。私もたぶん沢山失敗してきたね。

失敗とは、それ自体が悪いのではなく、失敗を認めないことや失敗から学ばないことがいけないという。

失敗したとわかったら、少しでもいい方向に改善していけるように、努力してみる。

そうやって親も子供と一緒に成長する。

死んでしまった数多の植物に、多少は成長したベランダガーデナーにしてもらった。「ところで君はどうしたい?」と心で話しかけながら、成長の手助けをしようと頑張ってみた。

子育てでも、たぶん一番大事なのは、「ところで君はどうしたい?」と意を汲み取ろうとすることかもしれない。

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