【私の感想 #3-1】心を動かした音楽フェス、DEAD POP FESTiVAL(2021年6月26日、27日)
はい。音楽フェスに行ってきました。
DEAD POP FESTiVAL(以下「DPF」)という、SiM主催の音楽フェスです。
「こんな緊急事態宣言明けたばかりで、蔓延防止等重点措置が敷かれている中、音楽フェス?」という人はいるでしょう。そういう人にこそ読んで欲しいな、とも思いながら書こうと思います。
「ふざけるなよ、お前に何が分かる」と攻撃しても何も始まらない。
では行きましょう。
ちなみにここから書くのは、いつもの私の思考録に加えて、推しの紹介やおススメバンドの紹介も混じります。要するにいつもの感想です。楽しんで読んでもらえればなあ、と。
なお構成上(というか伝えたいことを伝えるために)、バンド紹介とフェスで感じたことは分けています。よければ両方楽しんでもらえればなと思います。
1:「フェスってこんなにつまらなかったっけ?」
初っ端からとんでもない見出しをつけましたが、これはフェスの1日目の途中まで思っていた私の偽らざる感想でした。
出て来るアーティストとバンドはどれもカッコいい(たまに笑わせてくれる)から、アーティストやバンドのせいではない。
ただ、物足りなさがずっとあったのです。もっと昔は楽しめていて、ワクワク感があって、推しであれ初見であれ、「どんなライブをぶちかましてくれるんだろう」と待ち望んでいたのです。
そのワクワクも楽しみもない。これはどうしたことか、と思ったのです。
そして自分だけでそんな悩みがぐるぐる回っていて、「もしかして、もうライブとかフェスとか、楽しめない人になってしまったんだろうか」と思い悩みながらフェスに参戦していました。2日目には推しも沢山いるのに(マキシマムザホルモンとかSHADOWSとかベガスとか)、1割くらい本気で「もう帰ろうかな……」「2日目も来なくていいかな……」とか思うくらいに。
なんだか、フェスがつまらなかったのです。そのつまらなさは、自分が原因と薄々感じているのに、全然原因が分からない。辛過ぎました。こんな気持ちで2日間を過ごしたくないと。
でも、そんな悩みをとあるバンドが看破してくれました。
2:「感情をこの会場に全部置いていけ!!」
そのバンドは、1日目の中盤に出演したDragon Ashでした。
1996年から今までずっと続いていて、数々の試練を乗り越えて現在5人編成でやっているロックバンドです。
そのボーカルであるKjさんが、最後の曲の『A Hundred Emotions』の前のMCで、こんなことを言われたのです。
「今、こんな状況になってしまって、バンドは色んな戦い方をしている。ネット配信でライブをやってみたり、こんな感じで入場者を制限したり感染症対策をとってライブを開いてみたり。でも、MAH(※DPF主催のバンドSiMのボーカル)は、この状況に慣れてしまうのが怖いんだって言っていた。声も上げずに暴れもせずに行われるライブに抱えるモヤモヤがなくなってしまうのが怖いんだ、と。そのモヤモヤを、抱えたままでいて欲しい。今思っている、怒りとか悲しみとか、楽しみとか、そういう感情を、全部ここに置いて行って欲しい」
これか、と私は思いました。
正直、このDPFは感染症対策を万全にとっていて、至る所に消毒液が設置されていて、スタッフも観客も全員マスクを着用していて、ソーシャルディスタンスを取るための施策をとっているどころか、スタッフが歩き回り、感染症対策が万全かを見回っているのです。
それどころか、観客も全員感染させまいと行動をしています。マスクは絶対つけているし、最低限の距離はとっているし、声は出さない、激しい暴れ方はしない(人と人が接触するような)。
これは、普通のロックフェスの在り方ではないのです。本来は声も出して、人と人がぶつかり合って暴れて、怪我しそうになったら周りがしっかり止めたりしながら、ライブをするバンドに想いを伝えるのです。「ライブ最高!」「お前らが好きだ!」といった想いを。まあ、煽られますけども。それでも観客は愛を叫ぶのです。
だから、それが一切できない状況というのは、観客に言わばフラストレーションが溜まるのです。叫びたい、暴れたいという衝動を理性で抑えているのです。
しかし、もう感染症騒ぎから1年経ってしまい、この状況に慣れてしまいました。するといつの間にか、「これが普通なのだ」というすり替わりが起こってきます。
これにより何が起こるか。それは、バンドに対する熱の冷めです。
バンドが好きで叫んできたのに、それが出来ないのが普通。好きだと伝える手段がそうするといよいよ『グッズを買う』になるのです。果たして、ライブも満足にできない状況で、お金を貢いでファンになり続けられるか。
人間、こんなことできっこないのです。好きだと叫べなくなることである種冷静になり(『鎮静させられる』が正しいかも?)、「実は私はあのバンドを好きでなかったのかもしれない」と思うようになるのです。
しかも、この状況がいつ打開されるかも分からない。ワクチンは配布されているけど、ロックライブ・フェスは『クラスターの温床』として悪者扱いされ(実際にはそんなことないのが、そこそこ多い例で分かります)、以前のような形を取り戻すことは当分ないだろう――と諦めに似た感情が沸き起こってきます。
そして、バンドから離れていってしまうのです。
私は、この『バンドに対する熱の冷め』を感じていたのだ、と。
本当のライブやフェスの在り方は違うのに、『こうなるしかない、仕方ない』としか思えない。要するに妥協して受け入れつつあったのです。
でも、あのKjさんの言葉で目が覚めました。
違う!!!
私は叫びたい!暴れたい!以前のように鬱憤を開放しながらも、バンドに好きを伝えたい!!!
こんな状況になりやがって!!ふざけるんじゃねえ!!!
嫌だ!この状況が続くのは嫌だ!!悲しい!!!
こう思うに至ったのです。
そこからの私はと言えば、動かせるだけ体を動かし、上のような怒りと悲しみを発散させながら、「お前らがこんなに好きだ!!!」と楽しさを爆発させるように、行動の限りを尽くしたのです。感染症対策は守る理性を保持しながら。
そうすると不思議なもので、音楽を素直に聞けるようになるのです。1日目は残りのバンド全部泣いていました。心に沁みて泣き、楽しくて泣き、勇気づけられて泣き――こんなに1日で泣いたことはありませんでした。
ロックバンドは、人の心をこんなにも動かしてくれるんだ。
物凄く実感を伴って感じることができました。
3:「おい、行政!!」
これは私の言葉ではなく、1日目のトリを飾る主催者SiMのボーカル、MAHさんの言葉です。
ライブ中、わざと「今からお前らに声を出させるために煽るけど、絶対声出すなよ!!我慢比べだ」と煽った上で、大合唱をするような曲振りをわざとしたのです。
しかし、当然全員声を出さない。観客はしーんとしている。この光景を見て、MAHさんは叫びます。
「おい行政!!これが今のロックバンドのフェスだ!!こっちはお前らの言いつけ全部守って、会場も5000人だけにして(※DPF開催の会場は、通常1万人入る大会場)、声も出さずに、マスクをつけさせたままにしてやってんだ!!お前らの言うこと全部守っているぞ!!それがなんだ、お前ら、1万人?2万人?……やってみろよ」
滅茶苦茶熱くなってますね(ちなみに2日目に「熱くなり過ぎた」と反省されてました笑)。でも、ここまで心を刺す言葉もないなって思います。
さっきも言いましたが、ロックバンドのライブ・フェスは悪者扱いされています。ライブハウスは基本的に狭いですし、基本屋内なので換気も万全になされているとは言い切れないこともありました。しかもロックバンドは『暴れろ!』と言うものだから、体をぶつけ合って暴れるし、声も出す。まさに、3密も守らず飛沫も飛ぶという感染になりやすい状況なのです。
しかし、それはあくまで今までのやり方をしていたら、という話。
それを全部やめてしまえば、感染確率はぐっと低くなります。当たり前です。
するとよく、『だったらライブとかフェスとかしなければ良いじゃん』という意見も聞くんですけど、『それをやるなら全部に適用しろ』と思うわけです。生活に必須でない要素(外食産業、居酒屋産業)は全部閉じればいいですし、必須な仕事でさえも、電車を一切使わせずに全部リモートにすればいいわけです、極端な話。
オリンピックの開会式に1万人呼ぶなんて、以ての外だと思うんですよ。いや、オリンピックは開けばいいと思いますけど、『ロックバンドライブやフェスと、一体何が違うんですか?』とは訊いてみたいですね。
何故ライブとかフェスだけが悪者扱いにされるのだろう、と思います。ちなみにですが、DPF中、周りに某テレビクルーが来ていたそうです。何をしに来たのか。まあ、それはさておき。
とにかく、対策をとればいいだけの話。そんな簡単な話がどうして分からないのだろう、と思います。
と、ここまで私も少し熱くなってしまいましたが、何故こんなに躍起になるのか。
音楽には、ライブやフェスには力があるから――そう私が信じているからです。
4:何故、ライブやフェスが存在するのか?
ロックバンドに限りません。バラードだってポップだって、ジャズだってフォークソングだって、クラシックでも何でもいいです。
音楽というのは人の心を動かす力があります。
心を上げるカッコいい曲。人を慰め、勇気づける歌詞。鎮めて落ち着かせる旋律。怒りを爆発させる歌詞。
どんな形であれ、音楽によって人の心を動かします。
心を動かすというのは、途轍もないパワーが必要なのです。
例えば、今あなたが「落ち込んでいる人の心を動かしてください」と言われても結構困ることでしょう。
どんな言葉を投げかければいい?
どんなトーンで話せばいい?
目線の高さは?
……と、考えてもキリがありませんし、考えたからと言って、人の心を動かせるとは限りません。
それが音楽だと、不思議とすぐに人の心を動かし得るのです。
ちょっとだけ脱線しますが、スポーツマンが試合前に音楽を聴いたり、失恋した時に曲を聴いたりするのも、こうした効能を何となく分かっているからこそではないかとも思ったりします。
そしてライブやフェスでは、そこにバンドの言葉があり、生の演奏があり、魂の篭った歌声があります。音圧を体で感じて、思いを心で受け止めることで、音楽を聴くだけよりもさらに心を動かされるのです。たまに訳の分からないMCもあったりしますが(笑)、それも情熱と熱血があれば何かしら伝わってしまうものです。不思議なことに。
こんなことを経験できる場を、少なくとも私は失いたくないし、守っていきたい。他のファン達も同じはず。だから、感染症対策を完全に守るのです。失ったら二度と戻らない――なんて、テレビをつければ毎日のように流れて、何となくでも分かっているのだから。
これはバンドの方も同じだと思います。でなければ、赤字スレスレか、大赤字になることが確定するようなライブやフェスなんて絶対にしません。
文字通りに身を削り、命懸けで守っているライブやフェス。
その存在があることだけでも知っておいて欲しいし、心の片隅に置いて欲しいな――と、そんなことを思いつつ、私の実感も書き残すという意味で、今回筆を執りました。
ぜひですね、皆さんもライブやフェスに来てみて下さい。ファンをしているバンドでも良いですし、何か適当に行ってみるのでも良いです。もしかしたら、考えが変わるかもしれませんよ――なんて、そんな偉そうなことを言うわけです。こうとしか言えないわけです。音楽の道に直接携わっていないから。私の武器はこの言葉だけ。
少しでも、何か感じてくれたら嬉しいです。
次回は、バンドの紹介です。色々推していくので覚悟して下さい(何)。
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