【経理勉強録】法人税勉強#4 寄附金

1:寄附金の定義と意義

 まずは法人税法を見ていくと、次の通りに書いてあります。

前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。

法人税法第37条7項

 つまりは、どういう名目であれ、何かを贈与したり無償(タダ)であげたりしたら、それは寄附金に入れますよ、と書いてあります。厳密には、無償の他にも、実際購入するのに支払うべき価格よりかなり安くあげたり(極端な例を使えば、1000万円のものを100円であげたり。こういうことを低廉譲渡といいます)した場合も、寄附金に含まれます。一般的な寄附金、例えば慈善事業的な寄附金のイメージよりもかなり広いものと言えるでしょう。
 但し、上の引用にもある通り、広告宣伝費や交際費等、福利厚生費などなどとは区別されます。この辺りは前回の交際費等と同じです。
 で、その寄附金の金額はどうやって算定するのかというと、お金をあげたらその金額、モノをあげたらそのモノの価値を金額にしたもの(要は時価など)になります。この辺りはシンプルです。
 これら寄附金は、企業が何らかの目的で支出を行う以上、純資産増加説からすると純資産の減少と捉えられます。つまり、所得を減らすものなのだと捉えられますから、損金算入すべき性格のものと言えるでしょう。ところが、寄附金の中には利益処分的な性格のものもあります。要するに「利益が余分に出たので、それを寄附金にします!」ということです。社会から見れば良い会社ですが、法人税の観点からは、とるべき税がとれなくなる(どころかそれを意図的に行う租税回避の観点)から好ましくありません。
 では寄附金を全て損金不算入にする、というとこれもまた問題です。そんなことをしたら寄附金なんてものが無くなってしまうからです。寄附金の中には、公益性の高いもの(例えば国に対する寄附金だったり、公立小中学校に対する寄附だったり、日本赤十字社に対する寄附だったり……)もあるため、そうしたものの動きを縮小してしまうことにも繋がりかねません。
 そこで法人税法では、寄附金を3種類に分けた上で、「この額までは損金算入していいですよ」という限度額を定め、その額まで算入を認める方針にしています。なお、損金算入は支出したもののみが認められるため、いわゆる「未払寄附金」については損金算入ができないことに注意が必要です。

2:損金算入限度額を求める

 ということで、損金算入の限度額を決めなくてはならない訳ですが、この出発点は言わずもがな寄附金であるかどうかの判定です。そもそも寄附金に該当しなければ処理をする必要がありませんから。その判定は先程述べた通りで、無料又は極端に安く物を売り渡したという事実がある時です。但し、ここで注意すべきは、支払ったものでなければ寄附金として扱えないという点です。なので、所謂「未払寄附金」については寄附金に入れることができません。
 では、寄附金であると分かったら次はどうするか、と言いますと、寄附金の種類を3つに分けます。それぞれ損金算入の限度額計算が異なる為です。それは公益性が高いかどうかで判断されます。
 但し、グループ法人税制や移転価格税制との関係上、完全支配関係法人間の寄附金、及び国外関連者に対する寄附金は、全額損金不算入となります。

指定寄附金
 国や地方公共団体(それが運営する学校等、例えば市立学校等も含む)への寄附金、その他財務大臣が指定した寄附金
特定公益増進法人等への寄附金
 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する特定の法人への寄附金。自動車安全運転センターや日本赤十字社という特定の会社や、学校法人、公益社団法人など広く範囲が定められている。(但し、適用を受けるには、確定申告書に明細を書くことと証拠書類を残す事が必要となる。)
⑶一般寄附金
 ⑴、⑵以外の全ての寄附金。

 ここまで行ったら、次にそれぞれの寄附金の損金算入限度額を求めていきます。最終的に、その限度額を超過した分が、損金不算入額として扱われます。
 では、どのようにして求めるのか、1つずつ見ていきましょう。

⑴指定寄附金

 一番簡単です。指定寄附金は全額損金算入ができます。計算するまでもありません。

⑵特定公益増進法人に対する寄附金

 ここからが本番です。まず、寄附金を求めるに当たっては次の数字が必要になります。(これは次の一般寄附金も同じです。)
 これらに一定の料率をかけて寄附金の損金算入限度額を求めていくことになります。

・資本金の金額
・寄附金を除いた所得の金額

 資本金等の金額はそのままの通りです。「資本金の金額」ではなく、「資本金等の金額」であることに注意してください
 次に、寄附金を含めた所得の金額です。寄附金は、限度額を超えた分は所得に対して損金不算入(つまり加算)します。が、この限度額を求める計算論拠に所得(別表四で言うところの「仮計」=当期純利益に税務調整を行った後の金額)を用いなくてはなりません。
 ではどうするかと言うと、この限度額を求める際の仮計から寄附金を除いてやればよいのです。寄附金は費用として扱われますから、寄附金の影響を除くということは費用として差し引いた寄附金を一旦足し戻すことに他なりません。すなわち、「仮計+寄附金額」と計算します(以下、これを「寄附金計算用所得」と便宜的に呼称します)。
 さて、準備ができました。特定公益増進法人に対する寄附金は次の様に計算されます。

① 資本金等の金額×(当期の月数÷12)×(3.75÷1000)
② 寄附金計算用所得の金額×(6.25÷100)
③ (①+②)÷2
※資本金が無い場合は②の金額が損金算入限度額となる。

 何故、3.75の千分率を使うのか、6.25の百分率を使うのか、さっぱり分かりません。多分深い理由はないと思います。なので、こればかりは覚えるしかないと思います。とはいえ根幹にあるのは、「なるべく損金算入限度額が高く出る様にする」という一点で、次の一般寄附金の計算より高い額が出るような計算式になっています。

⑶一般寄附金

 一般寄附金は次の様に求めます。

① 資本金等の金額×(当期の月数÷12)×(2.5÷1000)
② 寄附金計算用所得の金額×(2.5÷100)
③ (①+②)÷4
※資本金が無い場合は、②÷2の金額が損金算入限度額となる。

 この数字も多分深い意味はありません。覚えましょう。

 そして、これら⑴~⑶の合計額が損金算入限度額となり、それを超過した額は損金不算入額として、仮計に加算されます。この「仮計に加算される」というところに注意してください。

3:今までの寄附金計算の流れのまとめ

 で、寄附金計算はかなり面倒な数字ばかりが並んでいる為、時折何から手を付けていいか分からなくなります。なので、以下の手順を徹底するようにしましょう。

1:まずは仮計を求める。(当期に未払寄附金がある場合は「否認」=損金不算入=加算して、前期に未払寄附金があって「認定」する場合は損金算入=減算する)
2:仮計+寄附金で「寄附金計算用所得額」を求めておく。
3:寄附金を3つに分ける。
4:特定公益増進法人に対する寄附金と一般寄附金の損金算入限度額を求める。
5:損金算入限度額を超えた分は損金不算入額として、仮計に加算する。

 これさえ守れば、どんなものが来ても怖くないでしょう。恐らく。

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