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箱庭商事の幽霊ちゃん!

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箱庭商事。その夜間警備アルバイトを3日間限定ですることにした主人公。その目的は、可愛い幽霊に癒されること! ボーイ・ミーツ・ゴーストガールなファンタジック青春小説、ここに開幕!
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箱庭商事の幽霊ちゃん! #1「幽霊とのかいこうっ!」

箱庭商事の幽霊ちゃん! #1「幽霊とのかいこうっ!」

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 逃げるが勝ち、と或る人は言った。誰が言ったかは問題ではない。誰かが言ったということが重要だ。
 今、その『誰か』の胸倉を掴んで確かめてみたいものだ。
 アレは嘘なのか、と。
 現実世界では、人は逃げることを許してくれない。立ち向かって、ボロボロになっても歯向かって、勝てば官軍負ければ賊軍。闘争せず逃走すれば、勝負以前の問題である、と。
 何故だ。
 闘って傷つくことが美徳なのか。傷は戦

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箱庭商事の幽霊ちゃん! ばんがいっ!「エイプリル・スイーツ!」

箱庭商事の幽霊ちゃん! ばんがいっ!「エイプリル・スイーツ!」

 土曜日出勤。
 世間的にはあまり歓迎されない言葉だが(むしろこれを歓迎している人は一度転職を勧めたい)、俺からするとありがたかった。
 何せ今は大学生。遊ぶにも何するにも金が要る。そういう訳で暇な土曜日にもアルバイトが入るというのは嬉しい限りなのだ。
 無論、アルバイトがある、ということ自体も喜ばしいことではあるのだが。

 俺のアルバイトは、箱庭商事の夜間警備。
 この箱庭商事には、幽霊が出る

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箱庭商事の幽霊ちゃん! #5「新しい朝が来たっ!」

箱庭商事の幽霊ちゃん! #5「新しい朝が来たっ!」

「そういやさ」と横を歩く幽海ちゃんが尋ねてきた。
 そう、歩いている。幽霊なのに足までしっかり具現化していて、床をしっかり踏みしめてる。ひたひたという音さえ聞こえない。なんか変な感じだ。
「りっ君って普段は、何をしているの?」
「大学生だよ」
 そう、しがない大学生。煙草も吸わない善良なる大学生市民だ。まあ、お世辞にも「幸せです」なんて言えないけど。幸せだったら、癒しを求めるなんて理由でこんな警備

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箱庭商事の幽霊ちゃん! #4「美味しいものを食べたいっ!(後編)」

箱庭商事の幽霊ちゃん! #4「美味しいものを食べたいっ!(後編)」

「りっ君、何これ?」
 幽海ちゃんから質問が飛んできた。見たこともないのかもしれない。
 一体いつ頃の幽霊なのだろうと疑問が湧いたが、今はどうでもいいことだ。
「チョコレートを溶かしたんだ。ボウルとかがないから器を使ったんだけど」
「……手で掴んで食べるの?」
 幽霊なのに青褪めた顔で、泡沫が結んでは消えるチョコを指しながら尋ねる。盟神探湯じゃないんだから。
「違う違う」
 俺はさっき購入した『い

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