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140字ポケット小説

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【2月は毎日更新予定】恋愛、SF、ファンタジーからデスゲームまで、様々なジャンルの"くだらない"140字小説を投稿します。不定期連載、思いついた時に投稿します。
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記事一覧

【140字ポケット小説】名作探偵小説の苦悩

【140字ポケット小説】名作探偵小説の苦悩

「犯人は――貴方だ」
 嗚呼、私は知っている。
 この台詞を、行動を、そして結末を。
 知っていても如何にも出来ないが。

 私は、小説の中に生きる名探偵であり。
 読者が頁を繰る度物語が始まり。
 最後に犯人を指摘し。

 逆上した彼に心臓を撃たれ死ぬのだから。

 あと何回、私は死ねば良いのだろうか。

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【140字ポケット小説】『気』が合う

【140字ポケット小説】『気』が合う

「やっぱり私達」
「気が合うねえ」
 少女2人は笑い合う。互いの目を見据え、楽しそうに悲しそうに。
「思ってることは」
「こんな時でも同じだからね」
 そして。

 銃を、額に突きつけ合う。

「「元気でね、元親友」」
 バトルロワイヤル決勝。
 開始から30秒、轟音がスタジアムに響き渡った――。

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【140字ポケット小説】1日=48時間の世界で

【140字ポケット小説】1日=48時間の世界で

 ……確かに私は願った。1日が24時間より多かったらどんなに良いことかと。
 優しい神様が希望を叶えたのか、地球の自転スピードが遅くなり1日が48時間になった。

 そうしたら、元々8時間労働を基礎とした労働基準法が、35時間労働を基礎とした。

 違う。これじゃ社畜どころか社隷だ。元に戻してくれ。

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【140字ポケット小説】お化けにゃ学校も。

【140字ポケット小説】お化けにゃ学校も。

 お化けにゃ学校も試験も、会社も仕事も何にもない。

 有名な歌詞がそう告げる。
 だからなのだろうか。
 その夢物語に憧れて、命を自ら絶つ輩が多いのは。

「お化けなんてなったって、怖がられて祓われるだけなんだけど」

 今日も私は、依頼を受けて怨霊を退治する。
 現実の闇に負けた、悲しきお化けを。

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【140字ポケット小説】校長先生「皆さんを静かにするまで――」

【140字ポケット小説】校長先生「皆さんを静かにするまで――」

「次は校長先生のお話です」
 登壇から1分。不良だらけのこの学校で、校長先生のお話如きで話し終えることはない。
 だが、数分後。
 体育館の数百人の生徒は全員静まり返った。

「――皆さんを静かにするまで4分掛かりました。腕が鈍りましたね」

 体育館には気絶した生徒の山が積み上げられていた。

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【140字ポケット小説】嘘吐きは『泥棒』の始まり。

【140字ポケット小説】嘘吐きは『泥棒』の始まり。

「大丈夫です、絶対助かりますよ」
 嘘だ。
 この人は絶対に助からない。その域まで病状が進行している。手術をして手を尽くした所で無駄だ。

 だから、これから安楽死させる。
 でも、最期に安心させたかった。

 そんなエゴが産んだ、優しくて残酷な、命を奪う方便。
 今日も私は、嘘をついて命を奪う。

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【140字ポケット小説】リニューアル・ワイルドキャット・ハウス

【140字ポケット小説】リニューアル・ワイルドキャット・ハウス

「しかし、こんな山奥に料亭なんて洒落てるな」
「これぞ知る人ぞ知るって奴だ」
 男2人は山登りで疲れた体を椅子に預ける。腹の虫がまた鳴ると、醤油タレ香るステーキが運ばれた。

 ここは、山猫軒。

 男達は睡眠薬入りソースのかかる人肉ステーキを食べ、昏倒し、念入りに調理される。
 親分の為に。

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【140字ポケット小説】世界の半分を与えられた勇者の結末。

【140字ポケット小説】世界の半分を与えられた勇者の結末。

「勇者よ。優秀な貴様に世界の半分をやる――共に世界を支配しないか?」
「良いぜ、乗った」
 勇者は悪どい笑顔を浮かべた。
 世界は魔王と勇者に支配された。

 それから数年。
 勇者は兵力と兵糧を揃え、反旗を翻し、遂に魔王を斬り伏せた。
「味方は選ばねえとなあ」
 勇者は悪どい笑顔を浮かべて言い放った。

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【140字ポケット小説】迎え"前"酒。

【140字ポケット小説】迎え"前"酒。

「なあ、そろそろ」
 店主が酔い潰れた男に声を掛ける。
「いきたくない」
「悔いなく呑んだろう。迎えも来たぞ」
 戸が横に開き、羽を持つ天使が入店した。

「逝きたくない」
「呑んだら逝く。約束だろ、親友」

 言われ、男は両脇に抱えられ旅立った。
「……達者でな」
 店主は天を見上げ、涙を零した。

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【140字ポケット小説】盗るか、執るか。

【140字ポケット小説】盗るか、執るか。

「急患です!」
 僕の元に運ばれたのは、重体の一人の男。僕の想う女性の、恋人だ。
 悪魔が囁く。「このままこの人を死なせれば、女性は僕が手に入れられるのでは?」

 僕は言った。
「……手術を始める」
 絶対に助ける。医師として、女性を想う人として。
 嫉妬と悪意を押し殺し、僕はメスをとった――。

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【140字ポケット小説】時間泥棒

【140字ポケット小説】時間泥棒

 君、『時間泥棒』は実在するんだ。この私のことさ。
 ……何だその表情は。信じていないのかい?良いだろう。今から君の時間を奪ってみせよう!

……。

……。

……。

……。

……。

 ……ほら。ページを繰る間、時間が奪われただろ、って何をする、やめろ殴るんじゃない痛いって!ごめんって!!

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【140字ポケット小説】はなむけ。

【140字ポケット小説】はなむけ。

 嗚呼、日和南風が心地良い。花の香水を纏う聖母の手付きの様に、髪の毛を優しく揺らす。
 薄く開く視界には花畑。が、瞼がゆっくり閉まり、霞む。

 きっと。
 不遇な生涯を終える私への、神からの餞なのだ。
 大事に賜り、私は逝く。

 翌日、雪山で遭難した天涯孤独の隠居が、穏やかな死顔で発見された。

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【140字ポケット小説】今日、悪魔に魂を喰われる。

【140字ポケット小説】今日、悪魔に魂を喰われる。

 俺は大病を患って、余命僅かの身だ。どうせ死ぬとなると無気力になる。早く死にたかった。

 ある日、出来心で悪魔を召喚し、魂を代償に贅を尽くした。沢山笑って愉んで。こんなに生き生きとしたのは久々だった。

 今日が、悪魔に魂を喰われる日。死ぬ日だ。
 ……どうしてこんなに、死が恐ろしいのだ。

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【140字ポケット小説】『無限』地獄

【140字ポケット小説】『無限』地獄

「3.14159265358979……」
 地獄へ落ち血の池へ赴く途中、変な男を見かけた。涙を流しながら円周率を数える。
「あの人は……?」
 気になり過ぎて尋ねると、鬼は快く答えた。
「円周率を全て覚えて言い切る地獄に落とされたのさ。間違えたら舌を抜かれる。ほら間違えたぞ――」
 ……私は目と耳を塞いだ。

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