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知っておきたい!霞が関の日常:国家公務員のリアルな仕事事情

こちらのnoteで、大学院にはどういうときに行くとよいのか、を紹介したところです。

そうしたら、私が経験したことのある職業である「国家公務員」のことも知りたい、というリクエストをいただきました。栄養学や研究という話からは少しずれますが、実際に働いたことがある人の経験談というのはそれなりに価値があるかなと思い、私の経験が誰かのお役に立てばという思いで国家公務員の仕事のことも紹介してみようかなと思います。ただし、3年間で辞めてしまったので、私の経験したことはほんの小さな一部でしかないことをご了承ください。農水省に入った経緯と辞めた経緯はこちらで少し紹介しているとおりです。



●国家公務員とは

国家公務員の仕事内容は人事院のウェブサイト(文献1)で紹介されていたので、公開情報としてはこちらが参考になるかなと思います。

憲法により「全体の奉仕者」と規定され、公のための仕事に携わる人が公務員です。各府省で働く場合が国家公務員となります。一方で、地方自治体で働くと地方公務員となります。

●決まり・仕組みを作るのが仕事

国家公務員の主な仕事は、国民のためになる、法律や制度などを作ることです。私たちの日々の生活は、この法律や制度といった、実に様々な決まりの中で成り立っています。そのおかげで、たとえば子どもは6歳になれば小学校に行って様々な学びを得られますし、病院に行ったときに支払う医療費の自己負担は一部で済みます。また、ひとたび災害が起これば、被害にあった人たちの暮らしを助けるための様々な措置がとられます。こうした、国を運営するための仕組みをつくり、実際にそれがうまく運用されるための様々な調整をするのが国家公務員の仕事なんだな、と感じています。

国の根幹の決まりを作るわけですから、それなりに大きな仕事になります。やりがいを感じることも多いと思います。一方で「国民のために」という思いがあっても、実際に国民の生活が改善されていく様子を身近に感じることや、国民の声、笑顔を見聞きすることはなかなかできません。

●府省に所属する専門家

国家公務員として働く場合は、いずれかの府省に所属することになります。私は農水省に入りましたが、農水省は農業者のための仕組み作りを行う省です。農業者のために、その周辺の業種である、食品産業なども範囲に入ります。一方で、たとえば厚労省は、健康や福祉に関しての仕組みづくりを行う省です。府省にはそれぞれ「所管」と呼ばれる担当があります。さらに言えば、その省の中でも部署ごとに所管があります。その時々に所属した部署の担当の仕事のみをやることになります。よく、同じ省の中なのに「うちの部署ではない」と別の部署を紹介されたり、そういう状態を「縦割り行政」と表現されたりすることを聞きますが、各部署で割り当てられていること以外はやらないことを言っているわけです。これは一見融通がきかないようにも見えますが、明らかに他の部署に専門で良く知っている人たちがいるのに、別の部署で担当するのは場違いですから、ある意味理にかなっているとは思います。

そして、ひとたびその府省に入れば、その府省の所管の仕事のみをすることになります。数年で部署は転々と変わるので、同じ仕事をずっとすることは少ないですが、農水省に入れば、農業関連のことに従事し続けることになり、厚労省で扱っている健康や福祉のことを担当することは、通常はないわけです(たまに出向という制度はあります)。ここがまた、地方公務員とは違うことですね。地方公務員の場合は、その自治体の中での部署異動があり、農業関連の部署に行ったり、福祉関連の部署に行ったり、財政を管理したりと、まったく違う専門分野に配属されることになります。

●事務系と技術系の違い

このあたりの情報は私が入省した18年も前のことなので、今とは少し違うかもしれません。当時は法律や経済などの文系の分野で試験を受けた人たちは「事務官」として採用され、たとえば私のような農芸化学などの理工系の分野で試験を受けた人たちは「技官」と呼ばれていました。事務官は、ゆくゆくは府省のトップになりうる人たちで、色々な判断ができるようになるために、様々な部署を経験することになります。部署異動のペースが技官に比べて速く、経験する部署もかなり広いです。一方で、技官として入省すると、すでにある程度の専門知識があって、その知識を使って、その分野の専門家として仕事をすることを求められています。府省のトップになることは想定されていませんし、異動先はある程度専門性が生かされる分野の部署に限定されます。ただ、技官でも、3~5年に一度くらいは部署異動はあり、色々な部署を経験することにはなります。

●国会対応が大きな業務

法律を作る仕事は、行政だけではなくて、立法に携わる「国会」の力つまり、政治家の力も借りなければなりませんよね(三権分立ですからね)。国会議員と呼ばれる政治家たちも常に、国民のためになる決まり、仕組みを作れないかと動いています。そして「国会」という会議?の場で、様々な意見を出して、法律が作り出されます。とはいえ、国会議員たちは一般国民の声を届けるのが仕事。それぞれに得意分野や知識を持っていると思いますけれど、別の分野の法律づくりに関わることも多くあります。そして現状の制度がどうなっていて課題がどこにあって…といった細かいことは、多くの場合、行政に携わる国家公務員たちのほうがよく知っています。そのために国会議員から様々な質問が日々なされます。国家公務員たちは国会議員から質問されたら、他の仕事をしていても、すべての仕事を止めて、議員対応といって、質問に答えに行くのが普通です。そして、国会の開催中は、各府省の大臣が国会で質問されたときの「回答」を用意するのも国家公務員の仕事です。日常的な行政の仕事外に、こういった議員対応、国会対応と言われるものに優先的に取り組まないといけないんです。しかも、議員対応は夜だったり、国会で大臣が尋ねられる質問内容は前日の夜になってわかったり、ということもしばしば。その場合は勤務時刻を過ぎて対応する必要があります。時には夜中とか終電になるとか、終電も終わってしまったからタクシーで帰るとかいうことがあります。部署やそのときの情勢によっては、それがときどきではなくて、毎日になることもあります。

●まとめ

国民の生活を豊かにするための決まり・仕組みづくりをするのが国家公務員の仕事です。政治家である国会議員と協力しながら、法律づくり、制度づくりを行っていきます。「国民のため」の奉仕精神をもつ人にはやりがいのある職場である一方で、国民と接する機会はなく、国民の生活の改善を身近にすぐに実感することは少し難しいかなと感じます。実際に、住民と一緒になって暮らしを良くしていきたい、という気持ちを持つ同期は、何人か地方公務員に転職していきました。しかし、国の決まりづくりに関わることで社会に貢献しようと思うならば、国家公務員として働くのは、ひとつの方法だと感じます!

また、一般的な国家公務員試験を受けた人ではなく、医師や管理栄養士などの資格を持つ人や、現場経験のある人などの採用も行われているようです。興味がある人はご自身で、各府省の採用情報を集めてみてくださいね。

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【参考文献】
1. 人事院. 国家公務員の紹介. 2024.
https://www.jinji.go.jp/saiyo/syokai.html(2024年4月16日アクセス)


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