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健康の維持・増進に必要なのは食品ではなく含まれる〇〇〇!

以前こちらのnoteでは、子どもの健康のための食事の3つのポイントを解説しました。

その3つのポイントとは
1.味付けは薄め
2.野菜は多め
3.日々色々な食品を
でした。

これは子どもの食事に限りません。大人でも同じ考え方で日々の食事を整えていくのがよいと考えています。

ところで、どんな食事をするべきなのか、と日常生活の中で考えるときは、食品の組み合わせや、それらを調理した料理で考えるのが自然ですよね。そのために、実践のためのポイントは、料理や食品レベルでお伝えしました。

一方で、よくいただく質問は「食品〇〇は食べるべきですか?」「食べないほうがよいですか?」という一般の方からの質問です。こういった、個別の食品に関して食べるべきか、食べるべきでないかと考えることは、栄養学を実践するうえではあまりお勧めできません。なぜでしょうか。そして、栄養の専門家のみなさんはどのようにお答えしていますか?



●健康の維持・増進に必要なのは?

人の健康の維持・増進に必要なのは、食品自体ではありません。食品に含まれている栄養素という、小さくて目には見えない物質です。この栄養素たちが体に入って様々な働きをしてくれるおかげで、私たちの体はちゃんと機能してくれるわけですよね(文献1)。

それでは栄養素はどうやって体に届けられるかというと、私たちが日々摂取する食事で摂取します。その食事とは、食品や、それらを組み合わせた料理になっています。その食品の中に、栄養素は含まれているわけです。

健康の維持・増進に必要なのは各種の栄養素。けれどもそれ単独では日常に存在していないため、その栄養素を含んでいる食品を私たちは食べて、必要な栄養素を取り入れます。食品は、私たちの体に栄養素を届けてくれる運び屋さんですね。

●1食品に1栄養素は誤り

食事を作っている各食品には、それぞれ、実に色々な栄養素が含まれています(文献2)。あるひとつの食品の中にひとつの栄養素しか含まれないということはありません。食情報の中には時々(しばしば?)「牛乳にはカルシウム」「レモンにはビタミンC」が含まれるといったように、ひとつの食品にひとつの栄養素しか含まれないような印象を与えるフレーズがあるような気がしますが、それは間違いですね。たとえば牛乳には確かに、他の食品に比べて100 gあたりのカルシウム含量が多いという特徴はありますが、それ以外にも、たんぱく質、糖などの炭水化物、ビタミンAなどのビタミン、カルシウム以外にもマグネシウムやリンなどのミネラルが含まれています。とても少ないですがビタミンCだって含まれてはいます。

「牛乳=カルシウム」の式が成立しないことをしっかり伝えていかないといけませんね。

●体は食品を気にしない

そして、食事として摂取された食品中に含まれる栄養素は、体の中で消化と吸収という過程を経て、体の必要なところに届けられて使われます。そのときに、元々どの食品に含まれていたのかを体は気にしません。元はレモンに含まれていたビタミンCも、牛乳に含まれていたビタミンCも、体の中では同じビタミンCです。健康の維持・増進に必要な栄養素が届けられさえすれば、由来する食品は何であっても、使ってくれるわけです。

●健康は栄養素で考える

ちょうど今「日本人の食事摂取基準」という、厚生労働省が公表している食事の摂り方のガイドラインの最新版を読む講座を開講しています。そのガイドラインには、日本人の健康の維持・増進に必要な各種栄養素を、日常でどの程度の量摂取すればよいのか示してあります。

そのガイドラインの名前は「食事摂取基準」なのに、どうして栄養素の摂取量の基準値が示されているのですか、という質問を講座受講生からいただきました。その理由は、ここまでに説明したように、健康の維持・増進のための食事を考えたいと思ったら、最終的には各種栄養素をどのくらい摂取すればよいか、という話に行きつくからですね。

●栄養の実務者は栄養素→食品の翻訳家

そういうわけで、健康の維持・増進のための食事を考えるのであれば、どの栄養素をどの程度含む食事をすべきか…ということを考えないといけないわけです。とはいえ、食事をするときには、私たちが目にするのは食品やそれらを組み合わせて調理された料理です。各種栄養素の量は目に見えません。含まれる栄養素量を考えながらどのような食事を食べるか決めるには、どの食品にはどんな栄養素がどの程度含まれているのかを知っていなければなりません。つまり、栄養素量を食品量に変換するというか、翻訳するというか、そういった作業が必要になるわけですね。栄養素で定められた食事摂取基準を満たす食べ方を、食品や料理に翻訳して勧めることは、専門家の重要な仕事です。

●まとめ

健康の維持・増進のために体が必要としているのは、食事ではなく、食品に含まれている栄養素です。その栄養素の量がすべて適正であれば、由来する食品は問題になりません。では、各種栄養素を適切に摂取できるようにどう食べればよいかというと、そこは栄養素→食品に翻訳するための知識が必要です。これがまた単純にはいきません。各食品にはひとつではなく様々な栄養素が含まれています。それに、ある栄養素は、量の違いはありますが、食品Aにも食品Bにも食品Cにも含まれています。そんな特徴をもつ食品を組み合わせて食事摂取基準を満たす食事を提供できるなんて、栄養の専門家の方々は素晴らしい知識や経験を持ち合わせているわけですね!

決して「食品〇〇は食べたほうがよい」「避けたほうがよい」という話にはならないわけです。次回以降、具体例を用いながらもう少し考えていきますね。

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【参考文献】
1. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準2025年版案. 2024.
2. 文部科学省. 日本食品標準成分表2010年版. 2010.


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