自然界と徒競走
「久しぶり、元気?」っていうメッセージをもらっても、趣を感じなくなってしまった。
昔は誰かからこんなふうに連絡をもらうとすごく嬉しかった。最近はそういう感じじゃない。
連絡をもらった手前返さないわけにもいかないし、とりあえず返すんだけど、正直なんて返信したらいいか迷う。
理由は結構単純で、毎日いろんなことが起きていて、話しきれないからだと思う。これに時間を使っていて、これを頑張っていて、こういう目標があるの、みたいにわざわざ自分の人生を披露するのも嫌だし……。
久しぶりの人にあれこれ説明するのはめんどくさい。そりゃあ誰だって365日寝て過ごしていることはないんだから、いろいろ変化もするでしょう。だからこう返している。
「生きてる!」
自分で言っておきながらなんだけど、なんて不愛想なんだ……!こんな感じだから、もちろん用もなく自分から誰かに「元気?」なんて抽象的な連絡はしない。
以前にも増してドライになった自分の精神性は、恐らく「自然界」の影響を受けてこうなったんだと思う。
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「自然界」のスピードはものすごく早い。
例えば、昨日まで咲いていなかった花が急に開花したり、逆に昨日まで咲いていた花が急に無くなったり、昨日まで飛んでいなかった虫が大量発生したりする。
三日も外を歩かなければ、まったく世界が変わってしまったことに驚くことになる。
昨日と今日。自然の力は想像以上に力強く、スピード感を持って進んでいる。湖畔に暮らすようになってから、その様子を目の当たりにしている。
ちょっと前にフキノトウが出て天ぷらにしたと思ったら、今度はフキ(クキの部分)が食べられるくらいまで成長していて驚いた。
自然界のスピードに置いて行かれないように、そそくさと収穫した。それでも追いつかないくらい。
フキを煮るのは初めてだったけれど、意外と簡単に煮つけができた。甘じょっぱくて、鰹節の香りがして、少しニガイ。
「今日も無事終わった。明日はどんな景色を見ることになるんだろう。」
夜寝る前によく考える。
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自然と暮らす生活は、明らかに春~秋が忙しくなる。冬以外は忙しなくて、自然界のスピードに付いていくのに必死。
話は戻って、久しぶりに連絡をくれた人に「生きてる!」としか返さないのは決して悪気があるわけじゃない。
自然と暮らす生活、つまり身の回りに変化が多い生活をしていて、一言二言で近況を伝えきれないからだと思う。
今まだ5月だけれども、もっと暖かくなったらもっと植物や生き物の成長スピードはあがっていきそう。力強さに感心しちゃうよ。
自然界と徒競走しているみたいだな。
そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。