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眠れぬ夜は誰のせい

不安なことがあるとそのことばかり考えて眠れなくなる。不安とは、まだ起きていない未来を忠実にリアルに想像して、勝手に心がざわつくことだ。

たった一度でも事件を経験してしまうと「また起きるかも」という、疑い深さが顔を出して不安へと繋がる。一度味わった嫌なことを思い出して、また起きたらどうしようと考えて。こういう思考に占拠され、穏やかでなくなると、しばらく眠れない時間の到来だ。

夜中の真っ暗な天井を見つめて、だんだん目が慣れてきて、黒かった世界が徐々に灰色っぽくなってくる。目は冴えてパチクリパチクリ。

それでも気が付けばまた朝を迎えていることが多い。

「過去に起きた嫌なことを徹底的に反芻して不安になる」という、そのメカニズムはきっとどうしようもない。でも不安を抱くことは、あくまで「まだ起こっていない」ことに対する反応だ。

不安を覚えて眠れなくなっても結局は時間が解決してくれる。例えば眠れぬ夜が一週間あったとしても、普通に眠れる日は必ずやってくるから。時間は一番の薬である。

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先日ついに事件は起きてしまった。いつか起こるだろうから覚悟しておこう……と思ってはいたものの、実際コトが起きるとやはり衝撃を受ける。

ムカデが布団に居たのだ。

「なんで気が付いたの?」

あとから夫に聞かれた。最初に気が付いたのは私だった。なんとなーく自分の腕がチクチクするぞお?と思って顔を向けてみたら、目が合ってしまった(と感じるくらい近くに居た)。刺されなかったのが奇跡だ。

ムカデについては過去にも何度か触れてきているが、うちで見かけるヤツは体が大きくてびっくりする。一瞬ヘビに見えなくもない。しばらく空き家だったから、彼らものびのび元気いっぱいに育ったんだと思う。

そんな事件を体験してしまったものだから、最近は寝不足が続いている。今日は大丈夫かな、部屋に入られないかな、と不安で仕方がない。もちろん対策として、できることは調べ尽くしたし、グッズも揃っている。それでもやってくるのがムカデというもの。

気温が30度を超えてしまえば地上に出てこなくなるから、できれば早く梅雨の時期が過ぎて欲しい。もう毎晩不安を感じて眠れないのはつらい。

なぜわざわざ布団に来るんだろう?と不思議に思い調べていたら、どうやら彼らなりに人間の家の中で気持ちの良い場所を探しているのだそう。布団はあったかくて、湿度もあって、もう最高なんだとか。

それを聞くと、一緒に気持ち良く眠りたいってことなんだね?と多少は可愛く思えてくるものの……いやいやいや……また布団で目が合ってしまったときのことを想像し、怖くなる。

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うちには現在、バケツとトングのセットが至るところに設置してある。いつでもどこでもムカデを見つけたときに対応できるようにするためだ。

なるべくたくさんの生き物とは共存していきたいが、害虫には未だ心をオープンにできない自分がいる。ごめん。

そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。