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鴨の巣作り

庭で鴨の巣を見つけた。恐らくカルガモの巣だと思われる。その出会いは偶然で、まさかこんなところに!という具合で発見した。

春以降、命の芽吹きを感じずにはいられない日々が続いている。それは庭の草花を見ていても思うことだし、生き物の卵や赤ん坊が色々な場所で生まれていることからも思うこと。

この4~5月は偶然にも知人の出産報告も多く(これは人間の話)、新しい命について考えさせられている。そしてひたすらにその尊さや家族の絆のようなものに触れている気がする。命の芽吹きはどうしてこんなに初々しい気持ちを運んでくれるのだろうか。

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鴨の巣を見つけたのはちょうど6月に入った頃のことだった。

明け方、いつも通り庭の草原でヤギたちが食べる草を鎌で刈っていると、近くの草むらからバタバタバタッと一羽の鴨が飛び立っていった。あまりにも近くから出てきたものだからとても驚いた。

「なんでこんなに近いところから出てきたんだろう?」

不思議に思った私は、鴨が飛び出てきたあたりの草むらを覗き込んでみた。すると、枯草を器用に活用した素晴らしい巣と4つの卵があるのを見つけた。野生の鴨の卵を間近で見たのは初めてだったから、素直に感動した。

鴨の卵はニワトリの卵とほぼ同じくらいの大きさだった。色も白く、よく似ている。あとで知ったことだけれど、鴨は通常10個程度の卵を産卵するそう。発見した時、卵はまだ4つだったから、その後もっと増えたかもしれないし、すでにヘビやネコなど天敵に食べられてしまった分があったのかもしれない。

草刈りで鴨を驚かしてしまったから、もう一度巣に戻ってきてくれるか心配した。最悪親鳥が戻ってこなかったら、自分で孵卵器を買うなり作るなりして卵を育てようかとも思った。

でもそんな心配は要らなかったみたい。草刈りで驚かしてしまってから3時間後にもう一度巣をそっと覗いてみると、親鳥がちゃんと帰ってきていた!とても安心したし、心が震えるくらい嬉しかった。

なぜだかその光景が愛しくて、自分のなかにある動物愛、生き物愛を再認識した。私はやっぱり動物が好きらしい。鴨の巣を見つけたことで、いつにも増してペットのヤギたちも愛しく思え、思い切りハグをしてみた。ヤギは別段変わることもなく、いつも通りの反応だった。

鴨の卵が孵るのは約20~30日後とのこと。

それまでの間、なるべく巣には近寄らず、たまに元気にしているかなと様子を見るだけに留めている。今のところ、親鳥は上手に草むらに隠れている。擬態が上手だ。抱卵もあと半分くらいかな。元気に生まれてきて欲しい。

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鴨だけでなく、カエル、カマキリ、ゴキブリ、などの赤ん坊を最近ではよく見かける。

特にカマキリは、うちの玄関(しかも室内側)に卵が産み付けられていたらしく、数日前に玄関がカマキリの赤ん坊だらけになって面白かった。床にもカマキリ、壁にもカマキリ、玄関のカーテンにもカマキリ……。夫と協力して、小さな小さなカマキリをなるべく外へ出してあげた。

その時の光景がシュール過ぎて笑えた。人が予測できないあまりにも楽しいことを起こしてくれる生き物たちに、たくさんのエネルギーをもらっている。

そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。