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文化を守る姿が美しくって

三連休で地元を離れ、ちょっとした旅に出た。

行き先は、群馬県桐生市。

桐生はずいぶんと昔から織物の町として栄え、今でもその面影が大いに感じられる文化的な場所だった。世界遺産に登録された富岡製糸場もすぐ近く。

自然豊かで、森林を散策したりもした。

その時のこと。

素敵な生き方をしている方に出会った。和紙職人だった。

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彼女は森の近くで和紙工房を一人きりもりしていた。

お店は小さく、温かみのある色の和紙がずらっと並んでいる。障子に貼る紙、ポチ袋、便箋、封筒、色紙などたくさんの雑貨が置いてあった。

「昔はこのあたりに20軒近くの和紙屋さんがあったんですけどね。今はわたし一人です。」

お金儲けのためでなく、文化継承の意味を込めて、和紙作りを続けているという。

化粧っけのない素顔がとてつもなく美しかった。

伝統工芸のような文化は誰かが守っていこうと思わなければ廃れてしまう。ただ、守っていくことは本当に大変なことだとも思う。簡単に真似できるような技術じゃないし、何年もかけて身に付けていくものだから。

「守りたい」って感じる人が途絶えたとき、その歴史に幕を閉じてしまうんだろう。もしかしたら、今回出会った桐生の和紙も。

でも今はまだ彼女がいるから。

話を聞きながら、町の歴史、家系の歴史とともに忠実に歩む彼女の生き方にすっかり惚れてしまった。

自分はそこまで自分の町のことを知れているだろうか?学ぼうとしただろうか?町が大切にしてきた文化を守ってみたいと少しでも感じたことはあるだろうか?

何百年も続いてきた伝統工芸を目の当たりにして、今の生活で精一杯なんてもったいない気がした。

「楮(コウゾ/木の原料)100パーセントの紙はやや透けてしまうんですけど、それもいいところです。」

生き生きと紙への愛を語る彼女。

一人で和紙を守る姿が謙虚で気持ちよかった。

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たくさんのモノが溢れた世界。機械で作られたモノ、人の手で作られたモノ。

「これはどこで、どうやって、どんな想いで作られたモノなんだろう。」

モノを見るたびにしばらくは問いかけたい。

彼女から購入した和紙のハガキと封筒はいま手元にそっと置いてある。

「守る」という想いでモノ作りをする人に出会えて、なんだかまた暮らしに対する気持ちが少し変わった気がする。


そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。