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一番長かった待ち時間

地方の湖畔へ引っ越してきて5か月目を迎えている。だんだんこの町の暮らしにも慣れてきた。

どこのスーパーが安くて品揃えがいいとか、公共施設の営業時間とか、どの道を通れば近道になるとか、ささいなことが分かるようになってきた。最近ようやく町の住人っぽくなれているような気がする。

改めて感じることと言えば、田舎は人が少ないということだ。

都内での生活を経てから地方へやってくると、人口の少なさに驚く。数字で見てもそうだけど、なにより体感としての少なさが伝わってくる。電車はガラガラ、車も少なく渋滞とはほぼ無縁。町も畑も静かで、最近ではウグイスの鳴き声がハッキリと響く。

野菜が育つのをじっくり待つような「待ち」ではなく、お会計に並ぶような人が関係する「待ち」を忘れかけそうだった矢先のこと。

初めて長時間待たされた場所があった。

産婦人科(病院)だった。

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本当は9時半~の予約だったけれど、ちょっと早めに行ってようと思い9時には到着。そして診察室へ案内されたのは11時半のこと。

2時間半。

まさか2時間半も待つとは思っていなかったから、診察室へ次の人が呼ばれる度に顔をあげて「まだか」「まだ私じゃない」を繰り返した。

ようやく名前が呼ばれた時には、私も付き添いの夫もすっかり疲れ顔になっていた。ディズニーランドのスプラッシュマウンテンに乗車するために待っているのとはワケが違うのだ。

普段から人が多くて、忙しない町に住んでいたらこうは思わなかったんだろう。いつもの生活で「待つ」場面がないから、余計に待ち時間が長く感じた。

もしかしたら田舎で最も混んでいるのは「病院」なのかもしれない。

今回は産婦人科で、他の病院にかかったことがないから分からないけれども、あり得るなと思う。高齢者も多いし、病院数も少ないから、大体行くところは皆同じになるんだろう。

久しぶりの「待ち」を経験して、町にもっとたくさんの病院があったらいいのになと思った。なんてありきたりな願望なんだろう。けれども単純にそう思ったのも事実だ。

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そういえば病院の待合室ではテレビが流れていた。

うちにはテレビがないから久しぶりにテレビを見た。昨年のM1グランプリで決勝戦に残った「ぺこぱ」の私生活を紹介した番組だった。

「テレビを見ること」も自宅では経験しないことで、病院ならではだと思い、たまにはいいかと納得した。

長い待ち時間に少しでも彩を加えてくれた「ぺこぱ」に感謝している。実は紫の方のファンになりそう。

そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。