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メッセージは簡単に見えないからこそ意義がある / SKGロゴデザインの視点「上野村森林文化館 mori+」

連載「SKGロゴデザインの視点」では、ロゴデザインが生まれるまでのプロセスやアイディアを私たちが携わってきた事例と共に紹介しています。

SKGでは「ブランド=人」と捉えています。人の「名前」がブランド名で、「顔」がロゴ。「信念(心)」はブランドコンセプトです。

▼ブランディングデザインの詳細については、こちらの記事をご参照ください

今回ご紹介するのは、総面積181.85㎢のうち95%が森林という村にある「上野村森林文化館 mori+(もりと)」のロゴデザインです。

美しい自然に囲まれた上野村は、東京からは約2〜3時間でアクセスできるため、週末ドライブにも最適な場所です。

本プロジェクトでは、そんな上野村の文化館にて、ロゴをはじめ、展示企画や館名から造作物、壁面、パネル、紙物といった隅々までSKGがデザインを担当しています。展示制作の背景から、それを基盤にして生まれたロゴ、メッセージを宿す際の創意工夫を楽しんでいただければ嬉しいです。

95%が森林の村へ行き、館内に“森”を感じる常設展をつくりました

村の総面積の95%が森林、人口は1,000人ほどの小さな村「群馬県上野村」。かねてより林業をはじめ、森林と人が密接に関わっており、そのサスティナブルな取り組みは行政からも注目を集めています。

今回はそんな上野村で、公民館をリノベーションして、森林の役割が学べるパネル展示を中心としたコンテンツ制作を担当しました。

展示の総合テーマは「森に生まれ、森とともに生きる」。 

上野村には独自の自然環境や森林資源があります。その環境(成り立ち)や営み、持続循環型の村づくりについて学び、未来への視座・感性を育む起点になる場所として、このテーマが掲げられました。

そこで展示企画では、高さ3.6m、幅58mにも及ぶグラフィックウォールを設置。京都の市街と郊外の景観を描いた「洛中洛外図屏風」を発想元にし、「上野村の森林との暮らし」を表現しました。

写真: 山本康平

また、今回のメインターゲットは中高生であることから、村の活動内容についての説明は頭文字をとって“かきくけこ作文”に。案内役は、季節になると村に集まる“アオバト”のキャラクターにするなど、覚えてもらいやすい工夫をしました。

そして、「森と文化」「森と経済」といったように「森と〇〇」の展示内容と連動し、森林とともに歩む未来を探ることを目指して、私たちが提案した館名が「上野村森林文化館 mori+(もりと)」

森と共生し、森を価値として捉えている上野村の様子から、「と」を+記号で表わしました。

プロジェクトの“核”となるメッセージをロゴに落とし込む

今回のロゴデザインは、展示デザインがある程度進んだ状態からのスタート。

ですので、以下のポイントを意識して制作にあたりました。

・コアターゲットの中高生にも伝わるわかりやすさ
・館名、展示内容、デザインとの連動性

そうして完成したロゴがこちらです。

本展のキーワードである「森」を中心に、そのなかに森とともに生きる「人」が中心の「木」と手を取り合うように見えます。

さらにじっくりと見つめていると「未来」という漢字が浮かび上がってきませんか?

森とともに生きる、森林とともに歩む未来を探る。このプロジェクトの“核となるメッセージ”、「森と〇〇」といった館名、展示内容をすべてロゴにも反映しました。

展示の総合テーマにもある「未来」の意味も込めるという発想は、デザインを考えるにあたって無意識に手を動かしていたら、僕の雑な手書き文字から漢字が見えてきたという…(笑)。そこで「森の漢字を未来とも読めるようにできるのでは」と気がついたのです。

そこから、読みやすすぎず、かといってまったく読めないというわけでもなく…という絶妙なラインを探しながら形づくっていきました。

引用元:国土交通省 国土地理院

また、ロゴタイプのかたちは、地図記号の針葉樹と広葉樹から着想を得ているのですが、これがまた偶然という名の必然とも言えまして。

プロジェクトを推進するため、いつも通りチームメンバーとともに会議をしていました。地図を出しながら「上野村は群馬県のこのあたりで…」と説明しているときに、ふと「小学生のころに地図記号を学んだな」と思い出したんです(どうやら小学3年生で習ったようです)。

そこから詳しく調べてみると、森としての記号はなく、「針葉樹」と「広葉樹」としてマークが使い分けられていることにあらためて気がつきました。

針葉樹や広葉樹は、プロジェクト進行中にもよく飛び交ったキーワード。そこで、この記号から文字を作ってみるのはどうか、とロゴデザインに取り入れました。

「未来」の文字も、ロゴタイプのかたちも、日常や当たり前のできごとに対して、ちょっと俯瞰しながら、アンテナを張っておくことでデザインにつながる場合もあるのですね。

ロゴデザインには、鑑賞者が受け取れる“あそび”を

「森」と「未来」の漢字を用いて、ロゴに2つの意味を持たせたとはいえ、「未来」はこうしてじっくり説明しなければ、直感的にはわかりづらいのかもしれません。

でも、ロゴデザインを観てくださった方が、説明もなくご自身で「未来」を発見したときには、その方に展示の意味が響く度合いはグッと深まるはず。

メッセージ性の深みは「鑑賞者自身に見出してもらう」ことで齟齬なく伝わるため、誰もが理解できるように「わかりやすくする」のは違うと考えました。

そして、せめて展示にはそんな想いが込められている、ということを示したいと思ったのでした。

お店でも展示でも、立ち上げる際には必ず“そこに込められた想い”がありますよね。それはもちろん、ブランド全体で体現すること(ここでは展示をご覧いただくこと)で伝えていくものだと思っています。

ただ、「顔」であるロゴを通しても、その込められたメッセージが垣間見えたり、静かに伝えられたりすると、より意義深いものになるのではないでしょうか。だから今回はロゴにも「想いを具体的に込める余地」を見出したのです。

この“あそび”の部分をもたせられるのがロゴのおもしろさであり、真の役割でもある。この考えは「上野村森林文化館 mori+」に限らず、SKGのデザインの多方面に「遊び心」として生きているかもしれません。(実は学生の頃に拝読した佐藤卓さんの著書『クジラは潮を吹いていた。の考えに共感し、ここに遊び心のルーツがある気がします。気になる方はぜひ読んでみてください)

最後に、『上野村森林文化館 mori+』のロゴデザインが生まれた3つの視点をまとめます。

SKG流ロゴデザインの視点👀
☑️ロゴにはプロジェクトや制作物との連動性を持たせる
☑️いつもの話し合いの場にこそ、ロゴを形づくるヒントが隠れている
☑️込めた想いが垣間見える、機能だけではないロゴづくりを

今後もSKG公式noteではデザインが身近になる制作エピソードや、デザインのコツをお伝えしていきます。

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