見出し画像

とうとう母になり、未知、ならぬ乳との遭遇

人間の回復力って、本当にすごいな、と自分の身をもって体感しました。
若くないと思っていましたが、結構自分イケてたわ、と。

でも、出産・育児を経験して、いまだに産後を引きずっております。
回復力は、歳を追うごとに衰えるのでしょう。

若いうちに出産しろというのは、こういったところに現れます。


アホかあんた、そんなうまいこと人生計画できたらなんもおもろないやないかい。


と、ワタシの中のエセ関西弁のおばちゃんが毒吐きます。
若いうちに産めるかどうかなんて、誰もわかりゃしません。

そんな初老が、とうとう母になります。
ワタシは、このタイミングでしか母になれなかったかな、と今では思っています。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


産休に入った。


自分を含め、割と初老が多い仕事の仲間に

「みんなの老後を支える人材をがんばって生み落としてきます!」

と宣言して、職場を後にした。


(まあ、お前らのためにアタシのギャルを犬死させはしませんけどね!と腹の中で独り言ちたのは、ここだけの話だ)


そして、とある年始にギャルは産まれた。

病院は相変わらず食事が貧相でコンビニに入り浸るしかないし(でも年始で少しはお正月っぽい献立もでたけど)、
看護師の一人がものすごくスパルタで夜勤(夜中の授乳)に「看護師に起こされてくるなんて言語道断、自分で起きてこい」と言われて怖かったり、
4人部屋だからなんだか落ち着かなかったり、
しかも前回入院の時と同じ廊下側ポジションで地味に寒かったり、
実は出産時の出血量が650mlと多かったのに何の説明もなかったりしたが、


(文句たくさんだなおい)


でも、母子別室だったのは、初老には助かった。

お祝い膳とか憧れたけど、乳がんで入院してた時の食事より、母乳出すためかしっかりたくさんご飯が出た。
(ワタシのような白ごはん好きにはありがたい、米だくさんなお膳だったが…)


そして、何より生まれた瞬間から、ギャルがめっちゃ可愛かった。


取り出されたその顔を見て「わあ、旦那そっくり」とびっくりした。
出産のときにそれこそ声に出したかもしれない。
(「はい、こんにちは」って言えたChim↑Pomのエリイさんすげーな、余裕あるわ)
女子という以外に自分に似た要素がなかったが、とにかくいとおしかった。

「孫」という歌に「なんでこんなに可愛いのかよ」とあるが、無条件に感じるこの愛情は底知れない。
例えが古い。


困惑しながら、しかし出産に立ち会った旦那も一瞬にしてこのギャルの虜になった。
なぜか妊娠出産にハナから否定的だったくせに(とはいえ一応妊娠中に父になることを受け入れられた旦那だが)、一目見た瞬間から目がハートである。

えー。
男でもこんなに未知な生命体に、無条件無尽蔵の愛情を感じるんだ。
女はまさに自腹切って(人によってはリアルに)産むわけだし、可愛がらなきゃ損だと思うが。

そう思ってかなり衝撃を受けた。
なんだこの現象は。

太古よりインプットされている本能だと思うしか説明できない。
だって本当にお前の子かわからねえよ?←そんな某⚫︎GENJIのメンバーみたいなことは断じてないのだが。

(まあ、自分の腹を痛めて産んでも子供を可愛く感じない人もいるし、他人の腹からの子供でも溺愛している人もいるし、さまざまだからわからないけれど)

そして、思ってもみなかった状況が訪れた。

出産した翌日の夕方だっただろうか(すでに授乳のトレーニングをしていた)、気が付いたらパジャマの胸元が濡れている。


へ?
なにこれ?


まさか、母乳?!


やだ、こんなにあふれるの?


と思いながら慌てて病院の売店に母乳パッドを買いに走った。
入院中、ギャルのおむつとおしりふきは全部病院から支給されるが、母乳パッドはさすがに支給がなかった。


まさか、乳がんを経験した私が、こんなに乳まみれになるとは。
しかしそれは健常な左乳房のみ。

手術・放射線を受けた右乳房はまったく濡れることはなかった。
まあそりゃそうよね。

…だがこれはまだ序の口。

耳年増的に聞いては慄いていた母乳マッサージ的なものもなく、こんなにいともたやすく出るなんて。
(ってお前、すでに年増も過ぎて初老だってば)

なんて感動していたら、さらにひっくり返りそうなことが起こった。

「すけっちさん、右側でもおっぱいあげてください」


ハァ?


ちいかわのウサギくらいとぼけた「ハァ?」が出たと思う(当時はちいかわなかったけども)。
あんたたちがアタシの乳腺を、あの荘厳なる装置様使ってぶっ潰したんでしょうよ?
なにを言っているんだ?と思った。

(あんたたち、と一緒くたにしているが、同じ病院なだけで違う部門だから、とんだとばっちりだし、何しろ必要な治療だし、彼らに言われる筋合いはない)

しかし、言われるがままに吸わせた。
…なんと、本当に少量だが母乳が出るではないか。

どういうこと。


「出ますね!こっちでもなるべくあげてくださいね!!」と助産師さんが言っている。


謎過ぎる。


まあとにかく、すべての情報がカルテで共有されていて、病歴がきちんと伝わった状態で母乳指導が受けられたのは本当にありがたかった。

そう、私はハイリスク妊婦からの経産婦with赤子。

病院に文句を言うつもりは全くなく、本当に感謝している。


右で授乳できることを、今度の乳腺外科の診察で聞いてみよう、とおもった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


でも正直、ごはんはおいしい方がいいです。
なんちゃって。

そして実は手術・出産したこの病院には結構ちゃんとしたレストランが併設されています。
某なんちゃらホテルの経営とかいって。

何だか知らんけど、なぜ大学病院って、いいレストランが併設されているんですかね?
学会の後の懇親会のため?

そのレストランのノウハウをぜひ病院食に取り入れていただきたいです…。
ワタシは今独居房にいるのか?と感じるようなご飯だけは、本当に改善の余地がある気がする。

ま、無理か。苦笑。


そんなわけで、とりあえず母にはなれました。
(子供を産み落とす、という意味においてのみですが)


※病院スタッフとのやり取りなど、ほぼ真実ですが、出産、子育てについては日進月歩、情報がアップデートされるので、ここの情報が正しいとは限りません。何かご不安がある場合は、専門の医療機関などに問い合わせることを、強くおすすめします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?