武見倉森

平成11年生。ゲンロンSF創作講座3期・4期生

武見倉森

平成11年生。ゲンロンSF創作講座3期・4期生

最近の記事

ゲンロンSF創作講座6期第2回梗概その2

水住 臨「創造的休暇は突然に」 史実を辿りつつフェイントを入れて奇妙に捻じ曲げるというその手つきが上手い。複数のキャラクターを立っており真空低温調理も発明されてめちゃめちゃ面白い。実作にしても破綻しなさそうでもあり、当時の生活のディテールを詰めればOKみたいな状態になっている。アップルパイで優勝してください。 方梨 もがな「二十日鼠は死んでいた。」 (人類から見れば)時代を超えてねずみに宿るアルベールという設定が良い。梗概にあるストーリーに加え、様々な時代に飛ぶことも含めて

    • ゲンロンSF創作講座6期第2回梗概その1

      中川 朝子「風を痛む」  「痛みに耐えかねた住民は続々とQ地区を去る」とあるけれど、これはこの時期に地区を去る人が急増したのか、物語の開始時点で地区を去る人が多かったのか、どちらなのか気になる。前者であればその理由が必要になるし、後者であれば梗概の序盤に入れる情報な気が。  痛みを起こす風が飛翔を覚えた遺伝子の欠片、などのネタは良いけれど、ストーリーはわりとあっさり終わった印象。これだと20,000字いかないのでは、とも思う。別に20,000字いっぱい使わないといけないわけで

      • ゲンロンSF創作講座5期第3回梗概感想②

        西村真「これは銃です」「西村真さんの『これは銃です』。『これはペンです』のオマージュタイトルだな」 「そういう話ではないけどな。で、ヒト型AIロボットがもとは銃だったってところがかなり好き。警部補がじつはAIロボットだった! というのが驚かせどころなのかもしれないけど、そこは最初からAIロボットって言っても良いんじゃなかろうか」 「わたしは少女をどう書くのか、というのが気になった。梗概を読んだ限りだと、超然とした雰囲気があるんだけど、それ以上がないというか。キャラクターが

        • ゲンロンSF創作講座5期第3回梗概感想①

          「この記事はなんなん?」 「えーとね」 「うん」 「人様の梗概を読んで感想に似たなにかを書いていこう、という趣旨でね」 「第3回という中途半端なタイミングではあるけどね」 「そうそう、1回と2回の梗概はあまり読めていない」 「なんで対話形式?」 「ええやん。そういうのやってみたかってん」 「ほー」 「あと、これを書いている時点ですでに円城先生が梗概へのコメントを公開されてしまったけど、それは読まずに書こうと思う」 「影響を受けてしまうかもしらんからか?」

          私は-あなたと-食べた/小説

           私は家に着くと妻に向かって、 「人肉を食べてきたんだ」と言った。  妻は肩を撫でながら、そう、と薄く微笑んだ。  バスと電車を乗り継いで八時間。駅を出た広場で男が私を待っていた。 「お待ちしておりました」  背筋の伸びた上半身が折りたたまれ、やがて頭が上がった。宍倉(ししくら)だと男は名乗った。執事のような恰好をしているが、周囲に浮かないような小綺麗で現代的な小物をつけている。ちょっと綺麗すぎる顔も伏目がちなためか、驚くほどじゃない。 「お疲れでしょう。どうぞ、こちらへ」

          私は-あなたと-食べた/小説

          ゲンロンSF創作講座自作まとめ

           受講生の方々は他の人の作品を読みこんでnoteやブログ、Twitterで感想を投稿してくださって大変ありがたい。一方で自作をどのように書いたかをまとめている人はほとんど見かけない気がする。それはまあ、自作の設定を丁寧に解説することのダサさとかはあるだろうけど、わたしは小説のあとがきを躊躇なく最初に読むような人間であるから、作者による自作のあれこれを読みたいと常々思っている。なので自分から書くか、というのがこの記事の趣旨です。2年間通ったのだしね。では、行ってみよう。 ゲン

          ゲンロンSF創作講座自作まとめ

          「あの証言たち」の参考文献/ゲンロンSF創作講座4期最終実作

          ゲンロンSF創作講座の最終実作に「ある証言たち」というタイトルのサッカーと精神疾患を題材にした短編SF小説を提出したのだけれどもその執筆のためにどんなものを読んだのかを書いていく。 ・『うつ病とサッカー』著:ロナルド・レング 訳:木村浩嗣  まずこれを挙げなければ話にならない。小説を書き始めたのが大学に入学してから、つまり2017年からなのだけれど、そのときからずっと「サッカーと精神疾患」をテーマに一本書こうと考えていた。ただどのように書くかということの糸口が見つかっていな

          「あの証言たち」の参考文献/ゲンロンSF創作講座4期最終実作

          From The White Asparagus, With Love/小説

           彼女とは街角で出会った。  ドーンとぶつかって、彼女の食パンが地面に落ちて、白衣の下のロングスカートがひらりと舞い、チャックが半開きになった僕のかばんからは研究データの束がお好み焼きの鰹節のように踊った。端末が紙束よりも高く飛んで彼女の頭に落下する。 「うげ」  と彼女の口から蛙みたいな声が洩れる。  大学へ向かう道での出来事で、まあ少女漫画のような出来事である。  彼女は立ち上がって白衣についた汚れを払い、 「なるほど」とつぶやく。  僕もなるほど、と言い、すみませんね、

          From The White Asparagus, With Love/小説

          いずれ不幸になる子供たち〈改訂版〉

           せっかくnoteのアカウントを作ったことだし、ゲンロンSF創作講座4期の初回に提出した実作の改訂版……というか増補版を載っけます。後半が6000字くらい増えてます。 ゲンロンSF版はこっち     1  僕を起こしたのは僕の自慢の鼻だった。  空気中の匂いの変化の一切を嗅ぎ分ける自身が僕にはあって、だから僕には喧しい誰かの声もまぶたの裏を真っ赤に染める太陽もいらない。  キイチゴの囃し立てるような甘酸っぱさ。卵をさっと炙って半生にした鼻のおくに吸いつくような香ばしさ。

          いずれ不幸になる子供たち〈改訂版〉