校内のICTのもう一歩先へ
Google for Education認定トレーナーの笠原です。
本日はICTの活用に関して大変参考になる書籍を紹介します。
「ICT主任」とはタイトルに書かれていますが、主任でない自分にもとても参考になりましたので、内容をご紹介します。
ICTが入ってきたけど…という学校のために
本書の最適の読者は「ICTが学校に入ってきたけど、イマイチ上手く使えていないような気がする」という問題意識を持っている人すべてだと言えます。
このように感じるのは「はじめに」の内容にあります。
つまり、ICTを学校で活用することに対して問題意識を持っていながらも、そのためのノウハウを持てずにいる先生方への支援となることが意識されているように受け止めることができます。
そのため、本書の構成も最初の2つのスキルのポイントが「同僚のICT活用を支援・推進するためのポイント」「推進する仲間を巻き込むためのポイント」ということから書かれていることからも、「個人のノウハウやスキルを伸ばす」というための書籍ではなく、「学校の活用を充実させるため」の一冊なのだとはっきりと分かります。
だからこそ、本書はたとえICT主任や情報部の担当者でないとしても、「もっと学校の同僚とICTを活用して教育を変えたい!」という思いのある人が、一歩を踏みだすための一冊になっていると言えるでしょう。
細かいTipsから長期的な展望まで
本書が他に類を見ないと感じるのは、日々の業務のTipsが事細かに書かれながらも、一方で一年以上の後の展開まで視野に入れた取り組み方が紹介されている点です。
「校内支援・推進」の章では、「同僚」からの信頼を得るために、どのようなマインドセットが必要かということがかなり丁寧に述べられています。さらにそこに加えて「管理職」や「保護者」に対してもいかに信頼を得る仕事の仕方があるかということ解説してくれています。
このような「信頼」を得るための仕事の仕方は、なかなか明文化されていることは少ないように思います。口伝的に伝わっているように思いますが、ICTを推進する立場にある先生は、もしかすると比較的若手の先生が多い可能性もあり、こういう「信頼」を得るための仕事の方法の解説は非常に重要になると思われます。
さらに長期的な環境整備のための視点での助言が書かれていることも注目です。
本書ではくり返し「ICTは金がかかる」という趣旨のことが述べられています(笑)。身も蓋もない言い方でありますが、実際に非常にお金がかかるのは事実です。
そのためにICTを推進する立場にある先生方が積極的に研究費を取りに行くことを提案しています。例えば有名どころでは
パナソニック教育財団の助成金の紹介をしていますし、その獲得に向けた戦略も紹介してくれています。
このような研究費の獲得に挑戦した方がよい理由を、単純に「資金」の問題だけではなく、「自分たちの学校の実績を整理すること」に繋がるという視点から説明してくださっているのもGoodです。
「情報発信まで!」の意味
本書の表紙には「校内支援・推進、環境整備から校内研修・情報発信まで!」というフレーズが書かれています。
最後に「情報発信」ということに触れているのが、非常にICT活用らしいと感じます。
本書ではICTを推進するためのアイデアや仲間を得るためには、自分の実践を発信することに価値があるということを助言しています。自分が情報を発信するからこそ得られるつながりがあり、勇気づけられるのだということを丁寧に教えてくれています。
本書には「デジタル・シティズンシップ」という言葉は出てきませんが、教員がSNSによる情報発信の熟達することは、「デジタル・シティズンシップ」を考える時に非常に重要になると感じます。
ICTの「C」がコミュニケーションであるということの意味を考えさせられます。
実際、自分の実感としてもこうして細々と情報発信をしていると、自然に情報の方から集まってくる感覚がありますし、自分の情報が他の人の役に立つことでより一層、ICTを使った教育の可能性が広がるなら嬉しく思います。
また、発信を行うためには「自分がどのようなことをやっているのか」ということを考えなければならないので、自分の仕事をふり返るよいきっかけになります。
ICTの推進の本質は「仲間作り」にあるのかもしれませんね。
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