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イージーな解脱

実は人間、呼吸法を使った深い瞑想で追い込みをかけると、簡単に解脱してしまう。

解脱というのは、この世になんの未練もなくただ在るだけで幸福を感じる状態である。

通常、瞑想をする際には呼吸を意識しましょうという指導が入ることが多い。禅なんかはそんな感じである。ところが、チベット密教の秘技である呼吸法がある。通常の瞑想の何倍も深く長い呼吸を使って、常時瞑想状態で生活をするのだ。当時瞑想にハマった僕は三十秒吸って三十秒吐き続ける呼吸法を使って生活していた。こうすると、思考が止まる。余計なことは考えなくなる。人間らしくなくなる。

僕はいわゆる、変性意識状態と呼ばれる状態で生活していたのである。これはトランス状態の一種で、目にする世界は輝き、理由のない多幸感に包まれる。僕の場合すぐに生への執着すらなくなってしまった。僕は、餓死しようという気になって、それを実行したりしていた。瞑想中毒の成れの果てである。瞑想をはじめて一年半くらいで深い変性意識状態に入ることになったのだが、今思うと異常なことをやっていた。

この話、僕はよく、映画マトリックスに似ているなぁと思う。欲のある世界、それぞれの夢の世界。これを青のカプセルとする。青のカプセルを飲んで人々は競い合う。出世とか、恋愛とかもそうだ、そして、赤のカプセルというのもある。共同の夢から覚めてしまった人の住む世界。充実感とは違う、ただ幸せを味わうだけの世界。このカプセルは、ランナーズハイとか、ドラッグ、そして瞑想をやり続けることで、それを飲んだ事になる。

僕は去年1年かけて、赤のカプセルの世界、悟りの世界を体験してみた。なかなかに面白い経験だが、最後にはつまらなくなる。欲がなければ人は退屈なのである。

そして、今度は青の世界で、みんなと同じ夢を見ようと思う…悟りの世界は孤独だ。本人は寂しくなんて感じなくなるけれど、僕は皆と同じ歩幅で歩いていきたいのだ。一人きりの世界は怖い、最後は夢も希望も、何も感じなくなる。ただ幸せなだけ。刺激もない。

生きている内は、解脱なんてするものではないのだ。
幸せなんて時々でいい。
苦しくても、普通の人生を送るべきだ。

さて、青のカプセルを飲むことにした僕は、次はどんな夢を見に行くだろう。

まずは色々なことに関心をもって、勉強するところかな!


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