【短編】信じる愛、受け止める愛。

「みなこ…」
最近の彼の寝言。知らない女の名前。
ねえ、こういうの、まじ聞きたくないんですけど。
そう思う。
広々寝たいから、とダブルでは無くおそろいのシングルベットを繋げている。
おそろいのシーツ、おそろいの毛布、おそろいのパジャマ。…枕だけは、好みが違うので別々。

同床異夢と言うけれど…誰の夢を見ているんだ!?
嫌になる。夜中にふと、起きてしまった自分を呪う。

でも正直、彼が浮気をする暇はない。
機械に疎いから、壊してはいけないから、と言う理由で、彼のスマホや社用携帯、パソコンには触っていないけれど、彼は本当に激務だ。
毎日終電で帰っていて、土曜日も出勤している。
終電にもかかわらず、帰ってきてからもパソコンとにらめっこしている。

一度、
「忙しい人は浮気をしていて忙しいフリしてたりするよね〜」と、
何かの時に冗談で言うと、
彼は、全く動揺せず、疲れた笑みを浮かべ、
「そんな暇があったら、家で寝てるわ」
と言っていた。

「みなこ…、まほ…」
と、歯磨きをしながら、彼が独り言を言う。
別の部屋で聞いていた。とてもショック!
でも、浮気をしている雰囲気は正直無さそうだ。
私の名前の前に呼ばれる「みなこ」って誰だよ…誰なんだよ…。

彼は、好きな人の名前を独り言で言う癖がある。
だから、
「まほ…」と呼ばれて、
「なあに?」
と聞くと、
「呼んでみただけ」
とはにかまれる。
あの笑顔を見るのが、本当に好き。
でも今は、
「なあに?」
なんて、言えないよ。
怖いよ。
出かける前の毎朝のキスをいつも通りして、お互い違う時間に出社するのが日課だけど、私も同じ時間に出てみようかな。
早起きはやだな…。
でも…、もうあの独り言、聞きたくない。
私は、早起きを決心したのだった。

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