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第10号:「奇跡の脳」から「意識のバランスのとり方」を学ぶ

タイトルに「奇跡」とついている本を読み「奇跡」を学ぶという記事を書いています。

今回も、前回に続いて、ジル・ボルト・テイラーさんという女性の脳外科医の方が書いた「奇跡の脳」という本を読み解きながら、「奇跡」とは何なのかを探っていきたいと思います。

新潮社

この「奇跡の脳」の内容を説明すると、脳の専門家であるテイラーさん自身に脳卒中が起こってしまったために、左脳の機能が極度に低下し、その結果、右脳が表現するワンネスの世界を垣間見たり、左脳が持つ理知的な働きをあらためて知るというものです。

また、脳外科医という専門家の視点で、自身の脳が回復していく様子を、客観的に書かれているため、論理的で読み応えのある本といっていいでしょう。


前回は、「右脳」を「主」にして、「左脳」を「従」にしていけば、右脳が描くワンネスの世界を左脳の力によって具現化できるようなっていくということを書きました。

そこで今回も、右脳と左脳の特徴を比較しながら、バランスよく「右脳」を「主」、「左脳」を「従」にしていける方法を紹介していきたいと思います。

右脳と左脳の大きな違いは、右脳の意識は常に「今」にあり、左脳の意識は「過去」と「未来」にあります。

まずは、このことから見ていきます。

右脳はとにかく、現在の瞬間の豊かさしか気にしません。それは人生と、自分にかかわるすべての人たち、そしてあらゆることへの感謝の気持ちでいっぱい。右脳は満ち足りて情け深く、慈しみ深い上、いつまでも楽天的。右脳の人格にとっては、良い・悪い、正しい・間違いといった判断はありません。

右脳の個性の最も基本的な特色は、深い内なる安らぎと愛のこもった共感です。内なる安らぎと共感の回路を動かせば動かすほど、より多くの平和と共感が世界に発信され、結果的により多くこの地球上に広がることでしょう。

チベットの僧侶とフランシスコ会の修道女が、SPECT装置の中で瞑想あるいは祈るために招かれました。彼らは、瞑想のクライマックスに達するか神と一体になったと感じたときに、ひもを引くように指示されました。こうした実験によって、脳の中の非常に特殊な領域で、神経学的な活動が変化することが明らかになりました。まずはじめに、左脳の言語中枢の活動の現象が見られ、脳のおしゃべりが沈黙します。次に、左脳の後部頭頂部回にある方向定位連合野の活動の減少が見られました。この部分は、その人の肉体の境界の判別に役立ってます。この領域が抑制されるか、感覚系からの信号の流入が減少すると、周りの空間に対して、自分がどこから始まりどこで終わっているかを見失ってしまうのです。

少し長めの引用になりましたが、「奇跡の脳」の著者のテイラーさんは、右脳についてこのように語っていて、人が「今」に意識が置くことができるようになると、深い安らぎや愛の意識が湧き上がって自他の境界がなくなっていくといっています。

では、左脳にはどんな能力を持ち合わせているのか。

左脳マインドは物事を順序だてて考えるので、機械的な作業に優れています。違いに注目して特徴を見分ける能力は、生まれつき組み立て屋さんといっていいでしょう。

左脳マインドは言語で考えて私に話しかけます。脳のおしゃべりを利用することにより、人生の荒波を乗り越えることができるし、わたしのアイデンティティーも顕してくれるのです。左脳の言語中枢の、「わたしである」ことを示す能力によって、私たちは永遠に切り離された、ひとつの独立した存在になります。全体から分離したひとつの固体になるわけです。

左脳は、物事を順序だてて考える力を持っているため、思考の対象は常に「過去」と「未来」にあります。さらに左脳が創り出すロジックから見ると「永遠」の概念を理解できないため、「私」という存在は「他」と切り離された存在であると認識するものであり、言語中枢を持っている左脳は、左脳が創り出したロジックを常に「私」に話しかけています。

そう考えると、私たちは右脳と左脳の認識に挟まれいるという「葛藤」を持っていて、その葛藤が「自我」になっているといってもいいかもしれません。

こういった葛藤から生まれる「自我」には苦しさが生れます。なぜかというと、言語中枢を持っている左脳のおしゃべりは葛藤で作られいているため心が休まらないからです。

しかし、冒頭にお伝えしたように「右脳」を「主」にして「左脳」を「従」にすると、こういった苦悩から解放されることになります。なぜかというと、右脳が「主」になると右脳の理想を左脳が具現化しようとするため、左脳のおしゃべりが前向きになっていくからです。

とはいえ、この「右脳」を「主」にして、「左脳」を「従」にするには、右脳の指令を引き出していかなければならず、この引き出し作業をせずに、左脳ばかりを使っていると、気が付くと左脳が作り出すリアリズムに延々と耳を傾けていなければならなくなります。

脳と身体の中の細胞の九九・九九九%は、わたしが幸福で健康で成功することを望んでいるはずです。でも、ほんの一握りの物語作家は、わたしが喜ぶことに無条件にはつながっておらず、内なる安らぎの感覚を台無しにする可能性を持つ思考パターンばかり試そうとするのです。

ここに出てくる物語作家とは左脳のおしゃべりのことです。左脳のおしゃべりは、油断していると脳と身体の細胞が望んでいる幸福で健康で成功することを邪魔してくるものなのです。

そこで、テイラーさんはこういった左脳のおしゃべりが止まなくなったりすると、意識を右脳に移すようにしています。

肉体や精神の環境がどうであれ、右脳の領域に踏み込んで、思考を現在の瞬間に引き戻し、平和と愛の心(右脳マインド)に戻れることを知っていれば、束縛から解放されます。
わたしはいつも、個人的判断を避けるという右脳マインドの目を通して、周囲の状況を観察しています。そして、内なる喜びを大事にして、感情的な重荷を負わせる回路からなるべく離れるようにしています。

では、「束縛から解放」や「感情的な重荷を負わせる回路からなるべく離れる」ために、具体的にテイラーさんが何をしているかというと、五感に焦点を向けることで、意識を今に戻すようにしています。

からだをリラックスさせて、顎を緩めて、眉間のしわをなくしましょうよ。この瞬間、あなたは生きている、成長している、人間だということを、受け入れましょう。祝福と感謝の気持ちで意識を充たしましょう。

あなたが食べ物を楽しんでいるとき、ストレスを招くような思考を心に抱くのは難しいですよね。

嗅覚を利用して、自分を現在の瞬間に戻すのは簡単。よい香りがするキャンドルを灯したり、バニラや薔薇、アーモンドを使って、ストレスの記憶を押さえて気持ちを高揚させてみましょう。

実は、目には二つの使い方があります。目の前の景色を見てみましょう。何が見えますか?右脳マインドは、全体像を取り入れます。景色全体を見ており、すべての物の関係を捉えます。右脳マインドは全体の景色の広がりを観察し、細かい点に注意しません。左脳マインドは、すぐ個々の対象物の輪郭に焦点を絞り、景色を作り上げている特定の物の間に線引きをします。

頭で分析したり良し悪しを判断したりせずに、好きな音楽を聴くことも、「いま、ここに」返るために非常に役立ちます。音によって、感情だけでなくからだも変化します。リズムに合わせて体を揺すったり、踊ったり演奏してみる。あなた自身を束縛から解いて、からだを流れにまかせましょう。

ただシャワーを浴びて、水がからだの上で跳ね返るのを感じるだけで、あなたはいきなり現在の瞬間に引き戻される。お風呂に入ったりプールで泳いだりして、水の圧力を感じることは、適度な軽い圧力と温度の刺激になります。こうした活動を利用して、「いま、ここ」の状態に戻ってみましょう。

こういったことの他にもテイラーさんは右脳を活性化する方法もいくつか紹介しています。

・リラックス(緊張している筋肉を意識して緩める。眠れないときは顎を緩める)
・ヨガ、太極拳、フェルデンクライス法、競技でないスポーツをする
・サウンディングボウル(クリスタルボウル)の音に合わせて声を出す
・エンジェルカードを引く
・マントラを唱える

このように、五感に意識を向けて、身体を動かしたり声を出したり、カードを引いたりすることで、ネガティブなことを言ってくる左脳のおしゃべりを止めて、意識を「いま、ここ」に合わせ右脳にアクセスするようにしていきます。

「右脳」は常に「今」にあり「be」の状態です。しかし、単に「be」の状態にいるだけでは、左脳のおしゃべりが続いてしまうので、身体を動かすという「do」で意識を変えていく必要があるといっていいでしょう。

そして、頻繁に右脳にアクセスしていけるようになると、普段の意識が右脳に基づく思考に変わっていくようになり、今度は右脳の思いに従って左脳が新しい物語を創り出すようになっていきます。

皮膚がどんなふうにものごとを確かめ、聞き、味わい、匂いを嗅ぎ、感じるか、そしてからだの内側では生理的にどんなふうに感じているのか、細かく意識するようになると、脳はもっと楽に、あらゆる瞬間を再構築できます。好ましくない思考パターンをビビットなイメージに置き換えることで、意識を深い心の平和に戻すことができます。ある体験を再現するために感覚を利用するのは重要なことですが、経験を再構築するために一番いいのは、背後にある生理的な感触を思い出すこと。

テイラーさんは意図して五感を使うことができるようになると意識の再構築ができるようになるといっています。

そこで普段から、身体を意識して過ごしていけるようになると、頻繁にフレッシュな気分を取り入れながら意識を再構築していけるようになって、右脳が持っている楽天的な性格を取り入れることができるようになり、気楽に生きていけるようになるものです。

左脳的な現代社会は常に「過去」と「未来」で頭の中が一杯です。しかし、「過去」と「未来」でパンクしそうになっても、五感を感じるようにして、意識を「今」に戻すことができると、パンクしそうな脳に空白を生み出し、その空白に安らかな右脳マインドを注入して、新たな意識を再構築できるようになります。

こういったことから、普段から五感を通じて右脳を働かせていると、シリアスさを徐々に消していくことができ、やがて楽観的になっていくことでしょう。

意識のバランスは、頻繁に使っている左脳を休めて、右脳を活性化させることで取ることができます。そのためにも、ちょっとした時間に「今」を感じる習慣を作って行けるようになるといいかもしれません。


この「奇跡の脳」から奇跡を学ぶというシリーズは次回が最終回になる予定です。


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