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第9号:「奇跡の脳」から「人生の舵の切り方」を学ぶ

タイトルに「奇跡」とついている本を読み「奇跡」を学ぶという記事を書いています。

今回も、前回に続いて、ジル・ボルト・テイラーさんという女性の脳外科医の方が書いた「奇跡の脳」という本を読み解きながら、「奇跡」とは何なのかを探っていきたいと思います。

新潮社

この「奇跡の脳」の内容を説明すると、脳の専門家であるテイラーさん自身に脳卒中が起こってしまったために、左脳の機能が極度に低下し、その結果、右脳が表現するワンネスの世界を垣間見たり、左脳が持つ理知的な働きをあらためて知るというものです。

また、脳外科医という専門家の視点で、自身の脳が回復していく様子を、客観的に書かれているため、論理的で読み応えのある本といっていいでしょう。


前回は、右脳と左脳の機能の違いを比較しながら、右脳を「主」にして左脳を「従」にして生きることがこれからの新しい生き方なのではないかということを書きました。

今回も、前回に続いて右脳を「主」、左脳が「従」がいい理由を書いていこうと思います。

というのも、左脳が持つ機能を知ると、右脳を「主」で左脳が「従」がいい理由が分かってくるからです。

そこでまず、「奇跡の脳」から4つほど左脳の機能について書かれている箇所を引用していきます。

左脳マインドは完全主義者で、まるで会社や家の管理人のよう。それはこう言い続けています、「すべてのものは決まった場所があり、全てのものはその場所に属す」と。

左脳マインドは物事を順序だてて考えるので、機械的な操作に優れています。違いに注目して特徴を見分ける能力は、生まれつき組み立て屋さんといっていいでしょう。

左脳の最も顕著な特徴は物語を作り上げる能力にあります。左脳マインドの言語中枢の物語作りの部分は、最小限の情報量に基づいて、外の世界を理解するように設定されています。それはどんなに小さな点も利用して、それらをひとつの物語に織り上げように機能するのです。

左脳は何かを作るとき、実際のデータに空白があると、その空白を埋めてしまう能力があるということ、そのうえ、ひとつの話の筋をつくる過程で、シナリオの代替案を用意する天才的な能力まで持っています。

この4つの引用から左脳の特徴を並べてみると、次のようになります。

①完璧主義者
②生まれつきの組み立て屋
③物語を作り上げる能力を持つ
④空白を埋める能力を持つ

私がなぜこの4つのことに注目したかというと、左脳は物語を創る能力があるという点であり、実は私たちは左脳が作り出す物語によって、心が創られているという側面があるからです。

テイラーさんは左脳のことを本の中で物語作家と呼んでいますが、この左脳という物語作家は、私たち一人ひとりが現状で持っている情報をもとに絶えず物語作りをしているというのです。

このことが何を示すかというと、私たちが普段、何気なく目にしている情報が、左脳が創り出す物語の材料になっているということであり、左脳が創り出した物語が、私たちの行動原理になっているということです。

たとえば、日々、不安を感じるような情報ばかりを目にしていると、左脳という物語作家は不安をベースとした物語を創り出してしまうものであり、何も疑問を持たずに不安を感じさせるような情報を自分に与え続けてしまうと、左脳はやがて壮大なネガティブな物語を作り上げてしまうものなのです。

また、私たちの脳は、ネガティブな気分で生きているとネガティブなことばかりを見つけてしまうものであり、そういったネガティブな物事を見つけると、左脳はそれを材料にして物語に肉付けをしてしまうものなのです。

すると、今度は左脳が創り出した物語が、心に影響を与えていくようになっていき、やがて、左脳が創り出した物語を基準に人は行動するようになってしまったりするのです。

その一方で、普段からポジティブな情報を得て過ごしていると、左脳はポジティブな物語を創るようになって行きます。また、どんなときもポジティブな意識で生きていると、人の脳はポジティブな物事を見つけようとするため、その情報をもとに左脳は、さらにポジティブな物語を創っていくいようになり、今度は、その物語をもとに人は行動するようになっていきます。

このように、私たちは普段、得ている情報によって自分なりの物語を創っていて、その物語に左右されて生きているといえるのです。

したがって、人は自分にどんな情報を与えるかを意図して選んでいかないと、無意識のうちに左脳という物語作家によって、自分が進むべき道の方向を決められてしまうのです。

こういったことがあるため、この記事の冒頭に書いたように、右脳を「主」で左脳が「従」にした方がいいということになるのです。

なぜかというと、右脳は「生きとし生けるものがひとつに調和する」という「ワンネス意識」を持っているからであり、この「ワンネス意識」を材料に左脳が物語を創り出し、実際にそれを具現化していくことが私たちが本来すべきことだからです。

左脳は物語を創る能力は優れていますが、「どういう物語を創るべきか」という意思は持ちません。だからこそ、私たちが普段接している情報をもとに左脳はオートマティックに物語を作り上げていたりするのです。

その一方、右脳には物語を創り出す能力はないものの、人としての方向性を示す能力を持っています。その方向性とは何かというと先ほどのワンネスの意識であり、私たちが「共存共栄するための意識」なのです。

左脳の仕事は、右脳が持っている全エネルギーを受け取り、右脳が持っている現在の全情報を受け取り、右脳が感じている素晴らしい可能性のすべてを受け取る責任を担い、それを実行可能にすること。

と、テイラーさんがいうように、左脳は右脳のエネルギーや情報、可能性を受け取ってそれを実行可能にすることが役割であり、それが私たちの本来あるべき姿といっていいでしょう。

とはいえ、こういったことを知らないでいる私たちは、特に気にすることもなく、日々、無意識のうちに情報を仕入れ蓄えていってしまっています。

また、私たちは左脳優位の現代社会で、左脳を働かせながら仕事をし、左脳的なロジックのある情報を仕入れていて、左脳を休ませる暇もないため、右脳が発している声に耳を傾ける暇さえないといってもいいかもしれません。

つまり、私たちの今の生活様式では、左脳的思考において左脳的物語を、左脳によって日々作り上げているということになるのです。

こういった現在の左脳優位型の社会においては、左脳の持つ真面目さがさらに左脳性を強めていたりします。

左脳が真実だと信じ込んでいる物語には、冗長な傾向もみられました。まるで反響するかのように、心にくりかえしこだまする。思考パターンのループができてしまうのです。ふつう、こういう思考のループは頭の中に「はびこって」しまいます。そしてわたしたちは知らず知らずのうちに、最悪の事態ばかり考えるようになるのです。

私たちが普段、目にする情報は必ずしもポジティブなものばかりではありません。特に近年は、ネガティブな情報が多かったため、こういった情報に触れれば触れるほど、その情報をもとに左脳は物語を創って、私たち自身の心に影響を与え、それをループさせているといっていいでしょう。

こういったことがあるため、普段、目にしている情報は自分の意思で選ぶべきであり、私たちが生まれ持っている情報を持つ右脳にアクセスするためにも、自分にとって必要な情報とそうでない情報の整理をしたり、日々の生活の中で、情報を遮断する時間を作ることが重要だったりします。

たとえば、短時間でもいいので情報を遮断して瞑想をしたりすると、右脳にアクセスできるようになったりします。あるいは、何もせずにただぼんやりとリラックスするだけでも、左脳の働きを弱めて右脳の働きを強めることもできるでしょう。他にも、充分な睡眠を取ることで活発に動いている左脳を休めたりすると、右脳にアクセスしやすくなるものであり、寝起きのスッキリした気分の中で得られる直観は、右脳からの声だったりします。

こういった感じで、普段から自分にとって必要な情報を選択しながら右脳の働きを強めていくと、私たちが本来あるべき人としておおらかな生き方ができるようになっていくものだったりします。

とはいえ、意図して右脳にアクセスしようとしても、一度、巡り出した左脳の思考のループを止めることが難しい場合もあったりします。そこでテイラーさんは、左脳の完璧主義者を黙らせる方法を次のように書いていたりします。

そうは言っても、躾に反応する物語作家の滑稽なふるまいには、思わず吹き出しそうになります。マイナス思考の細胞たちは、幼い子供のようにわたしの言うことを聞かず、わたしがどれくらい本気なのか試そうとするですから、いったん、静かにするように言われると、細胞たちは一瞬だけ沈黙し、またすぐ禁じられた回路を作動させます。他のことを考える欲求が弱かったり、新しい思考回路を意識的に始めないでいると、招かざるループはふたたび勢いを盛り返し、心を独占し始めます。そんな細胞の活動に対抗するため、意識を振り向けるべき三つのリストが必要に応じて用意してあります。(Ⅰ)魅力的で、もっと深く考えを巡らせたいことを思い出す。(Ⅱ)ものすごく楽しいことを考える。(Ⅲ)何かやりたいことを考える。自分の心を変えたくてたまらないようなとき、わたしはこの三つの武器を利用するのです。

テイラーさんは、左脳のおしゃべりがやまないときは、(Ⅰ)魅力的で、もっと深く考えを巡らせたいことを思い出す。(Ⅱ)ものすごく楽しいことを考える。(Ⅲ)何かやりたいことを考える、という三つの武器を使うと述べています。

このことは、左脳が常に情報を欲しがるという性質を逆手に取っているといっていいでしょう。つまり、左脳に与える情報を意図的に自分の望む内容にすることで、その方向で新しい物語を左脳に書かせようとしているのです。

左脳は、「私」が示す世界観を実現するための有能な作家であり実務者でもあるため、「私」が的確な指示を出すことができれば、左脳はその指示に従って素晴らしい物語を創り出し、その物語を具現化できるように情報を集めてくれるものです。

つまり、「私」が常にすべきことは、左脳に対して方向性を与え自分にとって好ましい情報を与え続けることなのです。

そのためにも、「人生の舵を取るのは自分」という意識を持って過ごしていくことが大切であり、自分に与える情報を選んでいかなければならないのです。

「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」というタイトルで絵を描いた世界的に有名な画家であるゴーギャンがいますが、彼は、画家になる前は株式仲買人をしていたそうです。

彼の生き方は、株式仲買人という左脳的人生から画家という右脳的人生へまさに180度転換した人といっていいでしょう。

そして私たちも、彼のように二つの可能性を持って生きているといってもいいでしょう。もちろん、どちらがよくてどちらが悪いということではありません。ただ、右脳的な生き方も左脳的な生き方も、自分で自分に与える情報によって選ぶことができるということです。

私はゴーギャンではないので、彼がどのようにして左脳的な人生から右脳的な人生へと転換できたかはわかりません。

しかし、彼はおそらく、ある時から自分に与える情報の内容を変えたことで株式仲買人という左脳的な生き方から、画家という右脳的な人生への転換を図ったのだと思います。

私たちも自分にどんな情報を与えるべきかということを普段から考えて生きていると、ゴーギャンのように生き方そのものを転換できるようになるのではないかと思います。

今回の記事は、「奇跡の脳」の14、15、16章をもとに書いていますが、テイラーさんは15章のタイトルを「自分で手綱を握る」にしています。

今回、私はこの記事を書くことで、自分にどんな情報を与えた方がいいのかということを、あらためて知ることができました。

「自分の人生の手綱を握る」ためにも、自分にとって有益な情報を自分に与え続けることが大切なのだと思います。そうすれば、左脳が壮大な物語を創って、その物語を具現化してくれることでしょう。

もしかすると「奇跡」は「私の手綱さばき」で起こすことができるのかもしれません。




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