ユウナという名の猫　記憶と記録-Link56　3900と3839

熟睡しすぎないように電気をつけたまま、
掛け布団はかぶらずにガウンを羽織ったまま布団に寝転がっての仮眠。

日付は変わって2016年の6月16日。深夜1時は過ぎていたと思う。

何となく目覚めたのが、おそらく朝5時半を過ぎた頃。

仰向けで寝る私の右腕に、
ユウナが背中をくっ付けて寝ていることに気づいた。

「結局お布団で寝ることにしたのね」

とユウナの顔を見ると、目に力がなく目線がぼやけており、
撫でようと触ると体が少し冷えていた。

慌ててカイロを取り出し、
タオルを掛けてユウナの体をあっためるように撫でた。

いつもと何かが違う　ー

撫でながら
「ゆうちゃん、大丈夫だから。ままはここにいるから。」
と声をかけた。

声にならない声で「にゃ」と言ったような気がした。

ユウナの様子がいつもと違っていた。

そして

「ユウナが起こしてくれた。教えてくれた。」

と理解した。

最期の時　ー

直感的に、残された時間はそんなに無いと悟った。

ただひたすら撫でながらユウナの名前を呼んでいた。

最期の時を教えてくれた事。
ひたすら頑張ってくれた事。
一緒にいれて嬉しかった事。

治してあげられなくて、しんどい思いをさせてごめんね、とも。

言いたいことはたくさんあったけど、
全部ひっくるめての「ありがとう」としか言葉にならなかった。

どのぐらいこの時間を過ごしたのか分からない。

時計を見る余裕はどこにもなく、
あったとしても、
最期の大事な時間にユウナから目を離すことはできなかった。

そんな状況の中、「その時」でも一番最後まで耳は聞こえている。
と、どこかで聞いた言葉が頭をよぎった。

また帰っておいで

もしかしたら明確な音にはなっていなかったかもしれないけれど
ギリギリに紡ぎ出せた言葉。

ユウナは走るかのように前足を少しパタパタとさせ、
一つ大きく息をしたのち、旅に出た。

2016年6月16日　午前6時過ぎ。

ユウナが生まれてから3900日目。
ユウナと一緒に暮らし始めてから3839日目のことだった。

ー続ー