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#128 「注文の多い料理店」100年【宮沢賢治とシャーマンと山 その1】

「注文の多い料理店」は1924(大正13)年の12月に発行された。
 
今年100年目を迎えるこの物語は、賢治作品の中でも、或いは日本で最も有名な物語の1つではないだろうか。子どもたちにもわかるように書かれた作品で、文学のジャンルとしては「童話」のジャンルに含まれるのであろうが、寓話のようでもあり、神話のようにも見える。
 
主人公は、東京から来て狩りをする、何やらイケ好かない若い紳士達なのか、「物凄い山奥」に身を潜めている謎の生き物なのかわからない。舞台が「山猫軒と名の付いた料理店(?)」で、「扉の向う」からは「にゃあお、くゎあ、ごろごろ。」という声もするので、潜んでいるのは山猫かもしれない。
 
賢治には、「注文の多い料理店」や「猫の事務所」、「どんぐりと山猫」など、猫の名の付く作品があるため、勝手に「猫好き」かと思っていた。何より、「銀河鉄道の夜」のアニメ映画の登場人物達の多くが猫の姿をしていたことが、賢治と猫のイメージの結びつきを強くしているように思える。
 
しかし、賢治は「猫」という題の短編の中で、「私は猫は大嫌ひ」と書いている。
 
賢治が大嫌いな猫を、自らの作品に、しかも代表的な作品に登場させるのは何故か?
 
私にとって、それが疑問だった。

【写真は、「注文の多い料理店」表紙のタイトル】

(続く)

2024(令和6)年2月19日(月)

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