#120 宮沢賢治と大谷翔平(9)

（続き）

宮沢賢治に影響を与え、大谷翔平の愛読書とも言われる中村天風に影響を与えた、エマーソンの思想とは、絶対的ともいえる積極性やポジティブ思考が特徴で、このことが、エマーソンを「自己啓発」の元祖的な存在にしています。

この思想は、自分の潜在的な能力を極限まで信じ、超人的な努力を行うことによって、自ら成功を勝ち取る、という成功哲学的な発想へ繋がる考え方でもあります。

エマーソンは、現代日本では無名ですが、現代のアメリカ、そして日本にも影響を与え続けています。

それは、自己啓発本といわれるジャンルの本や、成功哲学と言われる考え方に、エマーソンの影響が色濃く残っているためで、エマーソンが残した言葉は、そういった本やセミナーなどでは、いまだにしばしば引用されていると言われます。

興味深い現象として、エマーソンの言葉が誤って引用されて書籍などになった場合、間違った言葉がそのまま更に引用されて、次の新しい自己啓発本が作られ、間違ったエマーソンの名言が拡散していくという現象もあるほどです。

現代では、資本主義社会の成功思想のような位置づけとなっているエマーソンの思想ですが、もともとはエマーソンがキリスト教の牧師を務めていたこととも関係し、宗教的な運動として思想が組立てられました。

キリスト教は、宗派によって違いはあるものの、絶対的な唯一の存在である神の信仰により、救いを得ようとします。エマーソンは、そのようなキリスト教の在り方への疑問などから、牧師を辞め、辞めた後、新たな思想を生み出し、その思想の普及に努めます。

（続く）

2024（令和6）年2月12日（月）