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原敬の命日に想う(2)(終)【宮沢賢治の風景と、新渡戸稲造・原敬・佐藤昌介達の時代(14)】[#44]


 10代前半の若き原敬は、南部藩のリーダー楢山佐渡の切腹など、南部藩が崩壊していく様子に間近で目にしながら、原の実家も貧しさに苦しみました。その時、原の父親はすでに亡くなっており、原自身、南部藩没落の影響で苦労しながら学ぶこととなり、明治維新の出来事が、その後の原敬に大きな影響を与えたことは間違いないと思われます。
 総理大臣となって長州のラスボス的な山県有朋からも信頼を勝ち取り、南部藩を敗北に追い込んだ明治維新政府が目指した五箇条の御誓文の精神
・ 議会により幅広い意見に基づいた政治
・ 上下の身分に関わらず心1つに国を治める
・ 身分の差なく人々が意思を達成できる社会
・ 古い慣習にとらわれない国際社会との協調
・ 世界から知識を学び天皇が国を収める基礎を築く
を体現したかのような原の生涯は、一生をかけ、南部藩の維新敗北からの壮大な復讐劇を完成させたようにも見えます。実際には、それほど単純な立身出世のストーリーではないと思われますが、当時の岩手の人々にとっては、原敬の総理大臣就任は特別な想いを持って迎えられ、原の存在は、多くの岩手の人々にとっての誇りであったのではないでしょうか。

(了)

2022(令和4)年11月5日(土)

【参考資料】
「原敬-「平民宰相」の虚像と実像」 清水 唯一朗 中央公論新社 2021年
「国萌ゆる 小説 原敬」平谷 美樹 実業之日本社 2021年
「本懐・宰相原敬―原敬日記をひもとく」木村 幸治 熊谷印刷出版部 2008年
「原敬と新渡戸稲造: 戊辰戦争敗北をバネにした男たち」 佐藤 竜一 現代書館 2016年

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