見出し画像

#94 法華経・日蓮・日蓮宗・日蓮主義の思想と賢治 その2【宮沢賢治とエミリィ・ディキンスン その32】

(続き)

○ 法華経・日蓮・日蓮宗・日蓮主義の思想と賢治 その2

法華経の思想が難解であることや、宮沢賢治が生きた時代に、高山樗牛といった著名人の影響で日蓮主義が流行したこと、エマーソン自身も法華経理解の助けとなるような思想を持っていること、明治・大正期にかけてエマーソンが一般的にも読まれていたこと、等を考えると、当時の教養人にとっては、エマーソンと法華経の思想が近い存在として理解されていた可能性もあります。明治を代表する思想家である内村鑑三が、エマーソンと日蓮の思想の両方に親しみを持っていたように、賢治もまた、エマーソンと日蓮の思想の両方に触れ、その2つを同時に、よく似た思想として消化したのかもしれません。

また、エマーソンが、アメリカ人にとっての成功哲学の1つであるのと同様に、日蓮主義も、大正期の成功した商家などに支持されていたようです。

日蓮主義は、石原莞爾のような軍人達によっても支持されたため、賢治研究の上では微妙な位置にあるように思われます。しかし、石原自身も軍部から徐々に排除されていったことや、日蓮主義を立ち上げた田中智学達のグループさえ、軍から圧力を受けるなど、必ずしも戦争を推進した思想とイコールとは言い切れず、妹尾義郎のような共産主義者も、日蓮主義者の1人でした。

当時流行していた日蓮主義は、賢治の思想の背景を知る上では避けては通れない思想であるように思われます。

(続く)

2023(令和5)年11月4日(土)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?