ママ・はは

辻村深月氏の短編集『嚙みあわない会話と、ある過去について』に収録されている作品。友達同士である小学校教師の主人公とスミちゃんの会話から抜粋します。

「ねえ、子育てやしつけの正解って何かな?」

辻村深月『嚙み合わない会話と、ある過去について』

保護者会に来た‘‘変わった‘‘母親の話から、2人は子育ての話をしています。

「成長した子どもが、大人になってから親の子育てを肯定できるかどうか」
スミちゃんが言って、私を見た。
「人生は長いからさ。大人になってから子どもに自分がやってきたことを肯定してもらえないと、いざ対等な状態になった子どもに見捨てられることになるよ。感謝されないし、仲良くしてもらえない。保護者と被保護者はいずれ、介護だなんだで逆転するんだしさ」

辻村深月『嚙み合わない会話と、ある過去について』

親は子どもを評価するが、逆もまた然り

親が子どもを支配できるのはせいぜい20年程度で、1人の大人として自立した瞬間に「どこが良かった」「どこが嫌だった」そんな通知表を渡されてしまう。良ければ仲良くしてもらえるし、悪ければ見捨てられてしまう。
親がいくら価値観を押し付けて抑圧しても、子どもには子どもの世界があって、そこで人格が形成されていき、親と同じにはならない。
「あなたの過去は大丈夫?」なんて帯がついて売られていましたが、そのフレーズ通り本短編以外にも自分の行いの解雇を促すような短編が続きます。


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