まさよし

文系です… 文学、 学術(主に歴史・地域研究・宗教)、 音楽(主にブラックメタル・ダー…

まさよし

文系です… 文学、 学術(主に歴史・地域研究・宗教)、 音楽(主にブラックメタル・ダークアンビエント)、 美術を好みます。 暗いもの、ネガティブなもの…、好きです。 江國香織のようなテーマを、綾辻行人のようなテイストで、初期有村竜太朗のような病的鬱に書けたらと思います…

最近の記事

読み返したら結構良くできてるじゃんね、自作の短編小説

超短編作品。 『キメラ』 「え?これメイヘムのキメラだよ?」 私のクレームに夫がそう答えたとき、私は一瞬、その意味がわからなかった。 何秒か黙って、なんとなく理解できてきた。 つまり夫は、こんな素晴らしい作品が耳障りなわけがない、と心から信じているのだ。 夫は、私が「そのうるさい音楽、止めてくれる?」と言った意味が本当に理解できないのだ。 その後も夫は、メンバーの変遷やら音作りやら、これは黄金期じゃないけど…などとぶつぶつと独り言のように呟いてその喧しい音楽を聴き続けた。

    • 自分

      自分のことで好きな部分は、音楽を聴いて泣けることくらいしかない。

      • 訣別。

        確かめ合えた日々に、さようならを。 もう一度、貴女が笑ってるとこ、見たかったなぁ…。 いつかどこかで、また、会えることがあるのなら、どうか幸せで。 言えなかったたくさんの言葉を伝えたかった。

        • 現像、不愉快な。

          どうしてこうなってしまうのか。 なぜ意地を張ってしまうのか。 どうして自暴自棄なことを言ってしまうのか。 嫉妬だろうか。 あなたも自分に価値を見出だせないのに? そんなあなたにも好きな人がいて、 僕はただの邪魔な存在。 存在理由、存在意義、存在価値。 そんなもの、とっくに失った。 葬送。 何の意味もない、あたしが悪い、僕が悪い、の議論。 友達にすらなれない。 友達にすら戻れない。 殺して。 どうせあなたは、自分の所為だと泣いているのでしょう。 それをすら笑えない僕。 消してし

        読み返したら結構良くできてるじゃんね、自作の短編小説

          完結編エヴァ映画の感想

          エヴァ映画観てきた。 完結することのないと思っていたエヴァが完全完結を迎えたことに、まず感慨を覚えた。 テレビ版、漫画版、旧劇場版、すべてを咀嚼した上でまったく新しい形で消化して、さらにカタルシスを感じさせて終わらせたのは、素直にすごいな、と。 大円団と言っていいと思う。 ただ、新海さんの『君の名は。』を観ても感じたことだけど、庵野さんも随分明るい作品を作るようになったなと。 正直、ストーリー的には、謎解き的に見たら相変わらず意味不明。 しかしながら、画面の迫力、物語のスピー

          完結編エヴァ映画の感想

          その写真は、もう無い。

          君と離れて何度目の冬だろう。 今年は暖冬だとか、今年は厳冬だとか、 そんなどうでもいいことを何度か繰り返してきて、 そして何度目かの、また冬。 恋は続いている限り永遠で、 君と僕には、何かの繋がりが、 決して切れない何かがあるのだと、 ありがちにあの頃信じていた。 淡い思い出? そんなふうに色褪せることさえなく、 時間だけは過ぎていく。 僕が何歳か歳を重ねたように、 あれから会ってさえいない君も、 やはり歳を重ねているのだろう。 繊細な貴女。 春の木漏れ日のように、 柔和に微

          その写真は、もう無い。

          キメラ6(完結)

          夫が自殺してしてしまってからしばらくしても、結局、なぜこの時夫が自殺したのか、私にはわかっていなかったんだと思う。 私の中の夫は永遠に止まったままになってしまったが、私はこれからも緩やかに年齢を重ねていく。 突然の事故死とか病死にならない限り、私は一人緩慢に生きていくだろう。 時折、夫が生前よく聴いていたCDのコレクションを少しだけ聴いてみる。 メイヘムの「キメラ」も聴いてみるけど、私にはやっぱり暗くて喧しい音楽で、よくわからない。 夫がそのどこに惹かれていたのかも、結局わか

          キメラ6(完結)

          キメラ5

          探り合うことさえほとんどなく、食事を片付けた夫は、山のような本と音楽に溢れた自室に戻っていった。 夫は時折、少しおどけて、でも真面目に言う。 「僕はたぶん、自殺で死ぬから」。 出会った頃の夫は、歴史研究者の見習いみたいなことをしていて、冗談なのか本気なのか、「僕は砂漠で一人で死にたい」と言っていた。 砂漠で一人で死ぬことが、いつから自殺になってしまったのだろう。 どっちも同じようなものでは?と人は思うかもしれないけど、私にはわかる。 上手く説明できないけど、わかるのだ。 前者

          キメラ4

          夕食を作っていると、夫がキッチンにやってきた。 不思議な喧しい音楽は、とりあえず聴き終えたようだ。 何を話そう。 テーブルに並んだ料理を挟んで向かい合った私達は、互いに話題を探り合ってみる。 二人で居るだけで自然と話が弾み、楽しい時間を過ごせた私達は、もうこのテーブルには存在しない。 まるで、傷口を避けて当たり障りのない会話を探す、オトナゴッコをしているようだ。 夫婦とは何だろう。 少なくとも、そう呼べた日々はかつてあったような気がする。 今は、崩れかけた砂の城…。 避難もで

          キメラ3

          夫には診断名がついている。 全般性不安障害とかいうやつだ。 暗くて血生臭い芸術を愛しているからそうなってしまったのか、それとも元々そういう性格だから暗黒や絶望に惹かれるのだろうか。 夫は一見、社交的にさえ見える。 当時、私を積極的に食事や映画に誘ってきたのは夫の方だった。 夫はとても紳士的だったし、いつも私を気遣ってくれた。 人当たりも良い夫は、その実内面を病んでいたのだ。 鬱は誰にでも起こりうる、ということを、私は夫を通して実感として知った。 それでも夫は薬を飲みながらでも

          キメラ2

          出逢った頃の夫は、寛容と言っていいようなおおらかさの反面、自分の好む音楽や小説、美術作品に、並々ならぬ情熱と確信を持っているようだった。 かといって、自分が好まない作品を批判するということも特になかった。 「自分自身で演奏したり描いたりする才能がないからね」と、夫は笑いながら、でも少し寂しそうに本棚を見つめていた。 「何かを信じるということは、他の何かを否定することだから」。その言葉は、特にこだわりを持たない私にも、少なからず納得できるものが感じられた。 夫は私と結婚した。

          キメラ1

          「え?これメイヘムのキメラだよ?」 私のクレームに夫がそう答えたとき、私は一瞬、その意味がわからなかった。 何秒か黙って、なんとなく理解できてきた。 つまり夫は、こんな素晴らしい作品が耳障りなわけがない、と心から信じているのだ。 夫は、私が「そのうるさい音楽、止めてくれる?」と言った意味が本当に理解できないのだ。 その後も夫は、メンバーの変遷やら音作りやら、これは黄金期じゃないけど…などとぶつぶつと独り言のように呟いてその喧しい音楽を聴き続けた。 私の存在はもう目に入っていな