キメラ3

夫には診断名がついている。
全般性不安障害とかいうやつだ。
暗くて血生臭い芸術を愛しているからそうなってしまったのか、それとも元々そういう性格だから暗黒や絶望に惹かれるのだろうか。
夫は一見、社交的にさえ見える。
当時、私を積極的に食事や映画に誘ってきたのは夫の方だった。
夫はとても紳士的だったし、いつも私を気遣ってくれた。
人当たりも良い夫は、その実内面を病んでいたのだ。
鬱は誰にでも起こりうる、ということを、私は夫を通して実感として知った。
それでも夫は薬を飲みながらでも仕事を続けているし、私もそれを夫の一部として受け入れた。
それなのに、なぜ私達夫婦はこんなにすれ違う関係になってしまったのだろう。
私達は恋して夫婦になった。
今はどうなんだろう。
私が夫をわからなくなっているように、きっと夫も私をわからなくなりつつあるのだろう。
夫にとって私は奇妙な「キメラ」になっているのかもしれない。