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早起きゼミ(蝉)

朝、五時前に目が覚めた。

いつもなら、時計を見て落胆し、二度寝をしているところだが、今日は少し元気があったので、そのまま起きてみた。

いまさら夏の早朝の明るさには驚かなかったが、毛布の中でごろごろとしていると、窓の外から音が聞こえた。

シウシウシウ
シウシウシウシウ

蝉だった。

もう?と思うと同時に、それまでものすごく静かだったことに気づく。五時半だった。

そういえば、蝉って日中しか鳴かないな。

調べると、蝉の種類によって、鳴く時間帯は異なるらしかった。特定の時間帯に鳴いている者もいれば、日中いつでも構わず鳴いている者もいるようだった。

時間帯だけでなく、時期も少しずつ違っているとのことで、個人的に最も意外だったのは、ヒグラシであった。

ヒグラシというと、「夏の終わり」「夕方」というイメージだったが、意外にも、比較的早い時期に鳴いているようだった。時間帯も、朝方と夕方。自分の中で持っていたヒグラシのイメージは、単に「暮れ」と結びついていたのかもしれない。

他にも、どの鳴き声がどの蝉だとか、何年も土の中にいるのだとか、セミについて、ちょっとした知識を獲得した。

そうこうしていると、初めはおそらく一匹から発せられていた鳴き声が、次第に増えていった。

朝のしんとした空気を破ったのがセミだったから、小学生の頃の夏休みを思い出した。最近はもっぱら、鳥の声かバイクの音だったから。

やたらと早起きをして、宿題のドリルをやって、「ひま〜」と言いながらまた何かをする。ゲームをしたり本を読んだり。明確には思い出せないような、細々とした遊びや、遊びとも言えない暇つぶしもしていた。

昼食前後に友達から誘いの電話があればラッキー、或いは母のメール経由で何かの誘いがあればラッキー、というような夏休み。

ジブリの映画を見に行ったり、昆虫館や水族館、美術館へ行ったりもした。映画はまだしも、他のところは当時、夏休みでないとあまり行くこともなかった。今思えば、暇を持て余す子どもをあれこれ考えて連れ出してくれていたのだな、と思う。

お盆休みの墓参りや、旅行などの家族行事も良かったが、今となっては、ダラダラと過ごす平日も、夏休みの思い出である。

いま小学生に戻ったら、いつもは後回しにしていた自由研究に早く取り組んで、セミについてのレポートでも書こうと思う。

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