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022 糖分のベタつきは未練に似ている

冬のアイスが格別に好きだけど、食べるのは下手。のろのろと食べている内にいつも溶けてきて指先がベタベタとする。舐める指の先はアイスよりもくどく感じて鬱陶しい。だからコーンのアイスは苦手。あなたはコーンのあのサクサクとしたところが美味しいのにと言ったけれど、ぐしゃぐしゃに湿ったコーンしか食べたことがないからよく分からない。コーンとアイスを一緒に食べるから美味しいのであって、コーンとアイスが一緒になってしまうと途端に別物なのだろうね。愛するあなたも愛される私も所詮他人だということをあなたはよく分かっていたんだね。私はいつも一つに成りたがったね。ピウと鳴く冬の風、エアコンの乾いた空気、温かい部屋、もう涙は出ないけど、眉間に皺が寄る思い出、ああ、また指先がベタベタとしてる。手首まで垂れるそれは胸焼けするほど甘かった。あなたのようだ。もう手には入らないと理解した風で、それでもなお夢に見る。糖分のベタつきは未練に似ている。快くはない。


022 糖分のベタつきは未練に似ている

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