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クビかぁ,クビは結構ショックだったけど #2:巡り巡って

前回まではこちらでございます

と思っていたらバックヤードにこれまで会った従業員達の中では見たことの無いスーツ着用サラリーマンが入って来て言う。「お前、そのジュースどうした?」いや、まずお前が誰だよ名乗れよ。名乗りを上げないなんて武士としてお前は失格「どうしたんだよ、言ってみろ」「買いました。」

鬼の形相なので俺はすっかりのまれてしまっている。「ほんとに買ったのか。レシートあんのか。」「買いました、レシートは捨てました。」「じゃあレジの履歴見るけど、そのジュースの売り上げ無かったらどうする」「えー…」

この時点で謝っておけよ、と思うが何とかなると思っていた自分がマジでアホだったなと思う。レジをピピっとしてズガガガーと長い長いレシートが印刷、即刻不正が発覚して「俺はここ一帯のSV(スーパーバイザー?的な?)だ。お前わかってんだろうな。今すぐ帰れバカ野郎。このクズが。」「え、帰るんですか」「帰れよ。明日から来なくていいから」

カッチコチになっている田島君に悪いなあと思い、とりあえず帰る。帰るが、なんだか全身に力が入らないし思考が散漫だ。

まあ、今思えばSVに見つかるなんてアウトもアウト。スリーアウトチェンジチェンジチェンジである。

とりあえずは家に帰れたものの興奮状態で寝れないのでウィスキーを煽る。氷はないので常温ストレートのカティサークだ。

いつの間にか寝ていたが昼間に電話で目を覚ます、「おう、俺やけど」オーナーだ。こいつは関西出身の言動や見た目がヤクザ気味な赤鬼っぽいオヤジである。
「お疲れさまです、あの」
「お前、クビだからな。クビ。なめとんのか」
「え、いやすいませんあの」
「お前の人生滅茶苦茶にしたるぞ!覚悟しとけボケが!」
罵詈雑言を盛大に出力し電話は切れる。

えー。やっぱクビか。

当時このコンビニは給料手渡しだった。
給料の計算根拠も怪しかったし、もらう時にはオーナーに媚びへつらわなければならないのが本当に嫌だった。
しかし。
この2週間ほどの給料、どうなっちゃうの。
さっきの電話でその辺一切触れて無いんですけど、オーナー。
給料日にシレっともらいにいくか?
いや、殺されかねないな。
マジ困った、給料もらえないってなると詰む。

どうにか少しでも払ってもらいたいと思い、田島くんにメールをして見る。当時はPHSを使っていたなそういえば。
「シリウスです、色々すみません。給料どうなるんでしょうか、金ヤバて」
「ゼロっていうのはあんまりだから、なんとか払ってくれるようオーナーに言って見るよ。」
「まじすか!ありがとうございます。」

払われないとなると労働基準監督署か、なんかどっかに訴えるとかできんのかな?とモヤモヤ思うが当時は調べるにも限界があり電話もどこにかけていいのやらという感じだったので、次のバイトを探しつつ待ちの日々。

数日後、田島くんからメール。
「給料預かってるから取りに来て、明後日なら夜勤入ってるから」
払ってくれんの!あの鬼が!
喜び勇んで明後日に元バイト先を訪ねると、田島くんとチャラ男の谷口くんが勤務していた。

谷口くんが開口一番
「オメーは何やってんだよw 見つかってんじゃねーよ!」と明るく罵る。
「まあSVが来るとは思わないわな。アンラッキーだったよあの日は」と田島君がフォローする。
「ほんとすんません、あの1本でほんとにクビになるとは…」
「昼勤のバイトも弁当食って何人かクビになってるからな、女の子には廃棄あげたりしてるんだけど」
まあ、オーナーなんだから何でも俺ルールでOKなんだろう。
これは事故だと諦めもつき、給料を受け取り店を後にする。

家に帰り封筒を開けて見ると7万4千円が入っていた。
10勤務だけど1勤務分はノーカウントってことか。
あーあこれからどうすっかな、今度は近場のバイトがいいな。


そんなこんなで青いコンビニ勤務は終わった。

こないだ、仕事の帰り真夜中に(場所は全然別だけど)青いコンビニに寄った。
多分ここもオーナー店で、まあまあ自由な店なんだろうという、ごくたまに利用する青いコンビニだ。
家に帰ってから飲もうとビールとツマミを諸々3000円分くらい買い込んで会計したあとに
「ハイこれ、唐揚げどうぞ」
とオーナーが鶏カラちゃん®︎()を差し出して来た。

「えっ」
青いコンビニで色々あった俺は少し固まってしまった。
どっかからSV出て来たりしないだろうな。
要らぬ緊張で素直にハイと言えないまま数秒して
「えーいいんですか、では、いただきます」
「もちろん!ありがとうございましたー」

多分、もう廃棄の鶏カラちゃん®︎()なんだろう。
そっと受け取り、SVが周りに居ないか確認して車に乗り早速1つ食べて見る。
「かっっっっっっっら!!!!!」
赤いバージョンの商品だったので辛いもの不得意な俺には結構辛かった。

いつまで俺を苦しめるのだ青いコンビニよ、と思いながらも食品を無駄にしなくて良かったなとかあの時のクビ損失と合わせてプラマイゼロになるかなと思いをめぐらせ、頑張って完食した。

巡り巡って俺は損したのか得したのか。

美味しいかったけど、アラフィフおじさんにはちょっと脂っこいな。



※廃棄の扱いはグレーな店も多いかと思いますが下記ご参照ください、一切責任もてませんぬ!




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