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自分に似合う服がわからない、未だに

自分のお小遣いで自分のために服を買う、というのは平均して何歳ぐらいなんだろう?校外で着るいわゆる私服というカテゴリの服。

中学生の興味対象といえば当時はTV、マンガ、音楽、恋、ゲームといったものかと思う。まあ今も似たようなものかもしれないが俺が中学生の時分はネット環境が皆無だった。デバイスとか環境とかパソコン通信は世界にあったかもしれないが、ド田舎の貧乏家庭にとっては「無いもの」と一緒だった。

自分のお小遣いで初めて買ったCDはチャゲアスの「PRIDE」だ、たしか中2で14歳。当時「SAY YES」がとても流行っていたのだが2枚組の方の「PRIDE」を買った。もしかしたら「SAY YES」が収録されたアルバム「TREE」の発売前だったのかもしれない。(後に無事TREEも手に入れることになる)


自分のお金で服を買ったのは中3の春、イケてる服屋とかでなく洋服の青山とかだったと記憶している。
大体だ。オシャレなショップなどに行って試着の流れで「お似合いですよ」なんて言われたらもう世界の終わりである。
お前が言うから試着してやった服に死ぬ気で貯めたお年玉お盆玉家事手伝いのバイト代小遣いのTOTALが一瞬にして消し飛ぶのだ、ほんとに似合ってるどうかも微妙なのに。
ジャージと制服と農作業用でも困らない私服だけを与えられてきた中学生に果たして「自分に似合う服かどうか」の判断力が備わっていると言えようか。否だろ否しかないだろわかるだろお前らこのカッコみて!という中学生に奴らは容赦なく「お似合い」をPUSHしてくるのだ。それは友達の付き添いでいった服屋で経験していた。

しかし、男には一人で服屋に行かなければならない時もある。
初めてガラパン(当時はトランクスの事をそう呼んだ、お母さんの買ってくるブリーフを卒業するには自ら殻を破る必要があった)を買う時、初めて隣町の祭りに行くためにイキった服装をしないといけない時。
孤独は俺に味方する。多分。

予算は7000円、色々を考え服に割けるMAXの金額をバリバリ財布にしっかりと詰め込み洋服の青山に向かう。
自宅からは自転車で40分の距離、今考えると気の遠くなる時間だが当時中学校への通学時間は自転車で50分しかも山の上だったので苦にはならなかった。
獲得目標は「イケてるTシャツ」と「そこそこのズボン」だ。
学校ジャージでは格好がつかない。何しろ隣町の祭りに行くのは狙っている娘が来るという情報を掴んでいたから持てうる知識を総動員して出来るだけのイケてる格好をしなくてはならないんだが、何がイケてるのかはサッパリわからない。

しかしもう既に店舗のチョイスで失敗しているのだから、失敗は雪ダルマ式に悲しさを巻き込んで巨大化していく。

店舗に着き、いざTシャツとの対峙。
1枚3000円とかの高級品に一暼をくれてやり颯爽とワゴンセールコーナーへ。売れ残り3枚抱き合わせで1500円とかそういう品が「SALE!!」という元気な赤札のもと一様にくたびれた包装で仲良く並んでいる。
売れ残りだから当然訳のわからないデザインで、今ならプロダクト責任者の首根っこを掴んで奥歯をガタガタ言わしてやりたいような酷いものばかりだったと思うが精一杯30分ほど全ての袋を拝見し1袋を選択する。
白地にシンプルな線形でヨットらしきモチーフがプリントされたもの、白地に英字新聞の切れ端がプリントされたもの、グレー地に流行りのスキーウェア風蛍光色の四角や三角がプリントされたもの。ドン小西が見たらなんていうだろうか、今思いだしてもほんとうに酷い。

Tシャツを決めると、次はズボンだ。予算は残り5500円。
当時のイケてるジーパンといえばリーバイスだかリーだかいうやつでジーンズショップ的なお店に行くと1万円前後で売っていたと思う。(安いのもあったかと思うが)ジーパンなら母ちゃんのお下がりがあるから、ちょっと優男風のゆったりしたズボンが欲しい。といっても現地は洋服の青山である、大抵はおじさん向けの休日パパファッションの品揃えであるからオシャレなチノパンなんかはあるはずもなく、スラックスというのかなんというのかカテゴライズがよくわからない薄い布のベージュ色パンツを選ぶ。5000円。試着をしてみても似合っているのかどうかはよくわからんが、誰も味方はいないのだから俺が決めるしか無いという変な責任感で買うことにする。

↑イケメンがトータルでコーディネートするとこうなるのだろうが、着用するのはボウズ頭の14歳で、合わせるTシャツが壊滅的デザインなのだから推して知るべしの仕上がりとなる。

祭り当日はもう張り切って英字新聞の切れ端Tシャツとベージュ色パンツで参上してはみたのだが、目当ての娘とは2、3言交わしただけで「一緒に歩こう」と誘う勇気はもちろん無く、その他は特に事件もなく平穏無事に友達と屋台のヤキソバを食って帰るという腰抜けぶりでなんともいじらしい。


とまあ私服に関する最初の思い出はこんな具合だが、40超えてる今でも全然進歩がない。多分服自体にあんまり興味がないんだろうね、俺は。
しかしステージの上で演奏するとなるとちょっとは気を使わなければならないことも多く、少しは努力してみるものの結果無惨になることもしばしばある。

32,3歳の時だったろうか、とある人気声優さんのバックバンドを何のラッキーだか分からないが努めることになった時がある。その人気ぶりというのは100万枚セールスとまでは行かないが都内ライブハウス300人を1日2ステージ、2日間で計1200人(複数回来てる人もいるだろうから、延べってことか)即完!ソールドアウト!するぐらいのすごいものだった。5000円くらいの物販も飛ぶように売れていて、ノルマで赤字になっていたりするバンドマンからしたら天と地だったので相当なショックを受けた。

そのライブの時は、まあ奥目に配置されるバックバンドだったので衣装指定は特になく「汚くない、できるだけシンプルなもの」というスローガンで各々のセンスに任されていた。

ライブ前日、「オシャレなバックバンドといえばオシャレな帽子だろ」と思い立ちドンキホーテに向かうが、30代になっても店舗チョイスを間違えていることに今思い出しても赤面する。
もちろんドンキホーテの帽子売り場にはステージ衣装を想定したものなど並んでいるはずもなく(今は違うのかも、行ってないからよくわからん)それなりに悩んだ挙句適当なニットキャップを購入。

果たして当日の精一杯のコーディネートがどうなったかというとこんな感じなんだけども

完全にヤバいやつ

昨日歯医者でクリーニング施術中に、「コイツが人気声優のバックで演奏していたんか」と思い出してしまって可笑しくてやばかった、という日記なんだけどなんだか長くなってしまった。かたじけない。


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