見出し画像

あなたは暴力を受けたことがありますか


まただ。これで何回目だろうかと思う。

夜中に汗びっしょりで目が覚める。
力いっぱい奥歯を噛みしめて、体に力が入った状態で。

そんなときは決まって父の夢を見てる。

日常的に暴力を振るっていた父。

年齢的には大人になっている今でも父の幻影におびえているのかと思うと自分が情けなく思えてくる。



あなたは身近な誰かから暴力を受けたことがありますか。

それは身体的なものですか、それとも、精神的なものでしょうか。

そして、暴力を受けて一番つらいことは何でしょうか。



私は小さいころから、父の理想通りになるように厳しく育てられた。

「テレビは見てはいけない」、「遊ぶ時間は必要ない。」
「勉強してこの高校に入って、この大学のこの学部に入るように。」

父には明確な目標と理想があった。
そして、私が父の思い通りの結果が出せない時、暴力を振るわれた。

例えば私が勉強している時、父はすぐ横に座っていて、問題を解く時間が遅かったり、分からない問題を説明を聞いても理解できなかったときに鉛筆で肩や腕を刺されたり、椅子から落ちるほど殴られたりは日常茶飯事だった。

ストレスでまつげが全部抜けたりもした。
いやたぶん、自分で抜いていたんだと思う。
小さい頃は長くて綺麗ねと褒められていたまつげ。
たぶん、自分に褒められる部分なんてないと自分で自分を追い込んでいたのだろう。

学校から帰ってくるとき、毎日
「今日は怒られませんように。暴力を振るわれませんように。」
と祈りながら帰っていたのを思い出す。



暴力を受けたことがある人は共感してもらえるかもしれません。
一番怖いのは、怒られるかもしれないと思う時間。
相手のリアクションを伺っている時間。
逆に身体的な暴力を受けてる最中は痛いや怖いといった感情とは別に、
「ああ、やっぱりな」という納得と謎の安堵に似た感情が訪れます。

それはきっと、自分が間違った答えを選んだという結果がわかった瞬間だからなのかもしれません。


常に自分の答えが、選んだものが、正解なのか間違いなのか、その視点でしかものを見ることができないのです。


相手の求めている理想に合わせなければならない、結果を出し続けなければならない。けれどその理想通りに完璧にはなれない自分。

きっと、暴力を受けて一番つらいのは自分の無力さを感じることではないでしょうか。



そして私は父の理想通りにはなれなかった。

理想から外れた私に父は全く見向きもしなくなった。



それから何年も経った今、父は末期がんになってあと余命少しだとわかった。

勇気を出して会いに行った私に父は、自分の死後、私のすべきことを言った。それは、私の気持ちや都合など一切考慮していないものだった。

そして私は何年か越しに再認識した。
やっぱり、私は父の人生のゲームのコマの一つでしかないんだなと。


暴力を受けて一番つらいのはきっと、自分の無力さを感じること。
それと同時に自分の感情や自分がどうしたいのか分からなくなること。

正解を選ばなければ。
他者が何を求めているのか、観察して正解を出し続けなければ。
他者に選ばれる自分でいなければ。
他者の理想でなければ自分にはきっと価値はない。
他者に受け入れてもらえるはずはない。
きっと受け入れてもらえるはずなんてないんだから初めから距離を置いている方が楽。

ずっとその思考回路の中で生き続けることではないでしょうか。

そしてそれは、自分自身への精神的な暴力なのではないでしょうか。



私は恵まれているのだと思う。世の中には親の死に心の準備もなく直面して悲しんでいらっしゃる人は大勢いるはず。

私は少なくともこれからどう向き合っていくのか、考えて実行できる時間が与えられている。



人生経験も少なく、思考の足かせが多い自分。

理不尽な仕打ちを受けても怒りではなく悲しみとあきらめが勝つ自分。

理想になれなかった、選ばれなかった自分。



その自分を受け入れて守ってあげられるのは自分しかいないのです。

自分への暴力を止められるのは自分自身しかいないのです。


きっと、選択肢には正解も間違いもありません。

他者の顔色をうかがって、自分を守るために選んだ「他者の求める正解」はあなたを幸せにする選択肢であるとはかぎりません。

あなたが他者を幸せにしたい、と思って「自分のために選ぶ選択肢」こそがあなたを幸せにします。


他者に選ばれなくて、思う通りにいかなくて、自分を責めて。

あなたに暴力を振るっているのはあなた自身です。


「他者に求められる自分」はきっとあなたの幸せの先にあります。



あなたは幸せになっていいんですよ。



あなたは、自分に暴力、振るっていないですか。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?