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0地点から/或る若者たちのデッサン

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▽▽▽▽▽▽ シックスペース雨宿り公演 『星の王子さまー或る若者の肖像ー』 飛行機が沙漠に不時着する頃、漂流して廃工場に辿り着いた。 外は雨、一番星は今日も見えない。 完璧に断…
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0地点からのデッサン04/透明の絵(近景)

0地点からのデッサン04/透明の絵(近景)

よく識る光景 2
"これ、なんにみえる?"

泪で描いた軌跡を指して、きみは問う。

いくつかのこたえが浮かんだけれど、
臆病な自意識の塊のぼくは答えられない。
間違えて、失望されるのが怖いから。

そうしている間に軌跡は消えてしまって、
きみを一層、がっかりさせてしまう。

"これ、なんにみえる?"

懲りずに絵を描いて、きみは問う。

或るこたえが浮かんだけれど、
傲慢な自己愛の塊のぼくは応え

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0地点からのデッサン03/透明の絵(遠景)

0地点からのデッサン03/透明の絵(遠景)

よく識る光景 1壁も床も、無数の白い紙で埋め尽くされた空間。
天の井戸にだけは、移ろう色が漂い、流れ続けている。

透明な雫を指先にあつめ、そのひとは絵を描いている。

白い ―よく見れば一枚一枚が微細に質の違う、羊皮紙や和紙や上質紙、ざらついたものやすべすべしたもの、厚みもサイズも様々なのだけれど― 紙に手当たり次第、透明な軌跡を残してゆく。

あるときは衝動のまま。鼓動のリズムで遊びながら。呼

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0地点からの習作デッサン02 / "See you" LETTER

0地点からの習作デッサン02 / "See you" LETTER

宣戦布告を呑み込んで、
愛の唄を紡いだすべてのひとへ。

前略

あなたの声が聞きたくて、今夜、この手紙を書いています。

わたくしといったらどう足掻いても、惰眠にも飽食にも慣れ親しんだ全身全霊で。
贅肉を抱えたこの身体で、海を、漠を、渡ろうなんて。ちゃんちゃら可笑しくて、今にも泣いてしまいそうです。

掲げるべき灯の在処を。永遠から湧く水の行方を。
識っていたはずだと、憶えているのだと、

(其

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Session01 アプリポワゼ(映像)

Session01 アプリポワゼ
2018.6.9.
習作/心象スケッチ・ドローイング

◇A面◇
方舟には、乗れなかったのだとおもう。たぶん。
選ばれなかったのかもしれないし、
寝坊して、乗り遅れたのかもしれない。
その頃はまだ、魚か、鳥か、ミジンコだったので、
せかいが沈んでもどうってことなかった。
(嘘。ほんとうは少しだけ寂しかった、)
ドロドロに溶けた星のいのちをのみほしながら、
何度かい
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Session01 アプリポワゼ 心象スケッチ・ドローイング

Session01 アプリポワゼ 心象スケッチ・ドローイング

Session01 アプリポワゼ
2018.6.9.
習作/心象スケッチ・ドローイング

https://note.mu/sippe60_n/n/nb87029287387

◇A面◇

方舟には、乗れなかったのだとおもう。たぶん。

選ばれなかったのかもしれないし、
寝坊して、乗り遅れたのかもしれない。

その頃はまだ、魚か、鳥か、ミジンコだったので、
せかいが沈んでもどうってことなかった。

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