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麻薬非犯罪化デモに行ってみた【グルジア酔いどれ夜話/Siontak】

第十八夜

世間一般ではクリスマスが終わったようだけどグルジアではこれから!

クリスマスはキリスト教の聖日だが、正教を国教とするグルジアではユリウス暦で数えるのでクリスマスは1月7日になるのだ。

だから12月25日を過ぎてもまだまだクリスマス前のウキウキ気分で街中も浮足立った雰囲気。日本特有のカップルのための聖夜というクリスマスイメージもグルジアに来るといい感じに崩される。こっちでのクリスマスの醍醐味とは老いも若きも家族でテーブルを囲んでたらふく食べること、至極単純だ。
今日も家の外でジングルベルの唄を口ずさむ陽気なオヤジ声が聞こえてきて、その無邪気さに僕もうれしくなってくる。


クリスマスマーケットのようなものはないけれど駅前には露店が出る


グルジアのクリスマスツリーは白い生木の削り出し
Chichilaki (ჩიჩილაკი)という


そんなクリスマスムードとはあまり関係ないけど、先日12月10日は世界人権DAYだった。人権について考える日。日本では同性婚とかいじめとかいった問題をテーマにイベントがあったりするようだけど僕はこの日、トビリシでこんなデモに誘われた。

Facebookに立てられたイベントページ

イベント画像に書かれたグルジア語のタイトルはグーグル翻訳をあてると「敢えて非犯罪化を」と読める。イベントの英語説明を読んでみると・・

抑圧的な残酷な麻薬政策にNO! をつきつけよう。
現在の麻薬政策は罰金収入で財政を、ドラッグ使用という名の下に人々を牢獄につなぐものだ。そもそもドラッグの使用とは犯罪なのだろうか?
大麻やその他のソフトドラッグであろうとヘビードラッグであろうと等しく麻薬の非犯罪化を要求する!我々は政府のこの10年間に及ぶ継続的な暴力的な圧政に対する回答を求め、刑罰ではなく認証とトリートメントを求める!暴力的な麻薬政策の終結を!

やっつけ翻訳なので細かいところで誤差はあれ、大体こんな意味だろう。ずいぶん過激な要求に見える。麻薬での逮捕をやめろと言ってるのだから。しかしこの文章はやや性急で誤解を招きやすそうだ。わかってる人々に向けての文といった感じで、なにも知らない人へ自分たちの主張を理解してもらおうという配慮がどうやら欠けているようだ。

一度世界人権DAYに話を戻してみる。
世界人権DAYは1950年に国際連合で世界人権宣言が採択されたことをきっかけにつくられた。この時、グルジアはソ連の一構成国。

冷戦が終わる1991年にソ連が崩壊して独立するとグルジアはロシアとのアブハジア紛争などを経て反露、親EUへと舵を切って今にいたる。

古臭くてダサい、保守的なソビエトのくびきから解き放たれてヨーロッパの一員になりたい!
グルジアは官民挙げてEU加盟を望んでいる(ようにみえる)。

ところがEU加盟にはクリアしなければいけないものも多い。その一つが人権問題。基本的な人権が守られていない国はEUに仲間入りできない。
たとえば人種差別はないか?
たとえば同性愛者の人権は守られているか?
たとえば人工中絶の権利は認められているか?
etc etc...人権のみならず現代に生きる若い世代のグルジア人は常にヨーロッパでの社会問題に関心を抱いている。その関心度は日本人のそれより高いように思える。

国の麻薬政策についてもそのような形でグルジアの若者の注目を集めたんじゃないか。
麻薬中毒者の権利?麻薬使用の自由?そうでもあるし、それだけでもない。

どういうことかというと、昨今欧米の一部では麻薬政策として各種麻薬の非犯罪化が進んでいるそうなのだ。
「麻薬の多くは使用者の健康に悪影響を及ぼすが酩酊状態が交通事故など他者への被害に結び付かない限り個人の自由でもある。麻薬の使用を取り締まるコスト、懲役刑に処して刑務所を維持するコストを削減する代わりに中毒者の社会復帰施設などに費用をあてようとか、大麻に関していえばマフィアの収入源から政府の税収源に転換してしまおう。」
こういう考え方が現実化し始めているらしい。

知ったかぶりの説明を続けるより僕が見方を少し変えてみようかと思うきっかけになった動画を見てもらった方が話は早いかも。見終わるまでに5分ちょっとしかかからないし、日本語字幕も付いている。

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