【ディスクレビュー】Base Ball Bear 『Short Hair』
「キミ」のことしか考えられなくなることって、よほど恋愛を避けた人生を送らない限り、誰しもが経験することなんじゃないかと思う。「キミ」に惚れてしまった瞬間、「キミ」に酷いことを言って傷つけてしまったとき、無性に「キミ」に会いたくなったとき。「キミ」に対する愛で溢れているが故に、時の流れる速度すら、普段とは違った、どこかセンチメンタルなものに感じてしまう。奇妙なものだが、それこそが恋の醍醐味でもある。「キミ」に支配され渋滞した感情は、ちょっとやそっとの自制心では止めることはできない。《大切なものだけが 大切ならいいのに/何故だろう 君のことだけ/浮かぶのは君のことだけ》ーー。混じり気ないミニマルなギター・ロックが示唆するのは、そんなストレートな想いだろう。ちょっと捻くれたギターフレーズも、どこか文学チックで小洒落た歌詞も一切不要。ベボベらしくない、と提言してしまうと少し語弊があるかもしれないが、明らかに彼らがこれまでに見せてこなかったタイプの、ど直球で誠実なラブソングが、爽やかな夏の終わりに届けられた。
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