青春とは、音と楽に生きること。
「スキな曲を3曲選んで、熱く語ってほしい」
そんなことを言われたら、ついつい衝動で語りたくなってしまうのが、音楽を愛する者の性(さが)である。
ただここで頭を悩ませるのは、"スキな曲"という漠然としたテーマだ。たとえば「夏のドライブで聴きたい曲、3つ選んで」だとか「旅行帰りの夜行バスで聴きたい曲、3つ選んで」といった具合に訊ねられたら、シチュエーション、コンセプト共にしっかりしてるし、きっと選びやすいと思う。
ただ、今回はワケが違う。なぜなら、シチュエーションも何も決められていないから。あるのは、"スキ"という漠然とした感情データだけ。今回のテーマ選定に対しては、少しばかり不親切に感じてしまったのだけれど、執筆者それぞれが”スキ"の自由な捉え方をして、型にはまらない文章を書けるというのは、むしろ面白みがあって良いのではないだろうか。
そんなわけで、与えられた"スキな曲"という対象について文を書いていくわけだが、僕はその"スキ"という2文字を"青春"という2文字に重ねてみた。青春とは、学生生活そのものだ。"スキな曲"という対象を、"学生生活のテーマソング"と解釈して、それに相応しい、当時の僕が聴きまくっていた3曲を書いていく。
『yoakemae』|Base Ball Bear
中学生活のテーマソングは、『yoakemae』だ。「いきなり中学から?小学校は?」そう思われてしまいそうだけれども、これにはワケがあって。というのも、音楽にどっぷりハマり、本格的に僕の"青春"が始まったのは、中学生時代からなのである。
中学時代の青春。部活。モンハン。イヤフォン。ラジオ。
ラジオを聴き始めた明確なきっかけとかは本当に無くて、ただの気まぐれ。愛用していたウォークマンで、放ったらかしていたラジオ機能をなんとなく思い付きで使ってみたら、たまたま出会ってしまったのが、FMラジオ『SCHOOL OF LOCK』だった。"ラジオの中の学校"というコンセプトのもと放送されるこのラジオは、通っていた中学校とは別に存在する、もう1つの大切な居場所となっていった。このラジオ番組に出会っていなかったら、僕はどんな風に育ってしまっていたのだろう。当たり障りのないメジャーな音楽のみを、ただのBGM感覚で聴くタイプの人間になっていたかも知れない。そんな人生、想像しただけでもつまらない。
そんなわけでSCHOOL OF LOCK!を入り口に音楽を知るようになったのだけれども、そこで最初に出会った曲がBase Ball Bear、通称ベボベの『yoakemae』なのである。初めて"邦楽ロック"という概念に向き合うきっかけとなった曲だ。当時ちょうどリリース間近で、パワープレイされていたのだと思う。塾の課題に追われていた23時過ぎ、イヤフォンを介して流れてきたゾクゾクするようなイントロは、衝撃的だった。
<僕は旧(ふる)い風を吸い込んで/新しい呼吸をしたんだ>
ベボベの『yoakemae』は、当時14歳の僕に"邦ロック"という新たな息吹をもたらしてくれた、"中学生活のテーマソング"だ。
『シルエット』|KANA-BOON
高校時代の青春。恋。パズドラ。文化祭。修学旅行。
この『シルエット』を聴くと、高校時代の思い出がフラッシュバックしてしまう。失恋も、あの夏も、すべて。修学旅行の夜、KANA-BOONを好きな友人と聴きまくっていたのを覚えている。そもそもKANA-BOONにハマったのは、Youtubeで『ないものねだり』のMVを観たのがきっかけだ。『ないものねだり』のキャッチーさは、僕の心を最も容易く鷲掴みにした。
<大事にしたいもの 持って大人になるんだ/どんな時も 離さずに守り続けよう/そしたらいつの日にか なにもかもを笑えるさ>
高校生活で得た大切な思い出は、大人になっても決して色褪せることはない。大学受験を乗り越え、高校生活も終わりに差し掛かり、"高校卒業"の4文字がチラつき始めた時期。このフレーズをお守りのように、思い出ごと胸の中に閉じ込めた。
KANA-BOONの『シルエット』は、当時18歳の僕に「思い出の永久性」を教えてくれた、"高校生活のテーマソング"だ。
『Squall』|04 Limited Sazabys
大学時代の青春。合宿。徹夜。単位。ライブ・フェス。
僕の大学生活は、一言で表すならば『音楽』だ。首都圏開催のライブやフェスには数えきれないほど行ったし、地方遠征だって呆れるほどしたのを覚えてる。中学から邦ロックにどっぷり浸かっていたので、大学でも相変わらず邦ロックばかり聴いていた。そんな中でも、特に狂ったように聴いていたのが04 Limited Sazabys、通称フォーリミだ。彼らは、自分自身のヒーローで、常にキラキラしていた。そんなキラキラが、楽曲にも表れている。
彼らはスーパーヒーローで、輝きを放ち続けている。だが、僕はどうだろう。憧れるだけで、自分自身は何も変われていないんじゃないか。せっかく入った大学で何も残せていないし、心から夢中になれることなんて、"音楽を聴くこと"くらいしかない。「音楽を通じて人の心を救いたい」なんて、とてもじゃないけど言えない。そんな時、『squall』の歌詞の一節が頭をよぎる。
<あの頃のままじゃ 届かないよ/五月雨降れ降れ 生まれ変われ>
生まれ変わろうと足掻く姿そのものが、ヒーローの本質であると思った。泥臭く、自分なりのヒーロー像を目指せばいいんだ。
フォーリミの『Squall』は、「たった1人でも構わない。誰かのヒーローになりたい」と思わせてくれた、"大学生活のテーマソング"だ。
”青春は終わらない、音楽は鳴り止まない”
そして今は大学卒業から約1年半が経ち、社会人生活、いわば"4度目の青春"の真っ最中だ。学生生活を満喫していた頃は「青春は学生時代まで」と思い込んでいたが、蓋を開けてみたらそんなことはなかった。
"4度目の青春"の終わりが宣告されるのは、きっと死を迎える時だろう。心音が止まるまで、青春は終わらない。生きているうちは、音楽は鳴り止まない。
青春という名の人生に寄り添ってくれる"音楽"と、共に、楽しく、生きていこう。
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