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若き君よ。

久しぶりに、
自転車を漕いで、
春の風を感じていると、

一瞬ガシャッ…と鳴り
自転車が空回りした。

あぁ…チェーンが、
外れてしまったのだ。

予感はしていたのだ。
はじめから、
自転車を漕ぐたびに、
ギーギーと悲鳴をあげて、
私にキツいっすと教えてくれてたのだ。

そんな私は、
いやーあぶらささないとなー
と軽くは思っていたが…
やっちまった…。

とりあえず、
安全な場所に避難。

昔ならヒョイっと直せたはず。
なのに…なのに…
なかなかはまらない。

近くで高校生ぐらいの男の子達が、
しゃべっていた。

…あの人なにやってんだ?
…あーやっちまってるね。
…チェーンはずれてやんの。
…全然はまんねーじゃん。
…うわーかわいそう。
…ジワる。

最後の「ジワる」とはなんだ?
いじわるって意味?違う?
だか明らかに笑って喋ってる。

そんな会話に聞き耳立てて、
なおも、
チェーンと格闘している私。

負けてたますか!くそっ!

そんな事考えながら、
むむむぅ…と苛立っていた。

そこに先ほどの高校生達がやってきた。

大丈夫っすか?
なんかずっと見てたんすけど、
困ってそうだったんで。
俺達手伝いますよ。

苛立っていたので、
なにこの若造が!
さっき陰口言ってただろ! 

と心の中で叫び。

いいのか?汚れるぞ?
どうもうまくいかないんだよな。
すごく…いやかなり困ってたんだ。
手伝ってくれると、とてもありがたい。

と思いっきり甘えた。

男の子達は、手際よく、
役割分担し、すぐに、
チェーンがはまった。

(お前達、すげーな。うっ。
まぶしくて、爽やかすぎるぞ。)


えっ!もう終わったのか?
すごいね、感心したよ。
君たちがいてくれて、
本当によかった…ありがとな。

持っていたウェットティッシュを、
配り、いやー助かった、助かった。
すまんねー、すまんねー。
とお礼をし、

男の子達を見送ろうとしたら、
一人の男の子が、

この自転車、
チェーンが外れるクセついてる。
乗らない方がいいって。
早く自転車屋に
持っていってなおしてもらったら?
じゃないと危ないし…心配だからさ。

おいおい、なんて好青年なんだ…。
うっ泣きそう…だけど我慢した。

そうなのか?
じゃぁ、このまま押して歩いて、
自転車屋に持っていくよ。
心配までしてくれて、
本当にお前は優しいな。
あんがとな。

と自転車を押してしばらく歩いた。

途中で男の子達が、
見えなくなったのを確認し…

自転車に乗って走る。

さわやかな風だな。
いいなぁ…若いって。
素晴らしいなぁ…。

ガシャッ…。

忠告してくれたのに…。
チェーン外れた…。
自分が恥ずかしい…。
穴があったら入りたい…。
おバカだ…私は大バカ者だ…。

だって、あんなカッコいい好青年。
ずるいよ。
ちょっと夢見たっかった…。
わかってるけど…大丈夫だ!
と息巻いて漕いだ結果がこれ…。

あー。
空は青いなぁ…。

青春なのかぁ…。

これも人生なのか…。

うん。うん。

押す自転車は、
チェーンがガチャガチャ鳴り。

それにより、静かな風景がより際立ち、
こんな日も悪くないな…

と思ったらすごく滑稽で笑えてきた。

ふと携帯で調べたら出できた。

…ジワる。

今まさに、
この状態の事の意味だったんだ。

いい言葉だな。

…ジワる。


自転車屋どこですか?

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