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変わらないあの人。

その人は、障害者の就労支援で出会った。

色んな障害を、持ちながら介護の資格をとって、
色んな職場を面接し、落ち続けながらも、
やっと就職を手に入れた。

そんな矢先に、脳梗塞で倒れた。

そうとは知らず、
その人の誕生日におめでとうとメールした。

そこで、
返事がきたが看護師さんからであった。
事情をそのメールで知る事になるのだ。
喋る事も身動きもとれないらしい。

私もそれどころじゃなくなり、疎遠になった。

そして、
今年のその人の誕生日に、
自分の近況と一緒に、おめでとうとメールした。


どちらさまですか?

そう返事がきた。
まぁ当たり前だよな。
と思ってたら、その人から電話がきた。

記憶障害があって、誰かわからない。
言葉もまだうまく喋れないし、
ポールがないと、歩けなくて、
ほぼ動かなかったら、体重が増加した。
医者から食欲なくす、薬もらってる。

たどたどしく、つっかえながらそう言うのだ。

私は、笑って、
うんうん。そうだよね。当たり前だよ。
電話くれるなんて、すごく嬉しいよ。

ありがとな。
あの就労支援のロッカーに、
いつもたくさんステッカー貼ってたでしょ?
覚えてる?君が就職した時に、思い出にって、
そのステッカーをオレにくれたんだよ。

そう言うと、
あっ!思い出した!
声聞いたら、思い出してきたぁ!
すごいねー!思い出したー!
あの時の…あー元気なのかい?

と大声で、喜んでいた。
私もうれしくなり、そうそう!
思い出してくれたんだね!
すごいな!あの時はありがとな!

すると、その人は、
今は退院して、一人暮らしの家で、
ヘルパーさんを頼んで、生きてるんだ。

こっちから、会えないから、住所教えるから、
会いに来てくれ!すごく会いたい!

と言われたが、私はまた入院中で、
外出は控えて下さいと言われている。

だか、その事は、言わず、
おー!そうだな!住所はメールでいいぞ!
喋るのも大変だろ?絶対に会いに行くから、
それまで、とにかくあまり太るなよ!

そう告げると、
そうだね!メールする!
ずっと家にいるから、いつでもいいよ!
あーでも、薬の効果ないんだわ!
もうすぐで、大台の100キロだ!

ありゃりゃ…そりゃ大変だね…。
じゃぁ、手土産は食べ物じゃない方が…。
ま、とりあえずメール待ってるわ!

本当に、電話してくれてありがとうな。
声も聴けて、久しぶりで嬉しいよ。
そして、オレの事思い出してくれて、
ありがとな!あまり無理すんなよ!

その人は、
おーう!こっちこそ、ありがとうな!
いい頭の運動になった!
ちょっと疲れたから、寝るわ!
おやすみかん!

そんな内容の電話をして、
私は最後に、

おー!おやすいみんぐ。

とダジャレをかまして終わらせた。
その人は本当に寝たのだろう。
住所のメールは来なかった。

私も、久しぶりに懐かしい人と、
話が出来て、なんだか頭が活性化した様な。

たくましい人だな。

オレも負けてられない。

記憶障害に、言葉もうまく喋れない、
しかも自力では、歩けない状態なのに、
前向きに生きているのだ。

くすぶってる私は何やってんだよ!
早く退院して、あの人に会いに行かなきゃ。

あの人は、持ち前の明るさで、
私は何度と救われていた、今もそうだ。

まずは…住所…教えてくれ。
記憶障害の為なのか、連絡がない。

あれだな、退院したら、また一から、
はじめましてからの、思い出してもらおう。

そして、あの人の家に遊びに行くぞ!

楽しみだな…。


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