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【後編】西友 大久保社長が考える「小売業の時代変化への対応とDX」

2022年8月26日(金) に開催した「第9回 sinopsユーザー会」で株式会社西友 代表取締役社長、株式会社リテイルサイエンス ファウンダーである大久保 恒夫 氏に講演いただいた基調講演「小売業の時代変化への対応とDX」の内容をご紹介します!

前編はこちら

大久保 恒夫 氏

DX=ビジネスモデルの革新

DXはよくデジタル化やデータを活用して「経営改革をすること」だと説明されます。大久保氏はそれに加えて「ビジネスモデルを革新すること」があると話します。

「小売業は店舗をつくってそこで商品を売るというビジネスモデルから脱皮する必要があると考えます。お客様のデータをもっている小売業はマーケティング業に転換していくべきでしょう」。

地道なシステム化の延長戦上にDXがある

「DXをこれから推進する企業は、あまり型にはまりすぎずに、地道に進めるべき」だと大久保氏は説明します。

「DXは大きな視点で長期的に取り組む必要があると言われますが、あまり『DXはこうあるべき!』と思いこまないほうがよいでしょう。理想論ばかりを追い求めると、上手くいかないことが多いようです。地道なシステム化の延長戦上にDXがあると私は考えます」。

「将来、大きな構造変換が起きる、ビジネスモデルが変わっていくというようなビジョンを持ちつつ、具体的にはどう進めるべきか、現実に即したシステムの導入から地道に進めることが、小売業のDX成功のカギだ」と、大久保氏は言います。

DXを推進するためのポイント

POSシステム

▶ID-POSを含めPOSデータの活用で、現場でのPDCAが回る
▶POSデータで、売上、粗利益、在庫数をリアルタイムで管理

大久保氏はID-POSデータは非常に有益な情報のため、今すぐ活用を進めるべきだと説明します。「消費者が代金を支払うときにポイントカードを提示することで、誰が購入したかが紐付けされるため、誰がその商品を購入したかを把握できます。個人の購買データが収集できるので、ロイヤルユーザーや新規ユーザーといった分類も可能です。リピート購入なのか、ブランドをスイッチングしたかなど、個人別に単品単位のデータを収集できるため、活用しない手はありません」。

販売計画システム

▶売場での販売計画のシステム化は今後の課題
▶売場で、売上、粗利益、在庫の販売計画を立案し、リアルタイムで、単品別の売上、粗利益、値下げ、在庫データを出す。結果検証しPDCAを回すことがシステム化される

「特売売場では、販売計画を立て、PDCAを回すことが重要です。計画通りに上手くいったのか、いかなかった理由はどこなのかを検証し、次に生かすということです。そういった運用が可能なシステムを導入すべきでしょう」。

需要予測、自動発注システム

▶売上予測の精度が上がり、品切れと値下げの削減ができるようになった
▶需要予測により、精度の高い自動発注ができる
▶単品別カニバリ予測により、値下げが削減できる
▶売上予測に応じて、作業量が見込めれば生産性が上がる
▶売上予測から、生鮮、惣菜の店舗での生産作業が適正化される
▶物流量も予測できるので、物流センターの作業計画も立てられる
▶自動発注は商品特性に応じて、いろいろな方法が考えられる

需要予測システムは「これから成果が出る、伸びてくる分野だ」と大久保氏は言います。「需要予測の精度が上がれば欠品ロスと値引き・廃棄ロスが削減できるほか、売上予測から作業量を見込むことで適正な人員配置ができ、生産性も向上します。単品別のカニバリ(カニバリゼーション)を予測すれば、特売品の販売計画にも非常に有益です。物流予測も可能ですので、物流センターの効率化にも貢献します」。

棚割りシステム

▶売場の陳列データは、小売業の重要データとなる
▶グロサリー、日配の定番棚割りだけでなく、生鮮、惣菜も棚割りもシステム化する
▶陳列データとPOSデータで売場の問題点が分析できる
 ・グルーピング、ゾーニング、フェイシングで棚割りを作成する
 ・売上に応じてとフェース数を適正化する
 ・ゾーニングを維持しながら、単品の位置を適正化する
 ・棚割りシステムで売場陳列最大在庫数を計算する
 ・在庫回転の視点からフェース数を適正化する
 ・発注ロット数を適正化する

大久保氏は「何をどこにどのくらい並べるかという棚割り作業は小売業の基幹機能であり、棚割りデータは重要なデータ」だと説明します。そして今後は日配・グロサリーといった定番棚割りだけでなく、生鮮や惣菜のカテゴリーでもシステム化が進むことが予測されるといいます。

作業割当システム

▶売上予測から、納品予測から、売場での作業量を予測する
▶作業量に合わせて、人時数を適正に配分する
▶シフト管理、個人別能力に対応して、作業に人を配置する
▶作業割当計画の精度アップにより、人時生産性(人時売上)が上がる
▶人時売上をKPIとして、人件費のコントロールができる
▶マルチジョブ化により、人時生産性が上がる
▶マルチジョブ化のためには動画でのEラーニングシステムが効果がある

年々作業費コストが上がっているため、作業割当の見直しを進めるべきだと言います。

「従来のエクセルなどで作成したシフト表を壁に貼るといった運用ではなく、何時にどのくらいの人数が何の作業を実施する必要があるのかを洗い出し、それに基づいてシフトを作成することが大切です。これを頭の中で計算、想像するのは大変なので、システム化を進めるべきです」。

実店舗とネットスーパーの両立

「ネットスーパーの重要性」についても説明いただきました。「実店舗での売上はこれから絶対に下がってきます。そのため、ネットスーパーで売上をプラスオンさせるという考え方がこれからの小売業には絶対必要です」。

ネットスーパーの成功には「実店舗」のロイヤリティが重要

「ネットとリアルは決して敵対するものではなく、融合させて相乗効果を生むことが大切です。あのお店の商品を持ってきてくれるという価値を感じてもらうことや、実店舗の品質が良いからネットで注文しても問題ないだろうと思っていただくこと。さらにネットでは品切れに対して敏感ですので、品切れを起こさないことも重要です。こうした実店舗のロイヤリティを上げることがネットスーパーの成功のカギです」。

店舗に来る理由づくりも大切だと言います。「ライブ感、エンタテイメント、コミュニティといったリアルの店舗でしか体験・体感できない魅力をどう演出していくかが課題となるでしょう」。

先に会員を取り囲んだ企業が優勢に

ネットスーパーを始めたけれど、赤字が改善しないという話が多いようですが、大久保氏は「ニーズがある限り必ず黒字化できる」と説明します。「粗利率、ピッキング作業の効率化、配送効率の3点に取り組めば必ず効果がでます。そしてネットスーパーは先に会員を抑えたほうが有利です。先に会員をがっちりと囲い込みましょう」。

そのほか、デジタルマーケティング手法や専用アプリの活用方法などについても説明いただきました。

大久保氏がファウンダーを務める株式会社リテイルサイエンスでは「デジタルマーケティング研究会」を主催しています。デジタルマーケティングにご興味のある方はぜひ、こちらをご覧ください。

株式会社リテイルサイエンス公式ホームページ:https://www.rtsc.co.jp

前・後編にわたり大久保氏にご講演いただいたウェビナー「小売業の時代の変化への対応とDX」をご紹介しました。弊社は、今回の講演テーマである小売業のDXを推進するサービスを各種展開しています。詳細は「sinops-CLOUD」のサービスサイトをご覧ください。