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【ウェビナー後編】シノプス×東急ストアのDXを活用した食品ロス削減と生産性向上

4月20日に「東急ストアのDX戦略 ~ リアルタイム在庫・需要予測 を活用した食品ロス削減と生産性向上 ~」と題したウェビナーを開催しました。スーパーマーケットでの作業効率化や食品ロス削減など、東急ストアさまとシノプスが一緒に取り組んだ事例についてお話ししました。後編では店頭の品出し作業やネットスーパーのピッキング作業でのDX事例をご紹介します。

デリカ部門の値引き作業のDX事例を紹介した前編はこちら


店頭業務の約42.5%が「品出し業務」

店舗運営には欠かせない品出し業務。営業時間中に少なくなった商品を補充し、お客さまが手に取りやすいようにきれいに陳列する作業です。東急ストアの営業本部デジタルマーケティング部DX推進課の福冨渉さまは「駅前店舗など売り場面積が限られる店舗では1日に複数回の品出し作業が必要で、業務の42.5%を品出し業務が占めます。そこで作業の効率化ができないかと検討を始めました」と話します。

sinops-CLOUDの品出し支援機能を活用

従来の品出し業務は、店頭の商品棚を見て欠品や品薄気味の商品をメモし、在庫を保管しているバックヤードに取りに行っていました。商品名のほか、JANコードや個数などさまざまな情報を商品数だけメモする必要があります。そして在庫が保管されているバックヤードで、そのメモをもとに商品を探します。味やサイズの種類が多い商品はメモをとるのも大変です。

そこで「sinops-CLOUDリアルタイム在庫」の「品出し支援機能」を活用し、メモ作業をDX化。iPadなどのタブレットとスキャナー連携させることで、商品バーコードを読み取るだけでリスト化できるようにしました。

店舗全体の在庫数を15分ごとに可視化

品出し支援機能を活用するには15分ごとの在庫データが必要です。「東急ストアさまは以前は1日ごとの在庫状況しかデータ化できていませんでした。しかしPOSシステムの必要な情報をFTP(File Transfer Protocol)で連携することで、システムのカスタムをせずにスピーディーに開発できました」(シノプス取締役 岡本数彦)。

15分ごとの在庫数が把握できるようになったことで、バックヤードの在庫の有無も一目で確認できるようになりました。「従来の手法では、バックヤードに在庫がない場合もあり、探しても結局なかったということもありました。こういった事態を防げるようになりました」(福富さま)。

商品画像で誰でも探しやすく

さらに、バックヤードの膨大な段ボールの中から目当ての商品を探し出すためには、大体どのあたりに保管されているか、どんな形状の梱包なのかなど、ある程度の経験や知識が必要になると言います。「そこでリストにケースや単品での商品画像を連携させました。画像を頼りに誰でも探しやすいように設計しました」(福富さま)。

データ管理で作業の重複を防ぐ

従来の方法では、複数人が同一商品をメモしていることもあったと言います。「複数人が同一商品をスキャンしても、その情報を共有できるため、二度手間を防止できます。売り場でスキャンを行う人、バックヤードで商品をピッキングする人と業務分担も可能になりました」(福富さま)。

1日120分の作業時間の削減を実現

品出し支援機能により、東急ストアさまでは品出し業務の時間を1日120分削減できたと言います(中~小型店/内訳:チルド30~40分、ドライ50~60分程度)。「削減できた時間はレジなどのお客さま対応や商品の前出し業務など、『人にしかできない業務』に注力しています」(福富さま)。

「品出し支援機能についてはまだまだ改善できる点が多くあると考えています。今後も東急ストアさまと一緒により効果が高められるように改善に努めていきます」(岡本)。

コロナ禍で普及したネットスーパー

コロナ禍で利用者が増加したネットスーパーのピッキング業務の効率化も喫緊の課題となりました。「2020年の3~12月にネットスーパーの売上は3割増、客数は15%増加しました。従来通りの作業手順では追い付かない状況でしたので、作業改善の検討を考えました」(福富さま)。

ピッキングと欠品対応作業に着目

今回東急ストアさまでは「ピッキング作業」と「欠品対応」のシステム化を検討されました。「ネットスーパーから注文いただいた商品は実際の店舗の売り場からピックアップするため、相当な労力が必要です。さらに欠品してしまった場合はお客さまに電話でご連絡し、代替品を用意する必要があり、手間がかかっていました」(福富さま)。

ネットスーパーの一連の流れ
1.注文
2.注文データの受領
3.ピッキング作業
4.欠品対応(電話連絡、代替品の用意)
5.梱包・検品
5.配送

需要予測に受注内容を反映し、欠品撲滅

東急ストアさまにはsinops-CLOUDをすでに導入いただいており、ネットスーパーの販売実績はデータ連携がされていました。しかしすでにネットスーパーより注文いただいている未来の受注数については、発注勧告に加味されていませんでした。
「sinops-CLOUDを導入いただいた時点では、ネットスーパーの受注数はそれほど需要予測に影響しないと考えていました。しかしコロナ禍でネットスーパーを利用される方が増えました。朝、ネットスーパーで注文の入った商品をピッキングすると、欠品になることも多くなっているというお声をいただいていました」(岡本)。

そこで東急ストアさまにもご協力いただき、RPA(Robotic Process Automation)を活用し、1時間ごとのネットスーパーの受注数をsinopsに反映するしくみを整えました。これにより、在庫が不足する商品がある場合は、自動的に発注数に加算できるようになりました。

あわせて、店舗の棚割メンテナンスアプリ「sinops-Pad」にもネットスーパーの受注数を表示できるようにしました。「なぜこの数の発注が必要なのかを現場で確認いただきやすくなりました」(岡本)。

紙のリストからタブレット+スキャナに変更

ピッキング作業は東急ストアさまでは従来、注文リストを印刷し、画板に挟んでリストにある商品を一つひとつ集めていたと言います。「リストには商品画像もついていますが白黒のため視認性が低く、経験の浅い方では商品を見極めることが困難でした。そこでリストをデジタル化したいと考えるようになりました」(福富さま)。

今回はただのデジタル化ではなくさまざまな機能を追加。上述のネットスーパーの受注数の表示のほか、商品のJANコードをスキャンすることでピッキングした商品が正しいかを確認できるようにしたり、発注システムの棚割り画面と連携させ商品の陳列場所が探しやすいように工夫しました。
「従来、商品が正しいかチェックするには小さく書かれているJANコードの下4桁を目視で確認していました。スキャンするだけで確認できるようになったため、確認時間を大幅に削減できています」(福富さま)。

1商品のピッキング時間は10~20秒短縮

従来の手法(白黒の紙のリスト+目視確認)では1商品あたり50秒ほどかかっていましたが、タブレット(カラー)とスキャナー確認に変更したところ、約40秒(早い人であれば約30秒)でピッキング可能になりました。
「1商品で平均10秒短縮ですので、年間の注文数で計算すると、1200時間の作業改善効果が得られることになります。削減時間を利用して、ネットスーパーの注文上限数を増やしたり、他の売り場の支援を行えるように、業務改善に取り組んでいます」(福富さま)。

前・後編にわたり東急ストアさまと一緒に取り組んだ「sinops-CLOUD
」を活用した店舗作業のDX事例についてご紹介しました。今回ご紹介した値引作業や品出し作業の支援のほか、sinops-CLOUDは小売業の現場・作業改善に寄与するシステムを各種展開しています。詳細は「sinops-CLOUDサービスサイト」をご覧ください。