Lord of the Rings : スポーツとショーの円環に呪われし王
noteの企画で「ASICSスポーツ応援プロジェクト」さんが「#応援したいスポーツ」というテーマでコンテストをやってるそうで。
でまあ、一応プロレスを応援するために作ったようなnoteアカウントなので、書くとしたら「プロレスを応援する」がテーマになるわけですが。
これを読んでるあなたがプロレスファンなら「おいおいおいおいあいつry」ってなるでしょう分かってる分かってる皆まで言うな膝ガクブルってるけど大丈夫勝算はある。
とはいえ目の前には広大な地雷原が広がってるし、その前に泥沼にずぶずぶと沈む音が聞こえてるし…。
プロレスを応援する、ということはこうも茨の道なのか、と天を仰ぎながら書いてます。
果たしてこの記事をASICSさんはオッケーとするのか否かくらいのレベルで。
▪️プロレスはキング・オブ・スポーツを名乗れるか
そもそも!
プロレスとはスポーツなのか否か!
ここからスタートしなければなるまい!なんですよ。
これはプロレスファンにとってはなんか胸にきゅーっとくるものがあるんですよね。永遠のテーマ。
スポーツ新聞には取り上げられてるし、プロレス雑誌はスポーツのコーナーに置いてあるでしょう。
でもテレビのスポーツニュースってプロレスは扱わないんですよね。地上波のテレビ番組でプロレス扱うのってアメトーークとかのトークバラエティかクイズ番組くらいですよ。
あれ〜俺が今日最高にエキサイティングして観戦した試合のことはやってくんないのね〜っていつもモヤる。
プロレスとはスポーツなのか否か!
アメリカ最大のプロレス団体WWEなんかは「スポーツエンターテイメント」と自称してプロレスラーも選手とは言わず「スーパースター」と呼びますね。これはブランドメイキングもあるんだろうけど、あちらの興行に関する法律にも関わってるような気がします。ものすごい細かい法律でスポーツの試合としては禁止されていることも「スポーツエンターテイメント」としてのショーだからアリになるとか。
だからスポーツであることを放棄してますよね。
でもこれが新日本プロレスなんかだとアントニオ猪木が発言したキング・オブ・スポーツ(一般的にはキング・オブ・スポーツというと近代五種ですが)を称してますし、団体関係なく日本ではプロレスラーは選手と呼ばれます。レスラーたちはアスリートであることを自負しています。
ただ殊、日本でプロレスがスポーツかどうかって議論したら地獄絵図になるのも事実でwたぶん居酒屋2、3軒ハシゴしても終わらない話だと思います。最後めんどくさくなって、なんとなくな感じで面白きゃいいんだよ!で解散することになると思います。
ちなみにドラマ「映像研には手を出すな」第4話では一般人目線とプロレス愛好者目線の認識の違いが非常に面白い形で描かれていました。「お前らはアマチュアなんだからアマレスだろ?」とか。
アマレスとプロレスの違いとはなんていう問題もあるんですよね。
爆弾になることを承知で言うと「パフォーミングレスリング」とか名乗っていたら歴史は大きく変わっていたでしょうね。全部とは言いませんが、そういう団体もあるわけだし。ややこしいのはアマチュアがやるプロレスリングが存在するんですよね。
それか「アマチュアレスリング」を「グラウンドレスリング」にして貰えばいいと思うんですけどね。とはいえ、やっぱり根本的に違うものなので、やっぱり最初にプロレスリングとネーミングした人に責任があるような…。
しかし時は前にしか進まないので今更出来上がった縺れを解きに戻るのは不可能でございます。
プロレスリングは「プロレスはスポーツか」「アマチュアがやるプロレスとは」みたいな2つの枷をはめたまま進むしか今んとこなさそうです。
▪️スポーツとはなんぞや
ただ、もうひとつ気になるのは「スポーツ」の定義ですよね。
狭義では「肉体を使って競技する」ことでしょうか。これに依ってスポーツっぽいものを糾弾する人多い気がします。eスポーツはスポーツなのか?とか。
広義ではカードゲームなんかもマインドスポーツと呼ばれるらしいですね。
あとは競技に限らずレクリエーションとして体を使うものもスポーツであると。
これ言い出したらキリがないから海底でアイロンがけするのがエクストリームスポーツなんてのも通っちゃうようでw
逆に合気道なんかはスポーツと呼ばれたくないむきもあるらしいですね。
ここまでいくと音楽におけるロックとかメタルのジャンル定義にも似た泥沼感がありますw
ただプロスポーツの定義は簡単ですよね。たぶん。どうだろうか?
観衆からお金をとれば…は違うんですよね。アマチュアスポーツの祭典であるオリンピックなんかものっそい高価なチケットありますし。
では「競技者がそのスポーツを通して収入を得て生計を立てている」でしょうか。ただこれも実は曖昧なんですよね。プロでも生計が立たずアルバイトをしている人はいるし、アマチュアでも大会でプロより収入を得る例もありますし、これはもう競技によって違うようです。
うーん、プロとアマ、スポーツとは…何一つ答えが出てこないw
個人的にはいつもスポーツニュースで大きく取り上げられるフィギュアスケートを見てると嫉妬を覚えてモンヤリしますw
最近は体育でストリートダンスをやるなんて話も聞きますが、バレエやダンスはスポーツなのか芸術なのか、という議論もあるじゃないですか。
なのにフィギュアスケートは日本人が活躍してるのもあってか、なんか議論の余地も与えない感じで堂々と花形スポーツとして大手を振ってるんですよ。いやもうただの嫉妬なのでフィギュアスケートは別に悪くないですよ。
ただ「身体表現の技術を競うスポーツ」という定義であれば実はプロレスも採点競技にしてしまうことだってできるんでは?
▪️プロレスは勝負なのか
ここまで来るとプロレス談義における大きな地雷のひとつを何度も何度も踏みつけてる自覚はありますw
プロレスは最終的にはカウントアウトかギブアップで勝敗を決する試合形式なんですよね。あくまで勝敗ありきなわけです。
「よくやったね、二人とも。ところでこの試合の得点は〜」なんてやんないわけです。
でも!
年間ベストバウトとかあるわけで、実際、試合の良い悪いの評点は付けられるんですよね。これに関しては先述のWWEだって星で採点されてます。それはアメリカのプロレス業界誌によるんですが、第三者が試合に評点を付けるということはもう事実として存在するんですよ!ドン!
するってぇとやっぱりプロレスの試合は対戦者による勝負じゃないってことかい?ってまた地雷を踏みつけるわけですが…。
まあこれから書くことはできるだけ関わった当事者に知られたくないことですが
「でもあれって結果決まってたんですよね」って類稀なる堂々とした地雷踏みを本物のプロレスラーの前でやってのけた者がおったんです。その場にいた他の人たちはルフィに雷効かなかった時のエネルみたいな顔になりましたけどね、もちろん。
でも、多分はらわた煮えくり返ってたであろうそのレスラーの、その間抜けに対する淡々とした語りがぞくりとするほどカッコよかったのですが。
「じゃあ、お前何か?俺たちは負けるのが分かってるのにわざわざ練習して体鍛えてあんな痛い思いしてるのか?
確かに避けられるのにワザと食らってるよ。でも、プロレスっていうのは他の格闘技と違うんだよ。相手の技を受け切って、効かねぇぞ!って、いや効いてるし痛いんだけど、それを超えて勝つんだよ。だから俺たちは超人なんだよ」と
ちょっと盛ったりしてるかもしんないけど、まあこんな感じだったような気がしてます。たぶん。
正直、俺ボクシングとかある時期つまんなくなって見なくなった頃あったんですけど、避けるのはともかくクリンチばっかりして時間稼いでポイントで勝つとか見るのが多い時期あったんですね。
それだって勝つための戦略と言われればルール上アリなんだから仕方ないんですけど、テレビで見てるならともかく会場にいる人は安くないチケット買って時間割いて観戦にいってるわけで、
金払ってそんなセコイもんみたいかって。
サッカーでのロスタイムのボール回しや過剰な痛がりとか。野球の敬遠とか球数稼ぎとか。
やってる側は勝つために必死かもしんないけど、そんなルールブックの隅っこつつくものを見るために観客は金払ってないんですよね。
こここそがプロかアマチュアかの大きな分水嶺じゃないだろうか…。
いやアマチュアがセコイってわけではなくて、アマチュアなら別にやってても文句は当事者間だけで済むと思うんですよ。
プロスポーツはほぼ漏れなく不特定多数が有料で観戦することを前提にしてると思うんですよ。それを前提にして考えると正直「プロ失格」ってなるスポーツの試合多いと思います。
ところがプロレスには「相手のいいところを見せる受けの美学」というものが存在します。バンプ(受け身)の上手い選手は負けてばっかりでも人気あるんですよ。見てて面白いんだもん。自分のダメージを最小限にしながら相手を魅せる、というのは格闘技としては異常ですけど、そこにおける身体能力と技術は非常に高い。
ほぼ全ての格闘技において大事なことは「いかに受けずに当てるか」だと思います。それを真っ向から否定してるのがプロレスなんですね。
バンプができて2流、受け切って勝つのが1流なんだそうで、一番強いやつは相手のいい技全部受けてみせて、その上で勝つんですよ。だから観終わった後は両者に惜しみない拍手が贈られます。
誰の言葉か忘れてしまったんですが「プロレスはどっちが強いかじゃなくて、どっちが凄いかを競うんだ」と。
勝ち負けじゃないんですよね。
なんなら負けた側が大きな拍手を受けることだってあるんです。
つまり、試合の勝敗に関係なく最後に判定をしてるのは我々観客なんですよ。
プロレスの観客はやらせじゃなく本物の熱狂で選手たちに応えてその拍手を送っています。
雑誌が評点を付けてる、と書きましたが、その前にファンですよね。ファンのダイレクトな評価が選手たちの目の前で拍手や歓声として現れるわけで。
例えばじゃあ、プロレスが採点競技になっちゃったらそれはそれで「納得いかねぇ!」ってことも多発すると思います。今ある採点競技でそういうことが起きるように。
ただ、金とって見せてる限りは、目の前の客が第一になるのがプロじゃないかと。
▪️プロレスは人生
台本ありきでやってる論争とかを揶揄する時に「プロレス」って言葉を使う人がいたり、最近もツイッターで炎上してたけど、とにかく「ヤラセ」の代名詞として「プロレス」使うアホな人多いんですよね。
プロレスにはある種のお約束もあります。ただ、それを金を取って見せる高いレベルでやるためにプロレスラーは過酷なトレーニングを経て、なお一歩間違えば命を落とすようなことを見せているわけです。
怪我する奴は二流、怪我させる奴は三流だなんて言われる世界でもあるんです。怪我させたら相手の生計も危うくなるわけですし。
リング上にいる人たちはお互いの命と人生を預けあいながら、競わなければならない。
そのためにどれだけの肉体と技術の鍛錬が必要だろうか。彼らのトレーニング風景はそれほどオープンにはされないですが、厳しい審査を通ってようやく入団した若手が逃げ出すくらいのものではあるようです。
各地を巡業しながら、魅せるための肉体を維持することもしながら、常にハイレベルな試合を見せられるように練習し、健康管理もする。相当厳しいと思います。
もう答えは出たでしょう。
プロレスとは真剣勝負であり、エンターテイメントであり、肉体芸術であり、格闘技なんです。
これをキング・オブ・スポーツと言わずしてどうするのかと。
紛れもなくプロスポーツなんです(あぁやっと答えでた)。
テレビで観てもいいけど、やっぱり会場で生で観たい!って思わせるほど価値があるものをプロフェッショナルが鍛えに鍛えた体張って命かけて見せる戦いなんですから。
もはやスポーツ通り越して人生です。
ところでなぜ試合場のことを「リング」というんでしょうか?
当たり前のように呼んでいてふと気になって調べたんですが、元々ローマの闘技場が円形であったように相撲もそうですが格闘技の試合場は円形だったんですね。そこでボクシングの試合場のこともリングと呼ばれていたんですが、ロープを張るようになると今度は円形に張るのが難しいから四角になったんだそうな。
プロレスというのはこのリングの中で格闘技、スポーツ、肉体芸術、エンターテイメントショーというものをグルグルと巡る円環のようなもので、あの名作ロード・オブ・ザ・リングのようにリング上の王であり、王としての責務、あるいは呪いのようなものを背負っていく定めにあるんでしょう。
もはやスポーツ通り越して人生通り越して伝説です。
▪️蛇足:ヒール道とは
通り越しちゃった。
ちゃぶ台をひっくり返す話をするとプロレスではベビー(善玉)とヒール(悪役)という定義がありまして、これが全世界共通だったりするんですが。
ヒールは反則使って勝つし、技をすかしたりもするし、セコイ手でも卑怯な手でもなんでも使います。試合を台無しにして観客がドン引きしたりブーイングしてもせせら笑って花道を帰ります。
プロレスには台本があるんだろ?wって底意地の悪いことを言うよくネットなんかでみかけますが、貴様底なしのバカかと問いたいなといつも思うんだけど「お前はアンパンマンがアンパンチで勝つのを観てる子供に何て言うんだ?」と。仮面ライダーもウルトラマンも水戸黄門も必ず最後はお決まりの技(印ろうは技じゃない)で勝つんですよ。
でも、プロレスではとんでもない小悪党がこの上なくセコイことして勝っちゃうこともあるんですよ。結果知らないんだからびっくりですよ。台本があったとしてそれがなんなん?っていう。
しかもボクシングや相撲でも、良い試合なら結果分かって見ても面白いんだからそこ比べる意味ないんですね。
そして、そんなことをしちゃうヒールレスラーだって実はやる時にはやって見せて「やればできんじゃん!」って手のひら返しをさせながら、またセコイことしたりします。これこそが、プロフェッショナルなんですよ。
ヒールっていうのはベビーに比べてやれることが多いんですよね。だから、めっちゃ嫌われる役ではあるもののヒールであることを好む選手、ヒールを応援するファンもいるわけで。
なんというかコレもアリ!って思わせちゃうプロレスの懐の深さ、自己表現の自由さっていうのがいいんですよね。
これ書いてて本当にプロレス早く観たいなって思うんですが、それよりもまだプロレス観たことない人に是非、生で観戦して欲しい!
サポート頂けたら…どうしよっかなぁ〜。答えはもちろん、イヤァオ!