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コロナ禍におけるひとり親の就労・⽣活調査物価⾼騰による影響〜「クリスマス、年末年始準備ができない」7割〜(2022年11⽉版)』を発表しました

シングルマザー支援に取り組むしんぐるまざあず・ふぉーらむおよび研究者、専門家らによるひとり親調査プロジェクトチームは、およそ3年にわたる新型コロナウイルスの影響と11月からの感染再拡大、エネルギーおよび物価の高騰を受け、「コロナ禍におけるひとり親の就労・⽣活調査 物価⾼騰による影響」を2022年11月に実施し、その調査結果をレポート『コロナ禍におけるひとり親の就労・⽣活調査物価⾼騰による影響〜「クリスマス、年末年始準備ができない」7割〜(2022年11⽉版)』」として発表しました。

本調査はしんぐるまざあず・ふぉーらむの食品支援を受けている人たちを対象としており、就労している人が82.1%と高い割合を示しているにもかかわらず、全体の平均月収は12.0万円(税込)、非正規雇用の8割近くを占めるパート・アルバイトの平均月収は9.9万円(税込)と生活は非常に苦しい状況がうかがえます。

10月の平均支出額は、家賃54,375円、電気9,940円、ガス6,570円、水道6,237円、食費37,348円で、平均就労収入から平均支出を差し引くと手元に残る金額は6千円でした。

家賃、電気、ガス、水道のいずれかで滞納があったと回答した人は24.6%。また、2022年4月から10月末にかけて、約4割が家計をまかなうために借入をしたと回答しました。

給付金5万円の使い道は、生活や借金の返済などが74.3%、「子どもの学用品や子どもの費用」など購入にあてると回答したのは18.0%でした。

本調査の対象者は食糧支援を受けているということもあり、非常に厳しい状況に置かれていることが想定されますが、2022年4月から10月末にかけての我慢の体験について尋ねた質問では「新しい洋服・靴が買えなかった」が最も多く72.5%、続いて「問題集や参考書を買えなかった」54.1%、「新しい⽂具や学⽤品を買えなかった」42.5%、「お誕⽣⽇を祝えなかった」31.2%、「部活動関連の費⽤を⽀払えなかった」25.3%、「修学旅⾏に⾏けなかった」7.2%(45⼈)でした。子どもたちへの中長期的な影響が懸念されます。

クリスマスと年末年始について「クリスマスに何かをする費用を家計から捻出できそうですか」、「年末年始に何かをする費用を家計から捻出できそうですか​​」の質問には、どちらもできないと回答したのは、約7割(68.3%)でした。クリスマスに何か「できない」と答えたのは70.8%、年末年始に何か「できない」と答えたのは77.0%でした。

<発表へのコメント>
JPモルガン証券株式会社のエコノミスト、米良有加氏は、物価の特徴や今後の見通しや消費への影響について発言しました。日本の消費者物価については「40年ぶりの高い水準」になっており、特に2021年からは「エネルギー」や「食品」といった生活に直結した物価の上昇が物価上昇を押し上げています。2021年以降のガソリンや電気代の高騰により、エネルギー価格は前年比20%近く増加しており、家計を直撃している状況がうかがえます。また、食品に関しても前年比7%近い伸びとなっており、これまでにない上昇率となっていることから、生活必需品の価格上昇は、特に所得がそこまで高くない層に非常に大きな影響を及ぼしています。

今後については、エネルギー価格の上昇は減速していくものの、物価の上昇はこれまで以上の水準で続いていくという見通しが示されました。それに加えて、低所得者世帯は特に「食品」や「エネルギー」支出が占める割合が高く、より家計を圧迫しているといえます。2022年10月の高所得者世帯における実質的な消費は6%を超える伸びとなっています。その一方、低所得者世帯については消費額は約4%減少しており、低所得者世帯と高所得者世帯の間で直面する物価の格差が広がっていることが指摘されました。

発表へのコメント立教大学コミュニティ福祉学部教授の湯澤直美氏
立教大学コミュニティ福祉学部教授の湯澤直美氏は、新型コロナの持続的影響を示す当事者の声として、「失業や持病の悪化、収入減」や「物価上昇による苦しい状況」を挙げる記述を取り上げました。元々経済的に厳しい状況に置かれていたひとり親世帯がコロナ禍によって持続的な影響を受け、児童扶養手当が支給されない12月においてはさらに苦しい現状に置かれています。住民税非課税世帯であれば以下の支援が適応されますが、2-3万円という収入の僅かな差によって支援をうけられなくなってる課税世帯もあります。
・国民健康保険料の軽減
・介護保険料の軽減
・高等教育の就学支援制度
・0~2歳児の保育料無償
・NHKの受信料免除
・高額療養費軽減

低所得のひとり親世帯にとって児童扶養手当は命綱となっています。しかし、その手当も子ども2人目以降の加算が非常に少ないことや高校生や大学への進学以降の支援は手薄になっている現状が指摘されました。世帯収入によって進学を諦めるなど、教育への影響はなんとしても避けなくてはならず、物価上昇下においてはより継続的かつ根本的な制度改善が求められています。

12月22日にオンライン記者発表した動画を2022年12月27日から2023年1月3日まで限定公開をいたします。

https://youtu.be/uYvTIyRFS0I


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