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年末読書で「死」に対する価値観を磨く

病院の存在ってなんだろう。
人は何故病院にかかるのだろうか?


病気を治すため、痛みを緩和するため、自分の病の原因を探るため。
一般的には不安や苦痛を解放したいから罹ることが多い。
でも、歳を重ねる毎に待合室で聞こえてくる会話が現実を物語る。


「あれ、○○さん最近見ないねぇ」
「そうねぇ、どこか具合が悪いのかしら」


病院って具合が悪いから行くのではないのか?
具合が悪いから最近顔を見ない。
高齢者の「具合」の定義が僕たちと少し違う気がするんです。


入院するかしないか。
本当に具合が悪くなったら外来で見かけなくなる。
つまり、外来で見かけているうちは元気な証拠なんだろう。高齢者にとって外来の待合室で顔を見かけることはお互いの生存確認なのかもしれない。


病院自体の立ち位置や定義自体が、歳を重ねるに従い変わっていく事実を感じています。


患者側としても病院に対する概念が少しずつ変化するのですから、医療に携わる方々では一体どうなのか。医師側に立ち赤裸々と楽しめる物語があります。


『最後の医者は雨上がりの空に君を願う(上下)』
二宮敦人さんの著書だ。



病院を舞台にしたヒューマンドラマですが、読んでいる側も心が揺さぶられます。読み進めるに従い、えっ、そんなところで繋がっているの、なんて驚くシーンがあったり、展開が早いので読み休めることが難しいです。


全く考え方の異なるふたりの医師。
延命を願い、出来ることは全て全力で行う医師。一方、不治の病であれば何をやっても「死」からは逃れられない。そうであれば、終止符が打たれるその時まで、患者の時間を最大化したほうが良いと促す医師。


「死」との向き合い方の相違。
「死」までの時間を細く延ばすのか、運命に任せ太く有意義にするのか。
あなたならどちらを選びますか?


僕は医療業界に30年近く浸かっています。
少しでも家族といる時間を長くするために積極的に化学療法を行おうとする医師もいれば、どうせ治らないのだから先ずは自分のしたいこと、後悔や思い残すことがないように、強い治療は避け、最低限の治療しかしない医師もいることを知っています。


故に、本書のストーリーはあながちしっくりするのです。
どちらが正しいということではなく、どちらが自分に合っているのかと言うこと。ただ、実際にはこの中間的な医師の存在もあります。


昔、突然ステージ4のがんが見つかったという患者さんがいました。
趣味は家族旅行とゴルフ。仮に強い治療を開始すると、大好きな趣味はその時点で終了しなければなりません。


5年生存率が10%前後だと説明した上で、先ずは自分の趣味を優先した方が良いと推奨し、ポートフリーの治療を開始。ポートとは、完全に埋め込み可能な静脈アクセスデバイスのこと。つまり、抗がん剤を投与する時のために体内に入口を埋め込んでおくことです。港(ポート)みたいですね。


ポートフリー、つまり体内にポートを埋め込まないで済む治療法を選択して、趣味のゴルフや家族旅行ができるようにされたのです。


悔いが残らないように「死」への準備が整った時、いよいよポートの挿入となります。少しでも家族との時間を築くために、強めの治療をここからはじめるのです。


「先生と製薬会社の方のお陰でゴルフを楽しむ時間を作ってあげることができましたし、最後に世界1周旅行も家族で楽しめました」


ご主人の臨終に立ち会った時の奥様の言葉だそうです。
医師からこの言葉を告げられたとき、人目をはばからず号泣したことを昨日のように思い出します。


そんな昔の記憶を思い出させてくれた素敵な作品がこれなんです。
『最後の医者は雨上がりの空に君を願う(上下)』
冬休みの隙間時間に是非手に取ってみては如何でしょうか?
ちなみに、Kindle Unlimitedで無料です。



最後まで読み進めて頂きありがとうございました。
今年もあと僅かになりました。読書しながら素敵な時を満喫しましょう。🎍


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