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「いのちの停車場」から学ぶ命の重さ

いつもの様にKindleを物色していると、興味深いタイトルに出会った。



『いのちの停車場』


本業で製薬会社に勤めていることもあり、医療に関する話題には日頃から敏感になっている。「いのちの停車場」と言うタイトルに痛く興味を惹かれ、迷わずダウンロードする。Kindle Unlimitedで無料と来ているから嬉しい。


作者は「南 杏子」さん。
大学を卒業後、一旦は編集社に勤務するが、結婚出産を経て33歳で医学部へ学士編入を果たしている切れ者。その異色の経歴は、作家としても開花し、非凡な文章力で見事に医療現場の臨場感を描き上げています。彼女のデビュー作である『サイレント・ブレス』でも実証済みですが、本作品も実にユニークな作品です。



言うまでもなく、医師を志す方は「人を病から救う」思いが原点です。その究極的な形は一体どんなものなのだろうか。そこに着目して取り組んできた南 杏子さんと言う作家の覚悟は称賛に値します。


この作品は2021年5月、つまり先月に映画化されているらしく、世情に疎い僕は一層興味を惹かれてしまいました。主役の白石咲和子を演じるのは、吉永小百合さん、意外にも医師役を演じるのは本作品が初めてと言う。その他、松坂桃李さん、広瀬すずさんらも共演されているらしい。


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東京の城北医科大学救命救急センターを、やんごとなき理由で辞して故郷の金沢へ戻ることになる。その後、幼馴染が開業するクリニックを手伝い、在宅医療としての第二の人生をスタートします。


救命救急と在宅医療、どちらも命を守る医療には変わりはないのですが、そこには大きなギャップが存在します。僕も抗がん剤を扱う傍で、懸命に命のやり取りをする医師達を見てきました。医療現場で日々研鑽を積んでいる医師はとてもカッコよく尊敬しています。


しかし、本書を読み進める中で「医療」に対する考え方に大きな葛藤が生じました。「救命医療」と「終末期医療」の存在です。医療と言うものは、お母さんのお腹の中に宿ったその日から、臨終を経て棺へ入るまで必ずお世話になります。そこに命に対する「尊厳」が加わり、周囲の人々を巻き込んで、より複雑になって参ります。


「何がなんでも命を救う」と言うスタンスから、高齢化して人生の終わりに近づき、食欲も減り、体重も減り、身体も思うように動かせなくなる。この様な方々を心地よく支えるも医療。終末期医療は既存の急性期医療の延長線ではなく、全く新しいジャンルなのだと気づかされます。


在宅医療、終末期医療と聞くと多くは高齢の患者さんを想像します。殆どの場合、老衰、がんや脳卒中と戦った後の緩和医療を意味する様ですが、中には稀に子供もいる様です。


本書の中には小児がんと闘病し、抗がん剤が不応だった6歳の子供が描かれています。医師として、医療従事者として、また、人の親としての視点で気持ちが錯綜し混乱してしまいます。しかし、患者である子供が願う素直な気持ちがグッと心に刺さり、本書を読みながらベッドの上で嗚咽してしまいました。


「癌の子でごめんね」
「萌は萌だから...萌ね、人魚になっても、パパとママの子になりたい」


最後に記した自分への手紙


うまれかわった萌ちゃんへ
おげんきですか? わたしのぶんまで、いっぱい生きてください。
わたしより


『いのちの停車場』


実に素敵なタイトルです。
小さくてか弱いモノを大切に育んで生きて行こう!
そんな気持ちにさせてくれる傑作だと思います。🌱

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最後まで読み進めて頂き誠にありがとうございました。
活気溢れ安心して外出できる日に早く戻って欲しいですね。🌱


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