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キングオブコント2022 《コント中の暗転はどれだけ有効なのか?》

先日はKOC、盛り上がりましたね!!!!!!
個人的な収穫は、や団を知ったこと、最高の人間は悔しいけど最高だったこと、そして飯塚さんが相変わらずかっこよかったことです。

でも今回はそれをさて置き、今年のKOCを照明という観点に絞って一つ記事を書こうと思いました。
ニッポンの社長と、最高の人間。『暗転』と言葉がキーワードにもなった今回の大会ですが、わたしは心の中で叫びました。

「いや!ハナコだって思いっきり暗転使って優勝してるぞ!!!!!!!」と。

わたし個人的には、暗転大好きですし、どちらも素敵な暗転の使いかたをしていたなと感じたのですが、なぜ暗転が今回は好ましくないと評価のされかたをしたのか。自分なりに分析したいと思います。


◎ コントにおける暗転とは何か。

まず、コント中の暗転にも色々な種類があると思っていて、今回の『ニッポンの社長』と『最高の人間』では、同じ暗転という機能を使ってはいますが、得られる効果には若干の違いがあると思っています。

それは、過去にこのような記事を書いたので、お時間ある方は暗転の項目だけでもご覧いただければと思うのですが、今回はより具体的に2組の暗転の使い方を考察して、暗転が本当に有効なものであるかどうかを検証していきたいと思います。

◎ 『最高の人間』 と 『ハナコ』 の暗転

暗転を入れることによって操れるものに「時間」と「場所」という概念があります。
最高の人間は、2人の昔話といいますか、いわゆる回想シーンに移るために暗転を利用しました。これをもっと理屈っぽく言うと、「時間」と「場所」を移動させるための手段として暗転を使ったということです。
わたしはハナコの決勝ネタの暗転を『まさよし暗転』と呼んでいるのですが、これもまさに回想シーンで、最高の人間と手法も得られる効果も全く同じ意味を持った暗転だと思っています。
しかも、音楽を使っているという部分でも一緒。

ハナコは結果優勝したので、この暗転が有効なものだったと結論づけても問題ないと思うのですが、なぜ同じ用途の暗転でも感じ方が違うのか…。

審査員の皆さんもおっしゃっていましたが、暗転を挟むと「パターンの先読み」ができてしまいます。ハナコは「秋山が岡部を探している状況の中での回想シーン」で、明転後も岡部を探す描写が描かれていることはわかってしまうし、最高の人間も、昔を懐かしむフリがあったので、観客にはナンシーの昔話が始まることはわかってしまっています。

なので、問題は『既にわかりきった状況設定の中でどれだけ笑いが取れるか』という部分になってきますよね。
ハナコの場合、「探す」ことに関して、純粋に探すわけではなく、その探す中での動作や行動に笑いがあり、菊田と間違えるという突飛な強いボケも準備しています。
暗転を利用して見せたかったのは、おそらくこの明転後の探しているという行為で、暗転の期待をそのまま笑いに昇華できているように思います。

対して最高の人間は、明転後にめちゃくちゃ強いボケがあるわけではなかったんですよね。むしろ明転後は岡野さんとナンシーの穏やかとも思われるような、観客が想像できる範囲の昔話。
この、暗転の期待が上手くショートコントっぽさに乗り切れていなかったところが違いなのかなと推測します。
では最高の人間の暗転は無駄かと言われるとそうではなくて、あの暗転は、回想で2人のキャラクターに愛着がつき始めたのに、最後ボタンを躊躇なく押して全てをカットアウトさせたところに上手く効いていると思うんですよ。
あの躊躇なくボタンを押す姿が笑えるのは、あの回想シーンがあったからで…、となると、暗転はやはりどうしても必須になってくるのです。

簡単にいうと、「暗転」と「その暗転で得られる笑い」が近いか遠いかの差で、ハナコは近かったし、最高の人間は遠かった。
もっと言い方を変えると、ハナコはショートコントっぽさが存分に機能する暗転で、最高の人間はもっと演劇的に機能する暗転だったのではないかと思ったのです。

◎ 『ニッポンの社長』 と 『モンスターエンジン』 の暗転

ニッポンの社長の暗転は、先ほどの2組の暗転とは別機能で動いていると思います。まずは、「場所」と「時間」の移動についてですが、前の2組は暗転を利用し過去に戻っていましたが、ニッポンの社長は過去に戻っているわけではなく、未来に進んでいます。
そして大きく違うのが暗転が起こるスパンです。最高の人間は後半に暗転が一つのアクセントとして利用されていましたが、ニッポンの社長は、全編に暗転が散りばめられており、その手法自体がネタのメインになっています。

でも「パターンの先読み」というキーワードは共通していて、その次はどんな展開になるのか、観客は先回りしてしまい、ある程度わかりきった状況設定の中でどれだけ笑いが取れるかが問題、という部分も共通しています。

ここで例に出したいのは、2011年のモンスターエンジンのネタ。
(動画がないので、各々調べてください。。。。。)

このコントはパターンの先読みも何も、冒頭から「YouTube見よ〜、何これ?ミスターメタリック・登場シーン集?」との説明セリフがあり、何度も登場シーンを繰り返すという、パターンの繰り返しが行われています。(その繰り返しのリセットの役割に暗転が利用されているのです。)
その中で、登場の仕方を変えてみたり、セリフを変えてみたり、パターンを崩すことによって笑いが生み出されています
ニッポンの社長でいうと、あのガーンの顔に至るまでの理由だったりテンポだったりが少しずつ崩されていき、笑いが起こります。
これは、その中身がとても優秀な笑いの崩し方だとしても、この『パターンを崩して笑いを取る』という手法自体が既に審査員に悟られてしまう点が難点です。「暗転ネタはショーレース向きではない」とぽろっと松本さんがこぼしていたのですが、その理由はここにあると思っていて、ニッポンの社長が厳しい評価になったのは、これだと推測します。

◎ 結局、暗転は有効なのか?

有効だと思います。
記事を書きながら、やっぱり、暗転を使うからには暗転にしないといけない理由があり、今回の2組ともきっちりとした理由で暗転を使い、その効果も抜群に発揮されているネタだと思いました。
実は、暗転自体でいうと、去年の空気階段の火事のネタなんかも2回暗転が使われていますし、ただ単に「暗転を使うのはダメだ!」とその言葉だけ先走りすると、逆に可能性を狭めることになってしまいそうで怖いです。
今回は偶然に順番が隣の2組が、たまたま審査員のコメントで暗転を指摘されたことによってピックアップされただけであり、純粋にあのネタについて語るのに考えるべきことは、暗転なんかよりも、もっと他の要素がたくさんあることは言わずもがなだと思います。

ただやはり、5分という制約がある時間の中で、いかに審査員を新鮮な気持ちで面白いと思ってもらえるかということを考えると、手法は新しいに越したことはないし、そう考えたときに色々それを超える要素が必要になってくるのかな?難しいな〜というような感じです。

お笑いもどんどん進化していて、新しいシステムが無限に生まれていたり、そもそも笑う対象までもが時代によって変化していっている中、来年のKOCはどうなるのか。照明に頼らず勝負するコント師もかっこいいですし、照明を巧みに駆使したコント師もかっこいいです。どちらも面白ければかっこいいです。

ニッポンの社長も最高の人間も、どちらも個人的には面白い大好きになったネタだったので、結果論としては残念ですが、素敵なネタをありがとうと言いたいです。。。。。。
これからもコントいっぱい見ます!!!!笑
そして引き続き暗転についても研究していきたいと思います!笑

長々と記事を読んでくださった皆様もありがとうございました!

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