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キングオブコントの歴史を《照明》で振り返る。 〜 空気階段のコント照明に感動した話 〜

みなさま。いや〜、今年のM-1も最高でしたね。
錦鯉、おめでとうございます!!!!!!!!!!もらい泣きしてしまいました…。やはり芸人さんってめちゃくちゃカッコいいですよね。

M-1も盛り上がっているところですが、今回の記事は時を戻して、今年のキングオブコント。こちらも、もうやばかったですよね!!!
空気階段もおめでとうございました!
ものすごく今更にはなってしまうのですが、今年中にキングオブコントについて1つ記事を書いておこうと思い筆をとっています。

早速身の上話になり恐縮ですが、私がお笑いに本格的に興味を持ったのは最近の話で、昨年の東京03の単独ライブに足を運んだことがきっかけでした。
なので、今までは東京03周辺の笑いしか知らず(ラーメンズ・バナナマン・バカリズムなどの関東のコント芸人)、キングオブコントにもそこまで興味がなかったのです。がしかし。ニューヨークにハマったことをきっかけに見るお笑いの幅もぐんと広がり、今回のキングオブコントはテレビの前で正座して食い入るように見るまでになっていました。

なので、笑いの知識は深くはないのですが、私なりにキングオブコントで感動したところを発散しておきたい!!と思ったのが今回です。タイトルからお分かりだと思いますが、私がこの記事で注目したいのは「照明」です。

自分が舞台照明を仕事にしていることもあり、どうもコントを見ると照明という部分に目がいってしまいます。この切り口でコントを見る人はなかなかいないだろうなと思い、せっかくなのでこれまでのキングオブコントで各コント師が照明をどう扱ってきたのかを分析しながら、今大会の照明についても考えていけたらなと思っています。最終的には照明がコントに与える役割を自分なりに考察していくのがゴールです。少々長い記事になってしまったのですが、もしよろしければどうぞ最後まで、のんびりお付き合いくだされば嬉しいです。

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早速ですが、まず皆さんが普通に想像されるキングオブコントの照明というのは以下のようなものですよね。

スクリーンショット 2021-10-03 21.33.44

フラットに明るく白い光です。(照明に詳しい方から見ると、白と言ってしまうのは語弊があるし違和感だと思うのですが、わかりやすく伝えるために白と表現します。今後もできるだけ簡単に照明のことを伝えたいため、詳しい方から見ると説明に違和感があるところがあるかと思いますがご了承ください。また、間違えがあったらコメントまでお願いいたします。)
また最初から最後までこの照明で、ネタの途中で変化もなく進むのがベーシックだと思います。
ただ、白くフラットな光以外を利用したり、コントの中で照明変化をつけるコント師の方々がたくさんいますよね。これからはそんなネタをピックアップし、どんな光がつかわれてきたのか、順に解説させていただきたいと思います。

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【 A 】 全体に寒色・暖色系の明かり

メガトンパンチマンcafe

まずは、全体が寒色・暖色系の明かりです。
通常は白い光ですが、全体の明かりが色味がかったコントがあります。例に挙げたのは今年のファイナルステージ、空気階段。メガトンパンチマンカフェ、面白かったですよね!
コントのシュチュエーションには様々な場所が利用されますが、まず寒色系の明かりは今回のメガトンパンチマンカフェのような特殊な設定や、あとは少し緊迫した状況・密閉した状況に使用されることが多いですよね。これは昨年のジャルジャルの強盗犯のネタが良い例だと思います。

ジャルジャル_
シソンヌブルー

あと、2014年のシソンヌのタクシーのネタは、密閉した場所だということはもちろんですが、その他にも、時間経過や感情を上手くのせることができるという効果も発揮されているという点で特筆しておきたいところです。夜ということはセリフからもわかりますが、それを照明でもうまく表現されていると思います。かつ、じろうさんの哀愁や色気などもパープルが後押ししているんですよね。普段の演劇やミュージカルなどでも、哀愁や色気などを表現する時に使われる色は大体パープルです。

2019年かが屋の喫茶店のネタもそうですね。感情の方向性はシソンヌと全く違うコントですが、どちらも夜という時間とその感情がうまく照明にマッチしているネタだと思います。

かがや_BLUE

続いては暖色系の明かり。
2017年に優勝した際のかまいたちの告白のネタです。少し暖かいオレンジっぽい明かりは、専門用語で"アンバー"と呼んだりします。

かまいたち_夕暮れ

これは設定が夕暮れ時なのでしょう。この夕暮れについてですが、先ほどのかが屋のネタは「そろそろお店が閉店してしまう」という点で夜だという設定が必然ですが、このかまいたちのネタはセリフからも時間を夕暮れ時に設定する必然性が読み取れないんですよね。例えば学校の昼休みでも、ストーリー的には問題がないのです。
だからこそ、かまいたちが「夕暮れ時」にこだわり、照明がこんなにもアンバーなのには強いこだわりを感じます。セットや照明などを過不足にすればするほど、観客の中でそれを補完するために各々に解釈の余地があって、それが有効なネタもたくさんあるのですが、かまいたちは設定をより具体的にすることによって面白さを倍増させることに成功しているように思います。やっぱり赤っぽい色が乗ると、通常の肌の色味ではなくなるわけですから、奇人っぽさといいますか、狂気的な要素がのっかるんですよね。山内さんの異色な感じがビシビシ伝わってくる照明です。

そして、これは語らずにはいられません。今年度の空気階段のコント「火事」。

空気階段1
空気階段2

これも赤みのかかった照明ですね。やはり火事ということを簡単に表現するには照明を赤くするというのが手っ取り早いのでしょうか。今までは夜や夕暮れなど、時間によって視覚的にイメージする色で構成されるコントを見てきましたが、これは時間設定なんて特に何でもよくて『火事=赤』というイメージ超直結型の照明です。「このコントに色をつけてください」というと100人中98人がこの全体の赤い照明にすると思います。わかりやすい照明ですよね。それと、先ほどの山内さんで述べた「狂気的な要素」というのはこの空気階段のネタでも共通して言える部分です。やっぱり突飛なキャラクーにアンバーの照明は相性がいいんですよね。

それと、この空気階段のコントの照明、前半と後半で色味の濃さが違うこと、皆さんお気づきでしょうか?
上の2枚の写真を見比べていただければ簡単にわかると思うのですが、下の階に移動した時に火の気が増していることを忠実に表現しているんですよね。台詞としても、しっかりと『火の勢いが増してる...』という言葉があるので、もう一度コントを見直しながら照明にも注目していただきたいのですが、ここまでこだわっているのは流石だなと感動していました…。

さて。コント全体色づいたバージョンはここまでです。
まだまだ行きますよ!!

【 B 】きっかけで全体が変わる明かり

これまで挙げてきたのは基本的にそのコントの最初から最後まで、終始色づいたコントでしたが、これからは何かしらのきっかけで照明が変化するコントを紹介しようと思います。最初はその中でも「音楽」をきっかけにして変化するものを紹介します。

まず最初の例は2019年どぶろっくの優勝ネタ。これは音楽のメロディーラインの切り替わりで照明も変化しています。分かりやすいきっかけでの分かりやすい変化なので、シンプルに照明が笑いのきっかけになり得ますよね。「照明変化」と聞いて一番ベタなパターンかもしれません。
ちなみに、このネタのシュチュエーションは湖で、変化する色もブルー。先程あげた例にならうと「イメージ直結型」ですね。
続いても、イメージ直結型のネタをもうひとつ。

2014年バンビーノのダンソンのネタ。狩猟が成功した時に音楽が鳴り、それに合わせて明かりが変化します。ちなみに、この照明変化は明かりの色が変化するわけではなくて、白を引きずったまま明るさのレベル(ゲージ)がUPするんですよね。このゲージだけ魅せる明かりはおそらくこのコントだけだったと思います。( ※ 以下、少し専門的な補足:ザ・ギースの2015年、ビフォーアフターのネタも同じような分類ではあるのですが、あれは同じ当たりでゲージ処理というよりかは、別の当たりがあって...というような感じなので別カウントにしました。 )
わたしはかなり好きな照明変化です。

続いては、音楽以外の場合を見ていきたいと思うのですが、まずは今年の蛙亭。
中野さんが能力を発動するSE(効果音)をきっかけに照明変化が起こります。これは能力を発揮する瞬間のみ色づいて、すぐに元の照明に戻るので、照明効果のインパクトとしては大きな影響を与える使い方です。だからこそ使い方を間違えると照明にネタが邪魔されるようなことになり得る可能性もありますが、さすが蛙亭ですよね。中野さんがかっこよく見えました。
そして黄色という色が独特でグッと惹かれます。これだけステージ全体が黄色になるコントも蛙亭が初めてですね。もちろん最初にスライムを吐き出すところも衝撃ですが、それと同じくらい、ここで黄色の照明変化は蛙亭のセンスが光っているところだと勝手に思っています。

その他は2015年の巨匠の寿司屋のネタ。これもキャラクターの仕掛けが驚愕なネタですね。蛙亭みたいな音はないものの、電気を消すという動作のみがきっかけとなり照明変化が起こります。普通の生活でみる現実の光では、電気が消えたあとはこんなにブルーにはならなくて、コントならでは(もっと大きくいうと演劇など含め舞台芸術ならでは)な照明のあり方ですよね。これは照明に限った話ではないのですが、「現実をリアルに表現する必要がない」というのはコントを含む舞台芸術における最も面白い部分だと思っています。
それにしてもちょっとブルーが濃すぎるかな?とは思ったのですが、岡野さんが最高に面白いので問題なしです。この辺のブルーのさじ加減などは、芸人さんの指示なのでしょうか?照明さんの好みなのでしょうか?このあたりの塩梅が気になるところなので、テレビで勤めておられる照明さんで、かつお笑いのネタ番組を扱っている人がいましたらぜひこの辺のお話しお伺いしたいです...(切実)。

以上、きっかけで変化が起こる照明は、「音楽」「効果音」「演者の動作」の3つのパターンを紹介しました。
さてここからは、少し専門的なところに踏み込んでお話ししていきたいと思います。

【 C 】ピンポイントで場所を照らす明かり

次は sus(サス)という明かりを見ていきたいと思います。susというのは決められた位置に立つ人や物に対して、ピンポイントに照らす明かりのことです。言葉で説明するのは難しいのですが写真を見ていただければすぐに分かると思います。例えば、今年の1stステージの男性ブランコとファイナルステージの空気階段。どちらも綺麗なsus明かりでしたね。

男性ブランコsus
空気階段SUS

このsusは演者が絶対に正しい立ち位置に立たないと成立しないので、事前にしっかり打ち合わせも必要ですし、だからこそsusを使っているとその芸人さん側に照明に対して何かしらのこだわりがあるんだなぁ〜と感じます。susを使うことによっての効果は様々で、男性ブランコは導入の語りを独立させ全体によりストーリー性を帯びさせる役割、空気階段は周りのカフェのセットを見せないことで、今は外にいるという空間を区切る役割があると思っています。2つともよく使用される用法です。

その他もsusを使用している芸人さんはたくさんいるのですが、他の用法をお伝えするために何組かもう少し挙げてみます。

ななまがりSUS

ななまがりのsusは範囲を大きめにとって、susのみで明かりを成立させています。全体を通してこの2つのポディションしか使用しない、かつそこしか見せる必要がない!という覚悟が見える照明ですね。
もちろん男性ブランコも空気階段も画像にあげたシーンはsusのみで明かりが成立しているのですが、それは導入部分だけに過ぎなくて、コントの一番メインの明かりがsusのみである、このななまがりの使い方は珍しいんですよね。
個人的にはあまりsusのみの明かりは好きではなくて(明かりは多方面から組み合わせの良い色や形で重ねて当てる方が綺麗になるので...)。もちろんキングオブコントは本格的な劇場ではなくテレビなので、照明がこだわれる範囲も決まっていますし、芸人さんも照明に対して知識がないと具体的な依頼ができないため仕方がないことだとは理解しているのですが、少しもったいないなぁ〜とは感じてしまうネタです。(森下さんのsusが、森下さんがハケてからもずっと付いているので「次もこの同じ位置に出てくるんだなぁ〜」と簡単に予測できてしまうんですよね…。)

それに対して、こちらのしずるの照明をみてください。

しずるSUS

これは周りのブルーだけだと顔やスーツまでもがブルーになってしまうので、それを避けるために当てている補足的なsusで、今まで取り上げた演者をピックアップするようなsusの使用の仕方とは真逆の用途で使用しています。どういうことかと言いますと、基本的に、全体を赤にしたりブルーやパープルにするとその演者の顔までもが赤っぽくなったりブルーっぽくなったりします。わたし的にはこれをあまり好ましくない現象だと思っていて(かまいたちの告白や空気階段の火事のネタでわざと赤っぽくして狂気性を垣間見せたことは例外にして)、せっかくその演者を見ているのに、顔が照明の色に負けて、正常な肌色に見えないことって辛いな...と。もちろんテレビだったら顔がアップになったりできるので、そんなに意識することではないと思うのですが、やはり気になってしまうのです...。
そしてこのしずるのネタに戻りますが、この白色のsusがなければ、お2人は真っ青で、前に例であげた巨匠の岡野さんのようになっていたところだったんですよ。普通の顔色に見えているのはこのsusのおかげなのです。

ただ、susは立ち位置が固定されるため、これ以上動くとなると明かりが成立しないのが難点で(もちろんそれでも追うことができる方法はあるのだが)やっぱりキングオブコントの照明って難しいなぁ〜と感じました。

ちなみに、わたしが一番キレイだと思うsus明かりはうしろシティの2015年のネタです。

後ろシティsus
後ろシティsus_2

めっちゃキレイ。
ちなみに、ななまがり・しずる・うしろシティのような、エッジ(光の輪郭)がぼやけていることをソフト、男性ブランコ・空気階段のように、エッジがくっきりとしていることをシャープと呼びます。
このうしろシティがマスクを見せるために使っているのもsusの一種で、やはり、輪郭がハッキリしているよりも、こうやってフワッと当てるのがわたし的に最も舞台演劇的な照明だと思っていて、めちゃくちゃ好きな明かりです。笑

せっかくなので、ピンスポットについても少しお話ししたいのですが、susは基本、演者の立ち位置が決まっていてそこに光をあてるという手法でした。でもピンスポットは実際に本番中リアルタイムでスタッフが操作する明かりで、演者の位置を事前に決めずとも演者のポジションに合わせて明かりを動かすことができるのです。つまり、susの場所が動かせるバージョンなのです。

ピンにもテクニック的には本当に色々あって、例えば、ピンの出し方ひとつでも多くの名称があります。この場合の瀬下さんのピンの出し方はM.I.(マスクイン)、川原さんのピンの出し方をA.I.(アイリスイン)と言ったりします。( ※ 専門的補足:ピンスポットには円のサイズを調節するレバー[アイリス]と、明るさを調節するレバー[ダウザー]の2つがあり、アイリスをオープンしておいて、ダウザーでグッと魅せるのがM.I.、ダウザーをオープンしておいて、アイリスで魅せるのがA.I.です。基本的な芝居のピンはM.I.とA.I.の中間的な手法を使用します。)

また、先ほどのsusの項目でシャープ・ソフトの話をしましたが、この瀬下さんを当てているピンがソフトで、川原さんを当てているのがシャープです。シャープ具合を調整するのは機材の特性もあるのでなかなか難しいかもなのですが、ソフト具合というのは割と自由に調節することができて、わたしはもっと輪郭をぼかした方が好みかな?と思います。あと、もう少しだけ小さくとるともっと綺麗に見えるのですが、その辺りは語ると長くなるのでやめます。笑

このように、その特定の場所に落とす明かりはsusやピンスポットという手段を使って表現されます。

【 D 】 ネタ中に暗転がある明かり

さて。長くなっていて申し訳ありませんが、まだまだ行きます!笑
今度はネタの最中に暗転を挟むコントを見ていきたいと思います。

暗転は皆さん説明せずとも分かりますよね。真っ暗になることです。
暗転を挟む理由は主に2つあると思っていて、「時間の経過」と「場所の移動」のためだと考えています。
どちらも想像しやすいと思うのですが「時間の経過」は前にも例に出しましたが、かが屋の告白のネタの暗転がそうですね。

「場所の移動」は当然場所が移動するわけですから時間も移動しているわけで「時間の移動」の意味も兼ねている場合が多いのですが、これが見事なのが2018年のハナコの山崎まさよしの暗転です。これも明転のままで、出ハケだけの処理でも成立するところではあると思うのですが、一回一回暗転を挟むことによって、時間と場所をしっかり区切ることができるため、メリハリのついたコントになっていると思います。自然と時間経過も感じさせることができる計算された暗転の利用ですね。

ちなみに、今回の空気階段の火事のネタの途中暗転も全く同じ原理です。別に明転していても成立はしますが、暗転した方が場所と時間の経過を際立たせることができます。(前に述べた「さらに一段階濃い赤色にする」という手立てもこの暗転を挟むから成立できることでもありますし。ちなみに、このコントの暗転は2回あり、2回目の方も暗転後に通常の明かりに戻るのではなくて、更に明るく煌々となるように作られているんですよね。さすがです。)

あとは、2011年、2700のキリンスマッシュのネタなども同じ効果ですし、結構暗転をうまく利用しているコント師の方は意外にも多いのです。
(おまけにもう一つ述べておくと、「セット移動や何かしら見えてはいけないもののスタンバイのため」というものも暗転の大きな意味です。こちらもセットや何かが動くからには時間や場所も変わっているという意味で、大きくは上にあげた役割に含まれると思うのですが、2015年のザ・ギースのBefore・Afterのネタ、2011年のモンスターエンジンの戦隊モノのネタなどを参照していただければと思います。それと、今年のそいつどいつのマスクのネタもそうですね。後のマスクを光らせるというギミックを使用するために、絶対にここは暗転しないと意味がないところです。暗転を挟むからには次明るくなった時に何か展開を望むのですが、このそいつどいつのネタは暗転のままで笑わせるのが照明的観点から言うと新しいな〜と思いました。)

あと、時や場所を操る系で思い出して欲しいのが、2018年のマヂカルラブリーのコントなのですが、これは暗転ではなく、ストロボと言います。

このネタ面白いのですし、この動画の部分だけだと伝わらないと思うので、最後まで見ていただきたいのですが、このストロボが何度も使用されて、時間が巻き戻っている様子を表現しています。
時間経過を巻き戻す系のコントは既出していて、その多くは暗転を用いて表されるので、ストロボの使用の仕方は新鮮で面白く感じます。
また、ストロボは効果が強すぎるので、例えば演劇などでは、悪天候時の雷を表現するとき(2015年のバンビーノの呪文と犬ネタの冒頭はまさにこれ)や激しいアクションシーンのスローモーションなどしか利用されないので、このような傘を忘れたなど言った日常の普通のシーンでストロボを使うことはなく、この照明の使い方ができるのはコントの面白さだなぁと思いました。


【 E 】 IN / OUTに工夫がある明かり


先ほどの暗転に関してですが、専門的にカッコよく言うと「F.O.」「C.O.(もしくはB.O.)」などと表記します。読み方はそれぞれ「フェードアウト」「カットアウト(ブラックアウト)」です。
そして、ネタの始まりは暗転から明転して始まりますよね。それを「F.I.」「C.I.」と言います。読み方は「フェードイン」「カットイン」です。
フェードやカットという言葉について具体的に述べると、前者はフワ〜ッと明るくなる(もしくは暗くなる)こと、後者はパッと明るくなる(もしくは暗くなる)ことを指します。(暗転からどれくらいの時間をかけて明転に持っていくかをその明転の「タイム」と呼び、タイムが0秒のものがカットイン、それ以外のものがフェードインです。暗転の場合も同じくです。)

フェードインやアウトのタイムを長めにとり、グーーっと世界観に引き込むように調整されたネタは結構たくさんありますし、また、明転する前に「コント、○○○」とタイトルを言ったり、何かしらのセリフがあったりしてネタが始まる組もありました。

これだと明るくなる前にどんなコントが始まるのか少し早く理解できるのでその目の前で起こることへの理解スピードをワンテンポ早く進めることができます。これが良いことなのか悪いことなのかはコントの種類によりけりなので一概には言えないですが、設定がSFでぶっ飛んでいる場合は有効な手だでだと個人的には思いますね。このネタも後に森田さんが「ぼったくりやないかい!」とツッコミを入れますが、そのツッコミを明転前からみんなが期待することになるので、見るほうは楽しくなりますよね。(この良し悪しを話すと照明とずれていくような気がするのでこの辺りにしておきます。)

そしてこのロビンフットのF.O.は本当に素敵だと思っていて、音楽がなっているのでそれに合わせてスーーーーっと消えていますよね。普通の演劇などの舞台ではこのF.O.の形は普通ですし変わった照明でもないのですが、KOCでこのF.O.は本当に素敵だと思います。

【 F 】継続的な派手さで魅せる明かり

次は、グッと雰囲気を変えてとにかく派手な明かりを見ていきます。
これは主に音楽と共に使用される明かりで、見ていただければ1発で理解できると思います。

音楽に合わせて明かりがパチパチ変化しています。このパチパチを「エフェクト」と言います。このにゃんこスターの照明で変化しているのは《全体の明かりの色(地明かり)《後ろの電飾(豆電球みたいなやつ)の2種類です。
この手の照明で一番こだわりが光るネタは2016年のラブレターズの野球拳のネタですかね。電飾のエフェクトも流れるように組まれていてめちゃくちゃキレイです。susなども使われていますしね。こだわりが見えます。

曲のテンポが早いと、エフェクトや色のチェンジも早くてより賑やかさが増し、一気に華やかなステージになります。
あとは、ここまで華やかに魅せる必要はないコントですが、色々な色を使わずとも単色でパチパチさせることによって成立させるコントもありました。このような単色パチパチの場合は「あおる」と言ったりします。

使用している色が一色なので、ネタのシリアスな雰囲気をそこまで損なわずに、かつ少し派手になっています。これは首が落ちる「ジャン!」の音決まりで、例に挙げていたバンビーノのような、さらにドンと一段階明るくなる変化があれば完璧なんですけどね...。照明のデザインしがいのあるネタです。

【 G 】 Gobo・サーチがきれいな明かり

さて、もう最後です!!ここまでお付き合いいただいている人が何人いるのかわかりませんが、お付き合いいただき、ありがとうございます。

最後に取り上げるのは、もう何度目の登場でしょうか、空気階段です。
ファイナルステージのネタは冒頭のsusからドキドキしましたが、メガトンパンチマンカフェ内でも素敵な照明がありました。

実は、カフェ内の壁に長方形でクルクル動いている照明があるんですよ。その動いている照明についてお話しします。

光を出す照明機材も本当にたくさんあって種類も多岐に渡るのですが、大きく分けたら2つに分けることができます。通称「一般」と呼ばれる機材と、「ムービング(Moving)」と呼ばれる機材です。
基本的な照明というのは、一般と呼ばれて、色や向きなどが固定されていて、ライトをつけることと消すことでしか操作できないのですが、ムービングと呼ばれる機材は、つけることと消すこと以外にも、色を変えたり、形を変えたり、動かしたりすることができるのです。(細かくいえば動かないけど色は変えられるLEDなどの機材もありますが、省略します。)

詳しくはこちら

空気階段のあの長方形がグルグルしているのは、このムービングという特殊な機材を使用しているからです。(コンサート照明だったらムービングの方が主流で、逆に一般機材などは使われていないですし、ここで"特殊"という表現が正しいかどうかは微妙なのですが…。)
ちなみに、四角などの模様のことをGobo(ゴボ)と呼んでいるのですが(Goboは機材によってムービングでも一般でも入れることができる)、このようなGoboを使用した明かりはあまり見受けられないので、わたしにとっては、めちゃくちゃ新鮮な明かりでした。

それと、先ほど紹介した【F】の項目の派手な明かりの中では、このようなムービングはよく利用されていて、ウィン ウィン動いているのが確認できると思うので興味があれば探してもらえばと思いますし、例に挙げたラブレターズの動画でも確認できると思います。
あとムービングの使用で目立った使い方をしているものに、サーチと呼ばれるものがあって、蛙亭のネタでも使用されていましたね。

キングオブコントの大会自体の冒頭でもサーチって使用されていて、毎回サーチの加減も違うので、冒頭だけを見比べるのも面白いかもしれませんね!丸の大きさとか、スピードとか。(わたしも今度やってみます!笑)

かたまりさんが店内に入った瞬間にサイレンが鳴りピンクっぽくなりますが、その時の明かりも多分、というか絶対ムービングは使用されていると思います。ただ、テレビに映るのが一瞬すぎてビュンビュンなっているのかの確認ができなくて。ただあおっているだけなのか、サーチしているのか…..。是非、この記事を読んだ後で、もう一度コントを見返していただければ嬉しく思います!

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さて、長々と話して申し訳ありませんでした。
わたしもこの記事を書くにあたって色々な会を見直しましたが、まさか分類分けすると、こんなに照明が多様に使われていたとは気づきませんでした。
そして、この記事で最も述べたかった「照明がコントに与える影響」という部分に関して最後に考えてこの記事を締めようと思います。

まず、シンプルに「照明にこだわれば良いコントになるのか?」という問いに向き合っていきたいのですが、良いコントも定義が難しいので、とりあえず「キングオブコントという場において、照明にこだわれば良い成績が残せるのか?」という問いに変えたいと思います。(なので、それぞれの芸人の単独ライブやその他の公演のことは一旦隅に置いて話すことにします。)

これまで出場してきたコント師が、特殊な照明を使用したか・そうでないか、またその場合結果がどうだったのかを知るために、表にまとめました。

みていただければわかると思うのですが、今回の空気階段のように照明までも完璧にこだわり優勝に立ったコンビもいれば、もちろんそうではない組みもあります。なので一概に「照明を工夫したからいい順位が出る」というものでもないというのが結論です。

わたしは東京03が大好きなのですが、東京03のネタのテーマは「突飛なキャラクターや独特なシュチュエーションを利用するのではなく、日常の生活から切り取って出てくるお笑い」というものが多いです。なので、そもそも照明にこだわる理由がないし、光で舞台を派手にする必要性がないのですよね。
それに対して、例えばにゃんこスターのような、音楽を扱いそれがメインとなるネタは、照明がコントに与える影響は大きいと思っています。このタイプのネタは、ネタ自体が弱いとかそのような話ではないので誤解して欲しくないのですが、「ステージ上でポップな音楽が流れている」という状況自体がお客さん側に「これから何か派手なことを行います〜」ということをすでに説明することができるので、そのような視覚的効果を照明で補足することによってさらに面白いステージになり得ることができるのだと思います。

「ここまで細かく語ってきたのにこの結論かい!」と納得いただけない方がいそうな気配もするので申し訳ないのですが、賞レースという土俵上では、何を語っても「結果論」なってしまうのは仕方がないことではあります。
空気階段が今回優勝したために、空気階段の照明へのこだわりは凄い!という結論になっていますが、これが空気階段がイマイチな結果となっていれば、そうとは結論づけにくいわけです。

( この辺りは、ニューヨークの大会後のNEWラジオでも発言があったので紹介したいのでお時間ください。「嶋佐の目のテープの色にこだわった時間、無駄だった」という話があったのですが、目のテープを肌の色に合わせた物にするか、透明にするかで悩んだようなのです。結果が望ましくなかったので「テープ自体もうどうでもよかったわ!」というようなことになっているのですが、もしニューヨークがこれで優勝していたら、「テープの色までこだわってよかった〜」という結論になるわけですよね...。<以下動画:17:10くらいから> 

まさに照明も全く同じようなことであり、かもめんたるのう大さんが、こちらの記事で『ある芸人さんのネタで照明がもっと◯◯だったらよかったなぁ...』と軽く照明について述べたられておられたのですが(有料記事なので、内容は伏せますね)、そのコンビは照明を変えたからって点数が高くなった保証なんていうのはありません。)

あと、昔わたしの書いた記事を以下に引用しますが、これはわたしの根本的な照明論であって、昔から変わっていない部分だったりします。

キングオブコントの冒頭で『コントとは、それは漫才とは違い、小道具・照明・音、その全てをプロデュースし、0から笑いを生み出すなんでもありの世界』とありました。わたしは「・・・・・・??え??」です(・・・)
あくまでもコントの本質は小道具やセットや照明ではなく、役者がいて脚本があることでしょ?って思った訳です。(・・・)
「いや、別に間違ったこと言ってないんじゃない?それもコントの特徴だから」とお思いになる方の方が多い気がするのですが、でもわたしにとってはとても気にかかるのです。照明の役割の第一は役者を明るくすること、ただそれだけなんです。そして第二の役割があるとすれば、それがあくまで作品や物語の補足的説明をするためのツールだと思っているので、そんな小道具や照明がコントの醍醐味だぁ!!!みたいな説明をされると、おぉ...、おお...。ってなってしまったのです。

note:2020年11月29日「東京03にハマったので語ってみた。」より

結局、照明ってこんなもんなんですよね(笑)。
いや本当にこれだけ語っといて、「結論これかい〜!!」ですよね。もう、本当にすみません。わたしももっとカッコイイ結論を出すつもりでしたが、やはり意図せずともこうなってしまいました。。。

わたし自身、舞台の照明を仕事にしていて思うのですが、結果、所詮照明なんですよ。「照明にめちゃくちゃ志向を凝らした、大きなホールで行われる近所の子供のカラオケ大会」か「小さいホールで照明も特にはないけどMr.Childrenのコンサート」かと言われたら、絶対後者ですよね。

でも結局、Mr.Childrenが大きいライブ会場でコンサートをやるとなった時は必ず照明さんという人がいてサポートしているわけなので、「じゃぁ照明になんてこだわらなくても良い!」というのはまた話が違って。
KOCに話を戻すと、もし日常とかをネタにする以外の、例えば音楽を使ったり、独特な世界観が売りの芸人さんだとすると、照明にまで気を回せるくらい客観的に自分たちのコントを分析して作り込める人でないと優勝するようなネタも作れないというのが当たり前のことではありますが、極論はこういうことなんです。

以上。長々となって申し訳ありませんが、ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございました。
これで来年のキングオブコントでは、「あの組の照明の使い方、新しかったよね...」とか「あのブルー好きだわ〜」などと語れる人が一人でも増えたら嬉しいです!と言いたいところですが...。実際はそこまでは望んでおらず、「もう今年のキングオブコント最高すぎたけど、見飽きたなぁ〜」みたいな方が、違った視点からコントを見る手助けができればなと思っております。
最近はキングオブコント以外でもコント番組がたくさんあって、照明を眺めるだけでも面白いですよね(変人)。
この記事も楽しんでくだされば本望です。

あと、まだお笑い見始めたばかりなので、皆さんのオススメのキングオブコントのネタなどあれば教えてください(笑)!
本当に読んでくださり、ありがとうございました!!!



〜〜〜〜〜〜 以下・超 雑談 ( = 自己満語り )〜〜〜〜〜〜〜

照明よりも実際は本がおもしろくて演者の力量が大事だとまとめたところで、正直、書いている本人も若干消化不良なんです…。。笑
なので、好き勝手KOCを振り返ってみて気づいたことを発散して終わります。笑

まずあれですね。
誰も得しない、個人的に好きなBEST3を勝手に紹介!ドドン!『かもめんたる(2013):白い靴下』『アキナ(2014):ボール取れへん』『かまいたち(2017):告白』です!
シソンヌも入れたいし、あと今回のマミィとかも入れたいところだけど、この3本には敵わないなぁ〜という感じです。空気階段は面白いし大好きなんだけど、わたしのどストライクな好みかと言われればそうではない気がしていて...。東京03はランキングに入れたいところですが、好きになりすぎてもはや客観的に見ることができなくなっているので除外です(笑)。
(あと、かもめんたるの白い靴下なんかはフェードアウトが超肝心なネタだと思っていて、キングオブコントはちょっとフェードアウトのタイミングが遅かったですよね…。前にも述べましたが、う大さんは舞台も作られている方だからその辺のこだわりも絶対強いと思うけど...。正しく指示していてもオペレーターがミスってしまえば元も子もないですからね...。非常にもったいなく感じました。この早いほうが良いというのも、わたしの好みに過ぎないのかもですけどね。ちなみに、アキナはこれフェードアウトよりもカットアウトの方が好みだったりする。とりあえず動画載せますが、ここだけ見ても伝わらないかも…。)

あと、そうだ。

ここでは語りきれていないのですが、単独ライブとなると照明もこだわりが見えたりして面白いんですよね。
基本、単独ライブは裏方スタッフもずっと同じ場合が多いので、照明のテイストが突然変わったりとかはなくて、例えば東京03の単独が安定して評価されて楽しめるのは、そのような固定スタッフの力も大きいような気がしています。実は、あのような単独ライブの照明スタッフは、お笑いの照明のみを仕事にしている人は少なく(というか、いないと思います)、演劇やダンスや、様々な照明を手がけている中に「お笑い」があるというような感じです。この辺りも、話そうと思えば永遠なのですが...。また機会があれば語りますね。というか、語らせてください。笑
まじで、単独で、本当に照明が綺麗だと思うのはザ・ギースのこれ。Goboがめちゃくちゃきれいで日本的な柔らかい優しい明かり。あとシソンヌとかはもはや本も照明もセットも全部が本当に演劇。そして皆んな大好き小林さん。小林さんとまでなると、自分で照明を操ってしまうわけですから…。わたしは小林さんの指になりたい(変態)。指になれなくても、小林さんの指の神経だけ欲しいなぁ〜。笑

以上。雑談でした!
皆様。本当にここまでお付き合いいただきありがとうございました。もう、こんな記事を読んでいただいて、大好きです。ありがとうございます!!!!!!

本当に大好きです!

( 編集:2021/12/19  22:46 〜 書き出しをM-1についてに変更 )


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