銀座の老舗高級時計店が、若者にアプローチするために行った秀逸な企画とは？

創業100年、銀座の老舗高級店の危機意識

本日ご紹介するのは、創業100年越えの老舗企業のリブランディング成功事例です。

時計や貴金属、鉄道模型などの製造販売を行う「天賞堂」は、明治12年に創業、銀座に店舗を構えて100年以上という歴史があります。

天賞堂 | Tenshodo

老舗ブランドの高級かつ信頼感のあるイメージは、100年という長い歴史を積み重ねた企業だからこそ築き上げることができたもの。しかし、競合店が増加して業績が伸び悩む中、時代の流れとともに消費者の高級品に対する意識にも変化が生じていきます。

「銀座の歴史ある老舗」としての従来のファン層を保つだけでは、もはや生き残れない。

これから先も店を続けていくためには、新規顧客を開拓する必要があったのです。
　
　
　

銀座の老舗ならではの知恵を生かした「銀座入門グッズ」

天賞堂の顧客は、比較的年齢層が高めです。

販売しているのが高級品であるからこその傾向ですが、もっと低い年齢層の顧客を取り込みたいと考えた天賞堂は、「世代を超えてお付き合いできるお店」というブランドイメージを目指してリブランディングを行いました。

その戦略の1つが「父から子に贈る銀座入門グッズと感動体験」。

新成人や新社会人の子へ、父親から天賞堂のオリジナルウォッチとオリジナル名刺を贈り、一緒に銀座の一流店で食事するというパッケージです。

親子揃っての一流店での食事、そして銀座の老舗ブランドの時計を手にすることは、子どもにとっては非日常の感動体験になります。

その体験を天賞堂の従来の顧客である父親から大人になった子へプレゼントするというコンセプトを提示したのです。

高級老舗ブランドを贈られた特別な体験は、次の世代にも紡がれる

このパッケージによって、天賞堂は大人になったばかりの若い世代にブランドの魅力を伝えることに成功しました。

父親からこのプレゼントを受け取った子は、特別ではあるが無縁ではない高級老舗ブランドの存在に触れ、より身近なものとして捉えるようになったのです。さらに、この体験が自分の特別な人、ゆくゆくは自分の子どもにも同じような体験をさせたいと思わせるきっかけになったかもしれません。

天賞堂のファン層は確実に広がりました。

こうして、天賞堂は「世代を超えてお付き合いできるお店」としての新たなブランドイメージをつくり出したのです。

もちろん、彼らは決して既存のブランドイメージを捨てたわけではありません。もともと持っているブランドイメージを活かしながら、ターゲットのニーズを的確に捉えて、真に喜ばれるパッケージをつくりあげた点が秀逸であると言えるのではないでしょうか。