ただし18kgある

　もうすぐ４歳になる娘とお風呂に入っていて、ラジオから『SPY×FAMILY』2期EDが流れてきた。

「とうちゃん！　このおうたは！？」

　色めき立つ娘。
　この曲が流れるとき、娘にはやらなければならないことがある。

　曲開始から50秒、サビでアーニャが両手足をパーン！と広げるシーンを我が娘もやらなければならないのだ。
　なので、大急ぎでお風呂から上がり、タオルで髪と身体を拭いて、

「とうちゃん！　もう『きょうの夜は～』きてまうで！」

　と急かす娘の両脇を抱えた瞬間、50秒経過。

”今日の夜は～”

　ぼくのだっこによって空中に飛び上がった娘は、両手足をパァーン！と広げ、アーニャちゃんのように口を大きく開けて笑顔をつくる。

”今夜だけは～”

　そして次は横抱きに移行して横にスゥーと移動させると、娘は手足を空中を泳ぐようにパタパタをさせる。
　夢のようにかわいい娘のルーティンに、ぼくも奥さんも毎回必ず笑ってしまう。

　このすこし後、娘は４歳になった。
　体重は18キロある。

　それからも曲が流れるたび、

「とうちゃん『きょうの夜は～』やらんといけんやん！」

　と言う娘をだっこする。娘の重みに、ぼくの腕はすぐしぬが、こんなに嬉しい重さはない。